あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

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第6章 衝撃の事実編

第66話 ゴメンね。さようなら……/加奈子

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 日曜日……今日は私達『ボランティアサークル』の活動日。
 朝から地域のゴミ拾いをしている。

 ちなみにりょう君は大学近くのコミュニティーセンターで行われる催しのお手伝いがあり終わり次第、こちらに来てくれるって言っていたけど、間に合うのかなぁ……?

 でも、間に合わなくても活動後にプチデートの約束をしているから私としてはウキウキした一日になりそうだわ。

「しかし、うち等の地域ってオフィスビルが多くて人通りも多いからゴミが結構落ちているけど……この通りの通行人はサラリーマンが多いはずなのに一体どうなっているのかしら!? 大人のクセに何で平気でゴミを捨てるのか理解できないわ!!」

 沙耶香がブツブツ文句を言いながらゴミを拾っている。

「ハハハ、沙耶香、さっきから文句ばかり言っているわねぇ?」

 桃花が呆れた顔をしながら言っている。

「でも今日は良い天気で良かったじゃない? それに全然、ゴミが落ちていないのもボランティア活動としては物足らないし、これくらのゴミが落ちている方がやりがいがあるんじゃない?」

 私がそう言うと沙耶香は「ほんと、加奈子ってポジティブな性格だよね? 羨ましいわ。あ、でも鎌田さんってポジティブな性格の女性の方が好きかもしれないわね? これは前向きな気持ちで頑張らないといけないわ。でも本当に鎌田さんは遅れて参加してくれるのかしら?」

「うん、来るって言ってたよ。だから楽しみに待ってましょうよ?」

「そ、そうよね? それに他のメンバーは文句も言わずに頑張っているし、私だけが文句を言っているのも恥ずかしいもんね」

 沙耶香はそう言うと黙って少し離れた場所でゴミ拾いを始めるのだった。

 トントン……

 ん?

 私の肩を桃花が軽く叩いてきた。

「どうしたの、桃花?」

「いやあのね、前から気になっていたんだけどさぁ……何度か鎌田さんと加奈子の様子を見ていたけど、あなた達って本当は付き合っているんじゃないの?」

「えっ!? なっ……」

「フフフ……やはりそうなのね? でも歳の差があり過ぎるし、世間体ってのもあって皆には隠しているとかじゃないの?」

 前から桃花は鋭い子だとは思っていたけど……運動神経抜群だし洞察力も高いのかもしれないなぁ……

「せ、正式に付き合っている訳じゃないんだよ。でも……私が高校生になったら正式に付き合う約束はしているの」

「そうなんだぁ。やはりそうだったのね? 私も最近、鎌田さんと会う機会が増えていたけど、加奈子を見る鎌田さんの表情が他の人とは全然違っていたから、もしかしたらって思っていたのよ。あの表情は好きな人を見ている表情だもんなぁ……まぁ、加奈子が鎌田さんの事が好きだというのは初めて会った時に直ぐ分かったけどね」

「えっ、そうなの? 私、気付かれないように気を付けていたのに……」

「ハハハ、駄々洩れだよぉ。加奈子からは鎌田さん大好きオーラが出まくってたしぃ……加奈子って演技下手くそだから演劇部に入部しなくて正解だったかもねぇ。ハハハ!!」

「下手くそって……」

 はぁ……でも桃花の言う通りかもなぁ……私のりょう君に対する想いは抑える事なんてできないもん。

「だから毎日、沙耶香が鎌田さんの話を私にしてくるんだけど、それが聞いていて結構疲れるというか……沙耶香にとって鎌田さんは小さい頃から憧れていた人だし、気持ちは分るけどさぁ……でも加奈子と鎌田さんの間にあの子が割り込める隙なんて無いのになぁって思うと姉妹としてはとても複雑なのよ……」

「そうだよね……ゴメンね、桃花……あなたに辛い思いをさせてしまって……」

「加奈子が謝ることは無いよぉ。沙耶香が二人の関係に気付けない鈍感な子で勝手に空回りしているだけだしさ……それにそんな姉の姿を見ないといけないのは姉妹だから仕方が無いんだし……」

「あ、ありがとう桃花……でも沙耶香にはしばらくこの事は内緒にしていてくれないかな? せっかく出来た友達とこういう事でギクシャクしたくないし……」

「ギクシャクはしないと思うけどなぁ……それに沙耶香も早いうちに二人の関係を知っていた方が本人の為にも良いと思うんだけどなぁ……」

「お願い、言える時期が来たら私から沙耶香に言うから、今は黙ってて欲しい……」

「分かったわ。私から沙耶香には何も言わないわ。いずれにしても私は加奈子の味方だから、何かあればいつでも私に相談してよね?」

「うん、分かった。ありがとう……」


 ウーーーーーー ウーーーーーー

「ん? なんだか向こうの方でパトカーのサイレンみたいな音が聞こえるわね?」

「え、そうかな? 私には全然、聞こえないけど……」

「まぁ、かなり向こうの方で聞こえたからこの辺には来ないとと思うけどさ……それよりも少し話しをし過ぎて私達、全然ゴミ拾いができてないよね? ちゃんとしないと今度は私達が沙耶香に怒られちゃうわ」

「ハハハ、そうだね。私達も頑張ってゴミ拾いをしましょう」


 私は桃花と別れて一人で信号機のある交差点の一角でゴミ拾いをしていた。

 今日は日曜日だから車も少なく通行人も少ないから辺りは静かだった。

 それに今は夏だけど朝はまだ気温があまり上がっていないみたいで太陽も大きな雲に隠れているみたいだから暑いという感覚もなく汗もあまりかいていない。

 勿論、日焼け対策の為に帽子はかぶっているし、服装も長袖のTシャツを着ているけどね。日焼けした顔をりょう君に見られるのは嫌だしさ……

 私はポケットから携帯電話を取り出し時間を確認する。

 午前9時からゴミ拾いを始めて今は11時、もう2時間も経ったんだ。りょう君は間に合うかなぁ……とりあえず、あと30分くらいしたらお昼休憩をしなくちゃ。

 ウーーーーーー ウーーーーーー

 ん? 私にもサイレンの音が聞こえるわ。やはり桃花が言っていたのは本当だったのね? でも私にも聞こえるという事はパトカーが近づいて来ているって事だよね?

 それにサイレンの音は一台だけじゃないわ。数台の音が重なって聞こえている。何か大きな事件でもあったのかな?

 でも青葉市って平和な街っていうイメージなのに珍しいなぁ……
 それよりも、りょう君は大丈夫かな?

 慌ててこちらに向かって事故に巻き込まれたりしたら怖いもんね。あ、そうだ。間に合わなくてもいいからゆっくり来てねってメールをしておこっと。私にはその後のプチデートの方が大事なんだから……

 私はメールを打ち終えると反対側の交差点付近のゴミ拾いをしようと思い青信号に変わってから横断歩道を歩き始める。そして半分くらい渡ると、突然大きな音がした。

 キキキッキーーーーーーッ

 私はその音の方を見ると100メートルくらい向こうに見える交差点からタクシーが急ブレーキをかけ大きく曲がってこちらに走っていた。そして物凄いスピードで私のいる交差点に向かっている。

 何台ものパトカーも曲がって来てタクシーを追いかけている感じだった。

 何あれ? 何でタクシーがパトカーに追われているの?

 今はタクシー側の交差点は赤信号だけど、タクシーは止る気配は全然無い。そしてどんどん私の方に近づいて来ている。私は運転席の方を見ると運転している人は帽子をかぶっていない……もしかして盗難車なの?

 その時、パトカーの拡声器から大きな声が聞こえる。

「山本ーっ!! 止れ!! 止るんだ!! 無駄な抵抗は止めろーっ!!」

「山本……?」

 私はマズいと思い横断歩道を急いで渡ろうとした瞬間、足がもつれてしまい、転んでしまった。

 しまった。このままでは……

 タクシーはスピードを落とす気配は無くどんどん私に近づいて来る。

「加奈子、危ない!! 早く逃げてーっ!!」
「キャーッ!! 加奈子!!」
「 「 「三田さん!!」 」 」

 沙耶香や桃花、そして他の部員達が私に気付いたみたいで泣き叫んでいる。

 私、もしかして死ぬの?

 こんなところで死んでしまうの?

 りょう君に会えないまま死んでしまうの……?

 嫌だ。そんなの絶対に嫌だ……

 た、助けて……誰か助けて……

 お願い、誰か……

 りょう君……ゴメンね……

 大好きなりょう君……私の分まで……

 私は死を覚悟して目を閉じた。

「 「加奈子ーっ!!」 」

 沙耶香、桃花……さようなら……


「カナちゃんは俺が守る!!」

 え? 今の声……

 ガサッ

 ボッカーーーーーーーンッ

 私は誰かに抱きかかえられるような感覚と同時に激しい音がした。そして目を開けるとりょう君に抱きかかえられたままの状態で私達は宙に浮いていた。





――――――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。

次回、『衝撃の事実編』最終話となります。
どうぞ次回もよろしくお願い致します。
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