あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

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第3章 想い編

第26話 もう一人の幼馴染/亮二

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 広美から衝撃的な話を聞いた俺は家に帰ると直ぐにベッドに横たわり今日の出来事を振り返っていた。

 まずカナちゃんに再会できたことだが、これは本当に奇跡だと思うし、カナちゃん家族が山田さん家族と知り合いだったというのも驚いた。まさかバイト先と目の鼻の先にカナちゃんが住んでいたなんて……

 それにカナちゃんに無理矢理キスをしたのが山田さんの息子、翔太君だったというのも驚きだし、とても複雑な気持ちにもなってしまった。

 また広美が幼稚園の時の先生がカナちゃんのお母さんだったとは……俺は保育園に通っていてあまり広美の幼稚園での内容を知らなかったから余計に驚いた。

 それに更に驚いたのは5年前に助けた幼稚園児の女の子がずっと俺の事を想ってくれていたということだ。俺みたいな冴えない男でも7歳も歳が離れている子だとしても好きでいてくれていたというのは嬉しく思う。

 ただ、まさかまだ出会って2度目のカナちゃんにキスをされるとは思っていなかったし、最後にあのような約束までしてしまうなんて思ってもいなかったから自分でも驚いた。

 咄嗟に考えて口に出してしまった約束だとはいえ、きっと5年も俺の事を想ってくれていてたカナちゃんだし、約束した時のカナちゃんの目の輝きを見たらきっと本気で受け止めているだろう……

 だから俺も小学生相手の約束だからといって軽い気持ちではいられないと思った。俺も約束の日が来た時の為に、大人になった俺をカナちゃんが見た時にガッカリさせない為に今まで手を抜いていた分以上の努力はしないといけないと思えるようになったんだ。

 今までの様に何事も途中で投げ出す様な人生ではいけない、もっと自分を磨いて本当に魅力のある男になりたいと思った。

 こんな気持ちになれたのはカナちゃんのお陰だ。まさか高校生の俺が小学生の女の子に刺激を受けるなんてなぁ……

 そういう気持ちになった俺は高校を卒業したら就職しようと思ったけど、もう少し知識と色々な経験を身に付けてから就職したいと思うようになり、大学に進学する決意をした。まぁ、合格すればの話だけど……それでも合格する為に必死に勉強するだけでも俺の中の何かが変わる様な気がしたんだ。

 そして先で俺とカナちゃんが約束した通りの状況だったら……その時は……

 でも逆にカナちゃんが他に好きな人ができたとしても、今みたいな気持ちを俺に抱かないようになっていたとしても俺はカナちゃんを責めたり恨んだりはしないとも心に誓った。



 そして広美の話はあまりにも衝撃過ぎてどうとらえれば良いのかよく分からないというのが正直なところだ。

 まず広美の話を信じるかどうかだけど、俺は信じるというよりも信じたいという思いの方が強い。やはり幼馴染でずっと一緒だった広美が作り話を言っているとは思えないし、あの状況で俺に作り話を言っても何のメリットもない。

 それに広美の話は俺の周りと照らし合わせてみても、辻褄があっているところが多い。どちらかといえばその方がしっくりくる感じもするくらいだ。

 そして毎年、『前の世界』で命日だったという8月12日に広美が声をかけてみんなで遊びに行っていたと言っていたけど、そんな特別な日に俺とカナちゃんが出会ったというのも何かしら関係があるんじゃないのかって思ったりなんかもしている。

 ということで俺は広美の『小説や映画であるような設定』みたいな話を信じたいと思ったし、逆にもう少し時間をとって、もっと詳しい内容を聞きたいとも思った。そして何故だか分からないけど、その内容を忘れないようにメモっておこうとまで考えていた。

 いずれにしても俺は広美とは今まで通りの関係を続けていきたいし、広美もそう思ってくれているだろう。ただ、広美は来年には東京に行ってしまうので今までみたいに頻繁に会うことは出来ないだろうけど……それにマジで広美が女優になってしまったら今度は『雲の上の人』になってしまい、普通に会話なんてできないかもしれないしな。

 それは少し寂しい気もするけど……いや、そんな事は本当に広美が女優になってから考えることだよな? とにかく俺は幼馴染として広美の夢を応援しなくては……

 こうして俺は今日一日でカナちゃんや広美に対してある程度、気持ちの整理がついた。

 しかし……俺にはまだ問題が一つ残っている。千夏ねぇだ。

 千夏ねぇからまさかの告白をされて、その返事を俺は延し延ばしにしてしまっている。いつも明るい千夏ねぇだってあの時は勇気を出して俺に告白してくれたはずなのに、こんなにも返事を引き延ばしてしまった俺は最低な男だよな。

 それなのに……こんな俺の事を怒らずに今も返事を待ってくれている。ちゃんと返事をしなければ……

 もう俺の中で答えは決まっている。もう返事を延ばす必要はない……

 俺は携帯を取り出し千夏ねぇにメールを打つ。

『千夏ねぇ、遅くなってゴメン。ずっと待たせてしまっていた返事をしたいんだけど……明日、昼から閉園までエキサイトランドでバイトだから午前中に会えないかな?』

 しばらくして……

 ピロロン

『OK それじゃ10時に駅前のファミレスで』という返事が来た。

 遂に千夏ねぇに返事をする時が来た。






――――――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。

亮二の出した結論は!?
次回、千夏視点でお送りしますのでどうぞお楽しみに。
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