あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

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第5章 嫉妬編

第43話 二人の関係/亮二 

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 6月半ばになった。

 今日から青葉第二小学校で行われる七夕祭りでのボランティアの初打ち合わせが始まるが、その打ち合わせにカナちゃんが遂に参加する。

 なので俺は朝から何かと緊張していた。部員の人達にカナちゃんの事をどう説明しようかずっと考えていたけど今日まで何も浮かばなかったのだ。

 ちなみに俺がカナちゃんに会うのは4月30日の誕生日以来だ。カナちゃんは前に電話で言っていた通り、俺がバイトの休憩時間にお店に誕生日プレゼントを持って来てくれたのだった。

 俺の首の周りにはその時カナちゃんがプレゼントしてくれた大きなハートと小さなハートがくっついている何だか俺達二人の関係を表しているかのようなシルバーのネックレスが光っている。

 実はこのネックレスは香織おばさんの提案だそうで、昔、隆おじさんが香織おばさんにプレゼントした時とのネックレスにデザインが似ているそうだ。

 俺はそれを聞いた時に、カナちゃんはエキサイト公園で会って以来、香織おばさんと交流があったんだということに驚いた。俺もまた隆おじさんに連絡してみようかなと思った。



 カナちゃんとは大学の正門前で待ち合わせをしていたが、さっきからソワソワしている。カナちゃんは自転車で来ると言っていたが、もう来てもおかしくない時間なのにまだ来ない。

 大丈夫かな? 途中で事故とかにあっていないだろうな?

 俺はカナちゃんが無事に来るまで心配で仕方が無かった。でも来てからが本当は大変なことになるのだろうけど……

 チリンチリン

「あっ!?」

 カナちゃんが自転車のベルを鳴らしながら笑顔で正門の前に到着した。

「はぁ、良かったぁ……カナちゃんが言っていた到着時間を20分以上過ぎていたから心配したよ」

「ゴメンね、りょう君。途中でコンビニに寄っていたから遅れちゃった。そんなに心配してくれていたのならメールをすれば良かったね……?」

 カナちゃんはとても申し訳なさそうな表情をしている。ふと自転車のカゴを見るとその中にはたくさんの飲み物が入っていてカゴからあふれ出そうになっている。

 よく見るとハンドルにもコンビニ袋を吊り下げた状態に……

「カナちゃん、その大量の飲み物ってもしかして……」

「うん、今日の打ち合わせの時に皆さんに配ろうかと思って……でも人数分あるかどうかわからないから少し心配なんだけど……」

「俺達にそこまで気を遣わなくも良かったのに……これだけたくさんの飲み物を自転車で運ぶのはめちゃくちゃ危ないし……それにお金も結構かかっただろうし……いくらかかったんだい? 俺もいくらか払うよ」

「ううん、お金はいいよ。出かける前にお母さんが少しお金をくれたから。私のお小遣いはそんなに使っていないから心配しないで」

「で、でもさ……」

「それよりもこの飲み物を一緒に運んでくれる方が嬉しいのだけど……」

「え? ああ、そうだね。よし、それじゃぁお礼も兼ねて飲み物は全部俺が持つから任せてくれ」

「それは無理だよ。かなり重たいんだよぉ……」

「俺は男だ。大丈夫!!」

 とは言ったものの結局俺は飲み物20本のうち15本を持つのがやっとで、残りはカナちゃんが終始笑いながら持ってくれていた。

 はぁ、今日を期にもっと身体を鍛えようと思う俺であった。 


 【ボランティア部部室内】

「は、初めまして!! 三田加奈子と言います。今日は無理を言って参加させて頂きありがとうございます。皆さんにご迷惑をかけないように頑張りますのでよろしくお願いします!!」

「 「 「おーっ!!」 」 」

「 「 「可愛い!!」 」 」

 パチパチパチパチ パチパチパチパチ

 みんな笑顔でカナちゃんを迎えてくれている。

 しかし……カナちゃんは凄いなぁ……まだ中1なのにしっかりとした挨拶ができるているし……俺よりもしっかりしているんじゃないのか? と俺が感心していると横で息を荒くした橋本が「天使だ。遂に天使が舞い降りた」と訳の分からないことを言っている。

「三田さん、いえ加奈子ちゃんって呼ぼうかな? 今日は本当によく来てくれたわね。あなたに会うのをとても楽しみにしていたのよ。あ、ゴメンなさい。自己紹介をまだしていなかったわね? 私はボランティア部部長で3年の立花朱里と言います。今日から七夕祭りまでの短い間だけどよろしくね?」

「はい、こちらこそよろしくお願いします!!」

 立花部長を始め、部員全員が一通り自己紹介をした後、予想していた通り、大石さんがカナちゃんに質問をし始める。

「ところでさぁ、加奈子ちゃんは鎌田先輩とどういう関係なのかなぁ? 親戚では無いのよねぇ?」

「え? はい、そうですね。親戚ではありませんが……」

 カナちゃんが返答に困っているので俺は慌てて大石さんの前に立ち塞がり咄嗟にこう言った。

「俺とカナちゃんには共通の知り合いがいるんだよ。それで偶然、知り合ったんだけどさ……初めて会った時はカナちゃんが幼稚園児で俺が中1の時だったかな……それでそこから交流が始まったというか……俺は妹がいないし、カナちゃんにはお兄ちゃんがいないからとても新鮮でさ……いつの間にかお互いに少し年の離れた兄妹みたいな間柄になったというか……ね、カナちゃん?」

 俺がカナちゃんにそう問いかけると一瞬間があったが、直ぐにカナちゃんも俺の話に合せてくれた。ただ、その時のカナちゃんの表情は少し寂しそうな気がしたが……
 
 でも俺としては咄嗟に出た言葉だったけど、意外と上手く言えたんじゃないのか? と満足はしていた。

「へぇ、そうなんですねぇ? お二人は兄妹のような関係なんですねぇ? それじゃぁ……いえ、まっいっか……加奈子ちゃんがうちの部にもっと馴染んでからでもいいかな? はい、お二人の関係はよく分かりました。ありがとうございま~す」

 何だ、大石さんのあの含みを残した言い方は? これはしばらくの間は要注意だな。っていうか、カナちゃんがうちの部に参加するのが決まった時点でこういう不安は覚悟していたけども……

 少し苦笑いをしながらカナちゃんを見つめている俺の横で橋本が「ぼ、僕もあんな天使のような妹が欲しかったなぁ……」と呟いている姿が心の底から気持ち悪かった。

 こいつも大石さんとは違う意味で要注意人物だな。

「さぁ、自己紹介はそれくらいにして、そろそろ打ち合わせを始めましょう」

 立花部長がそう言うと全員の顔が一気に引き締まり次々と椅子に座り始める。

 部長が大きなホワイトボードに何か書いている間に俺とカナちゃんとで先程カナちゃんが買ってきてくれた飲み物を部員達に配り始めた。

 そして飲み物を配り終えた俺達も席へ着き立花部長の方を向く。

 いよいよカナちゃんが加わったボランティア部が動き出す。





――――――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。

第5章開始です。
どうぞよろしくお願い致します。
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