あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

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第4章 成長編

第34話 新しい友達/加奈子

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 りょう君とエキサイト公園でデートをした次の日の月曜日、私は授業は上の空で昨日の事を思い出していた。特に広美さんのお母さんと二人きりになった時の会話、私の質問に対しての答えを思い出していた。

「隆君がまだ小学生の頃にね、『隆君が先で好きな人ができても先生は全然、構わないんだからね。先生なんかに気を遣わなくてもいいから。私は隆君が幸せになってくれればそれで満足だから』って言ったの。そうしたら隆君、突然怒りだして……でも今思えば当時、小学生だからといってもあれだけ必死に私と結婚する為に頑張っていた隆君だったから私にそんな事を言われたら気を悪くするわよねぇ……」

 そういえば私が告白した時もりょう君は広美さんのお母さんと同じ様な事を言っていたよなぁ……

 私も良い気はしないけど、広美さんのお父さんみたいに怒ったりはしなかった。

 それにりょう君は私の事を思って言ってくれているのはよく分かっているし……でも、りょう君……私も広美さんのお父さんと同じだよ。絶対に18歳になったらりょう君と付き合うんだから。そして……

 私、絶対に諦めないから……


「それでは続きを三田さん、読んでちょうだい」

「えっ?」

「えっ? じゃないわよ。早く続きを読みなさい」

 ど、どうしよう。全然、先生の授業を聞いていなかったわ。

「24ページの5行目からよ」

「へっ? あ、ありがとう……」

 私は前の席に座っている平田さんに助けられた。

 
 【業間休み】

「平田さん、さっきは有難う。とても助かったわ」

「別にお礼なんていいよ。困ったときはお互い様じゃない」

 彼女の名前は『平田沙耶香ひらたさやか』といって私が通っていた青葉第二小学校ではなく隣の青葉南小学校出身の女の子だ。

 私が中学生になって一番最初に声をかけてくれた子でもある。

 彼女は色白美人で少しパーマがかったセミロングの髪型をしていているけど、少し気の強そうな雰囲気を持っている。

「でも本当に助かったよぉ。お昼にでもジュースをおごらしてよ?」

「ハハハ、おごる程の事じゃないわよ。それよりも三田さんは何か部活に入る予定はあるの?」

「えっ、部活?」

 そういえば私、こないだから部活どうしようか悩んでいたんだ。小学校では女子力を上げる為に家庭科部に入っていたけど中学でも引き続きそうしようか、それとも部活はしないで青葉東高校に入学できるように塾に通って勉強を頑張るかどうかを……

 ちなみに運動部に入るという考えは元から無かったけど学生時代、バスケ部で活躍していたお父さんはバスケ部に入って欲しそうだったし、運動部に縁の無いはずのお母さんは何故か卓球部を推していたけど、何でだろう?

「三田さんは演劇部には興味ないかな?」

「え、演劇部?」

「うん、そうよ。私、ママの影響で小学生の時は3年間演劇部に入っていたの。だから中学でも入学式の次の日に演劇部に入部したわ。もし少しでも演劇に興味があるなら私と一緒に演劇部で頑張ってみない?」

「うーん、どうしようかなぁ……」

「直ぐに決めなくても大丈夫だよ。入部する気になればいつで言ってくれればいいし。その時は私が一緒に部長さんの所について行くから」

「うん、分かったわ。入部する気になったら平田さんに直ぐ言うわね?」

「オッケー、よろしくね? あ、それと私の事は沙耶香って呼んでくれていいから。で、私も三田さんの事は加奈子って呼んでもいいかしら?」

「う、うん、いいわよ。さ、沙耶香……」

「ハハ、ありがとう、加奈子」

 こうして私は桜ちゃん以来の女子の友達ができた。


 【昼休み】

 私は早速、沙耶香と机を迎え合せにしてお弁当を食べていた。久しぶりに桜ちゃん以外の女子とゆっくりお話ができて私はとても嬉しかった。

 すると突然、沙耶香に誰かが話かけてきた。

 肌は日焼けした感じで髪型はショートボブだけど、沙耶香と同じ顔をしている……もしかして……

「沙耶香~私、数学の教科書を忘れちゃったわ。5時限目数学だから教科書を貸してちょうだい?」

「何よ、桃花? あんた、また忘れたの? 入学してまだそんなにも経っていないのに何度目なのよ?」

「えっと、3度目かな」

「別に回数を聞いている訳じゃないから!! ほんと、あんたって運動以外は全然ダメよね」

「余計なお世話よ。運動音痴のあんたに言われたくないわ。そんなことよりも早く教科書を貸してよ!?」

 私が二人のやり取りをポカーンとした顔で見ていると、それに気づいた沙耶香が申し訳なさそうな顔をしながら私に説明をしだした。

「ゴメンね、加奈子。この子は私の双子の妹で隣のクラスの平田桃花ひらたももかっていうの。見た目通りガサツな子だけど、別に悪い子では無いから心配しないで」

「そ、そうなんだぁ……双子なんだぁ……ひ、平田桃花さん、私、三田加奈子っていうの。よろしくね」

「ああ、よろしく~っていうか、あなた凄くプロポーションいいわね? 小学校で何か運動部に入ってたの? もし良かったらバスケ部に入らない?」

「えっ、バスケ部?」

「ちょっと待ちなさい、桃花!! 私が先に演劇部に誘っているんだからあんたは邪魔しないでくれる!?」

「別にそんなの関係ないじゃん!! 決めるのは加奈子じゃん!!」

 ん? 今、桃花さん、私の事を名前で言わなかった?

「桃花、あんた加奈子と初めて会ったばかりで名前で呼ぶのは失礼というか、図々しいわよ!! 加奈子は私の友達なんだからね!! ゴメンね、加奈子。ほんと、桃花はバカだから……」

「バカは余計よ!! それに私は一度会話した人とは友達になったと思う主義なの。まぁ、加奈子が嫌なら考え直すけどさ……」

「い、いえ、別に私は嫌じゃないけど……」

「はい、それじゃ私と加奈子も今から友達ということで決まりだね!! それで話を戻すけど私はそこの『大根役者』と違って小学生の頃からパパの影響でバスケやっててさ、県大会ベスト8まで進んだ実績のある私が誘っているんだから安心して入部して欲しいんだけど……」

 そうなんだ。沙耶香はお母さんの影響で演劇をやっていて桃花ちゃんはお父さんの影響でバスケットボールをやっているんだぁ……平田姉妹以外の人達も親の影響で部活を決めたりしているのかなぁ……?

 りょう君の影響で家庭科部に入っていた私って変なのかな?

「加奈子、桃花の誘いは無視していいからね」

「む、無視はどうかと思うけど……でもゴメンね、桃花ちゃん。私、運動部に入る気は無いんだよ。入るなら文化部になると思うんだぁ……」

「そっかぁ……なら仕方ないわね。今日は諦める事にするわ。それと私の事は桃花って呼んでくれていいから」

「う、うん、分かったわ、桃花……」

 ん? 今日は諦めるって言わなかった?

「桃花、もういいでしょ? はい、これ数学の教科書!! これを持ってとっとと自分の教室に戻りなさい!!」

「ええ、戻るわ。そして自分のお弁当を持ってまた直ぐに戻って来るから!!」

「な、何でよ!? 何で私達と一緒にお弁当を食べるのよ!?」

「別にあんたとお弁当を食べたい訳じゃ無いわよ。私は加奈子と一緒にお弁当を食べたいだけだし!!」

 私は今日一日でキャラの濃い双子姉妹の友達ができたみたいだ。
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