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モブ令嬢と魔王様(自称)
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「おい、貴様。早く起きろ」
不愛想にそういう誰かの声。その声に私は聞き覚えがなかったため、無視を決め込む。
「え?……いや、早く起きてよ」
先ほどの威勢の良い声はどこに行ったのか。困惑が入り混じった声でそう言う。
「ほ、本当に大丈夫?だ、誰か呼んだ方が……」
最終的には気弱そうな声になり、さすがに可哀そうになって私はのそりと起き上がる。
「あ、よかっ……じゃ、じゃなくて。ゴホン……貴様、これ以上俺に迷惑をかけるな」
安堵の声が一瞬聞こえたするが、私はそこには触れず、相手のことを知るために、相手をよく観察する。
相手は2メートルほどはありそうなほどの大男で、頭には暗闇のような一切の光を通さない黒色のつのが付いており、肌は色白で、顔立ちは怖いほど整っている。
ふとそこで、私は我に返り、相手のことでいっぱいいっぱいになっていて気が付かなかったが、自身が知らない場所にいることに気が付く。
「ここは?そして、貴方は?」
不愛想に私がそう聞くと、目の前の大男ははぁ、と重たいため息をつきながら、口を開く。
「俺の名前はシュエル・ライリオン。ライリオン王国……魔界の王だ」
「へぇ」
「いや、お前から聞いたんだろ!?もう少し興味を示せ!!」
「で?ここはどこ?」
「無視するな!!」
うるさいな、と思いながら、シュエルと名乗った男を冷めた目で見つめると、シュエルはぐぬぬっ、と唸りながらこぶしを握り締める。
「……ここは魔界にある俺の城だ」
「そう……ならさっさと私を元の場所に帰してください。私は貴方にかまってる暇はありません」
「おい……俺は貴様が人間界で倒れていたところを助けてやったんだぞ?」
「それはありがとうございます。でも、別に私を魔界に連れてくる必要性はなかったですよね?」
「い、いや、そうなんだけど……でも、さぁ。そんなに言う必要ないじゃん!!」
あれ?この人、打たれ弱い?
「てか、俺からも一つ聞いていい?」
「え、えぇ……」
この人、一気にさっきまでの威厳がなくなって、砕けた口調になったな……
「きみ……貴様、どうしてあんなところで倒れていた?」
「えっと……」
あんなところ……とはきっと、なぜカフェの近くの道……だよね?
「実は、近くにカフェがあり、そこで私はタルトを食べていたのですが……何故だか急に体が熱くなって、意識が保てなくなって……」
「そうか……それは、貴様が倒れる前に食べたというタルトになにか問題があったのでは?」
「多分……?でも、タルトを食べ始めたときはなんともなかったのです。それが、ある人物がカフェに来店した後に食べると、先ほど言ったような症状が出て……」
「して、そのある人物とは?」
「あ、えっと……ソフィアさんとルナソルさんという人物なのですが……」
「ふむ……ルナソルという者は知らんが、ソフィアというのは、人間界で聖女ともてはやしている者のことか?」
「はい……魔界にも知れ渡っているのですね、ソフィアさん」
「あぁ。確か、悪女・レイナの悪行の数々を断罪した者だったな?」
「……ねぇ、貴方もレイナは悪人だと思いますか?……断罪されるべき人間だと思いますか?」
「 ? なぜそんなことを聞く?」
「……単に気になっただけです」
「そうか……俺は別にそうとは思わないな」
「……」
「人間界の者がどう思おうが、魔王である俺には関係ない。俺は自身の目で見たものしか信じない性分でな。人間界の者のように、無条件にソフィアとやらをもてはやすつもりはない」
きっぱりと言い切るシュエルを、私はいまいち信じることができず、シュエルに疑いの目を向けるが、シュエルはそんな私の失礼な態度に怒ることはなく、苦笑を浮かべながら口を開く。
「まぁ、いい。とにかく貴様は訳ありのようだから、何かあれば俺のもとに来い。少しの間ならかくまってやる。なぜなら俺は魔王だからな」
「まぁ別に私は貴方が魔王だなんて信じてませんけどね」
「はぁ、もういいよ」
生意気な私を軽くあしらいながら、シュエルは指を鳴らす。すると私は、気絶する前にいたカフェの近くの道に突っ立っていた。
「何かあれば俺のもとに来い……って言ってたのに、どうやって行けばいいのよ……」
そう思いながら、私は帰路につく。
私はシュエルのことは信じない。信じてしまったら、裏切られた時の悲しみと憎しみが倍増するから。
それでも、頼る。そして、利用する。
全ては、レイナのために。
不愛想にそういう誰かの声。その声に私は聞き覚えがなかったため、無視を決め込む。
「え?……いや、早く起きてよ」
先ほどの威勢の良い声はどこに行ったのか。困惑が入り混じった声でそう言う。
「ほ、本当に大丈夫?だ、誰か呼んだ方が……」
最終的には気弱そうな声になり、さすがに可哀そうになって私はのそりと起き上がる。
「あ、よかっ……じゃ、じゃなくて。ゴホン……貴様、これ以上俺に迷惑をかけるな」
安堵の声が一瞬聞こえたするが、私はそこには触れず、相手のことを知るために、相手をよく観察する。
相手は2メートルほどはありそうなほどの大男で、頭には暗闇のような一切の光を通さない黒色のつのが付いており、肌は色白で、顔立ちは怖いほど整っている。
ふとそこで、私は我に返り、相手のことでいっぱいいっぱいになっていて気が付かなかったが、自身が知らない場所にいることに気が付く。
「ここは?そして、貴方は?」
不愛想に私がそう聞くと、目の前の大男ははぁ、と重たいため息をつきながら、口を開く。
「俺の名前はシュエル・ライリオン。ライリオン王国……魔界の王だ」
「へぇ」
「いや、お前から聞いたんだろ!?もう少し興味を示せ!!」
「で?ここはどこ?」
「無視するな!!」
うるさいな、と思いながら、シュエルと名乗った男を冷めた目で見つめると、シュエルはぐぬぬっ、と唸りながらこぶしを握り締める。
「……ここは魔界にある俺の城だ」
「そう……ならさっさと私を元の場所に帰してください。私は貴方にかまってる暇はありません」
「おい……俺は貴様が人間界で倒れていたところを助けてやったんだぞ?」
「それはありがとうございます。でも、別に私を魔界に連れてくる必要性はなかったですよね?」
「い、いや、そうなんだけど……でも、さぁ。そんなに言う必要ないじゃん!!」
あれ?この人、打たれ弱い?
「てか、俺からも一つ聞いていい?」
「え、えぇ……」
この人、一気にさっきまでの威厳がなくなって、砕けた口調になったな……
「きみ……貴様、どうしてあんなところで倒れていた?」
「えっと……」
あんなところ……とはきっと、なぜカフェの近くの道……だよね?
「実は、近くにカフェがあり、そこで私はタルトを食べていたのですが……何故だか急に体が熱くなって、意識が保てなくなって……」
「そうか……それは、貴様が倒れる前に食べたというタルトになにか問題があったのでは?」
「多分……?でも、タルトを食べ始めたときはなんともなかったのです。それが、ある人物がカフェに来店した後に食べると、先ほど言ったような症状が出て……」
「して、そのある人物とは?」
「あ、えっと……ソフィアさんとルナソルさんという人物なのですが……」
「ふむ……ルナソルという者は知らんが、ソフィアというのは、人間界で聖女ともてはやしている者のことか?」
「はい……魔界にも知れ渡っているのですね、ソフィアさん」
「あぁ。確か、悪女・レイナの悪行の数々を断罪した者だったな?」
「……ねぇ、貴方もレイナは悪人だと思いますか?……断罪されるべき人間だと思いますか?」
「 ? なぜそんなことを聞く?」
「……単に気になっただけです」
「そうか……俺は別にそうとは思わないな」
「……」
「人間界の者がどう思おうが、魔王である俺には関係ない。俺は自身の目で見たものしか信じない性分でな。人間界の者のように、無条件にソフィアとやらをもてはやすつもりはない」
きっぱりと言い切るシュエルを、私はいまいち信じることができず、シュエルに疑いの目を向けるが、シュエルはそんな私の失礼な態度に怒ることはなく、苦笑を浮かべながら口を開く。
「まぁ、いい。とにかく貴様は訳ありのようだから、何かあれば俺のもとに来い。少しの間ならかくまってやる。なぜなら俺は魔王だからな」
「まぁ別に私は貴方が魔王だなんて信じてませんけどね」
「はぁ、もういいよ」
生意気な私を軽くあしらいながら、シュエルは指を鳴らす。すると私は、気絶する前にいたカフェの近くの道に突っ立っていた。
「何かあれば俺のもとに来い……って言ってたのに、どうやって行けばいいのよ……」
そう思いながら、私は帰路につく。
私はシュエルのことは信じない。信じてしまったら、裏切られた時の悲しみと憎しみが倍増するから。
それでも、頼る。そして、利用する。
全ては、レイナのために。
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