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罪と聖女
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「では、ソフィアさん。これが何なのかわかりますか?」
「な、なんですか急に!?それがなんだって関係ないでしょう!!」
「ふふっ、果たして、本当にそうなのでしょうか?」
そう言いながら、私はボイスレコーダーの再生スイッチを押す。
(貴方がレイナを直接殺したのでしょう?)
( !? )
(あら、図星かしら?)
(ち、違……)
(貴方はソフィアに言われ、卒業記念パーティーの日に、国外追放されるはずのレイナを殺した……違うの?)
(か、回復、してくれるの、なら……こ、答え……)
(じゃあ、先に言ってよ。その後で、私は貴方を回復することを誓うわ)
(……せん、ぱの……いう、とおり……で、す)
「な!?そ、それは……!!」
「ふふっ、これはボイスレコーダー。このボイスレコーダーによれば、レイナを殺したのはルナソル君らしいですよ?……人を殺したということは、自分も殺される覚悟があったのでしょう?なら、殺されても仕方がないじゃないですか。……あ、何度も言いますが、私はルナソル君を殺してないですよ」
「そ、そのボイスレコーダーの音声は……貴女が偽造したものかもしれないじゃないですか!!」
「えぇ?やだなぁ。こんなにルナソル君の声そっくりなのに?一体、どうやって偽造をするの?」
「そ、それは……!!ま、魔法を使ってルナソル君の声をまねて……!」
「あなた方とこうやって会話をするだけで、反吐が出そうなのに、私がルナソル君の声を魔法でまねる?そんなことすると、本気でお思いで?」
「わ、分からないじゃない!!貴女は、私を貶めるためならばなんだって……」
「あら?私が貴女を貶めることにしたのは、元々は貴女が原因ではありませんか。ねぇ、心当たりがあるのでしょう?だから貴女は先ほどから顔を青く染めている……違いますか?」
「ち、違う!!全っ然違う!!」
ソフィアは、半ば叫びながらそう言い、殺気を漂わせながら、私に近づいてくる。
「違う、私はやってない。全部、レイナを殺したのも、ルナソルを殺したのも、シュエルを誑かしたのも、全部全部、貴女がやったんだ!!この悪魔!!」
「あら?悪魔を処罰するのは、同じ悪魔の役目でしょう?それならば、悪魔は私にピッタリではありませんか」
「黙れ!」
そう言って、ソフィアは私に拳を振り上げ、私を殴ろうとしたが、危なげなく、隣にいたシュエルがソフィアの拳を受け止め、彼女の動きを止める。
「ソフィアっ!!」
そんなソフィアを見て、デイファンは私たちの方へ駆け寄ろうとしたが、私は彼の右の二の腕めがけ、懐に隠しておいたナイフを投げつける。
「がぁっ……!!」
私のナイフは命中したようで、デイファンはうずくまりながら、右の二の腕を抑える。
「ねぇ、ソフィアさん。早く認めてください。貴女は、我が親友・レイナを貶め、殺害に関与し、ルナソル君を含めたこの国の大勢の人々を魅了し、自身の私利私欲のために利用したのでしょう?」
「ち、違う!!」
「……何が違う?」
「私は……私はレイナを殺していない!!それに、私はレイナを貶めていない!!レイナが私をいじめたんだ!!だから、私のは立派な正当防衛で……」
「正当防衛……ね。では、具体的に何をしたのですか?」
「そ、それは……!!」
「具体的に言ってください。レイナは、貴女をどんなふうにいじめたのですか?そして、貴女はどんなふうにその、正当防衛を行ったのですか?」
「……」
「言えないですよね?だって、レイナは貴女をいじめていない。それに、もしも本当に、あり得ないでしょうけど、レイナが貴女をいじめていたのだったとしても、貴女が行った正当防衛は、正当とは言えない」
「違う、違う違う違う違う!!!」
そう言いながら、彼女はシュエルの拘束を振りほどき、近くの机の上に置いてあった食事用ナイフを手に取り、半狂乱になりながら、それを振り回す。その様子を見た私は、一瞬、シュエルに目配せするが、すぐにソフィアに目を戻す。
「あら、危ないですよ?」
「うるさい、うるさいうるさいうるさい!!」
そう言いながら、彼女は食事用ナイフを私の腹に刺した。
「ふふっ、切れ味が悪いナイフを刺したって、浅傷にしかなりませんよ?……それに」
私はソフィアの腕を力強くつかみ、私の腹に刺さったナイフを抜き取る。
「貴女のこんなか弱い力じゃ、赤子だって殺せませんよ」
そう言って、私はソフィアの首の後ろに手刀を打ち込み、彼女の意識をとばすと、ソフィアは床に勢いよく倒れこむ
「大丈夫か!?」
ソフィアが気を失った瞬間、シュエルが私の安否を確認する。
「えぇ、大丈夫よ。それにしても、よくあの一瞬で、私が言いたいことがわかったね?」
「まぁ、な」
言葉を少し濁すシュエルに、私は軽く頭をかしげる。
あの一瞬と言うのは、ソフィアが食事用ナイフを振り回したとき、私が彼に目配せした瞬間。絶好のチャンスと思い、私は彼に、「庇わないで」という意図で見つめたのだが、どうやらシュエルは、私の言いたいことを理解してくれたようだった。
「てか、治療しなくても大丈夫か?」
「あぁ、忘れてたわ」
シュエルの言葉で、私は自分が怪我をしていたことを思い出し、ヒール、と小さくつぶやき、怪我を治す。
「さて、と。ねぇ、シュエル。貴方はソフィアさんが私に明確な殺意を持って、ナイフを私の腹に刺したこと、しっかり見ていたわよね?」
「あぁ、もちろん」
「なら、もう私がここに留まる理由もないわね」
そう言って、私たちはざわざわしている会場なんか気にせずに、会場を後にする。
今日の出来事で、ソフィアとデイファンには苦しんでもらったが、それではまだ足りない。
ソフィアにはまだまだ苦しんでもらうし、デイファン以外の攻略者や、この国の民にも苦しんでもらわなくてはいけない。
そう言いながらも、勝利を確信した私の顔には、晴れ晴れとした笑みが宿っていたのだった。
「な、なんですか急に!?それがなんだって関係ないでしょう!!」
「ふふっ、果たして、本当にそうなのでしょうか?」
そう言いながら、私はボイスレコーダーの再生スイッチを押す。
(貴方がレイナを直接殺したのでしょう?)
( !? )
(あら、図星かしら?)
(ち、違……)
(貴方はソフィアに言われ、卒業記念パーティーの日に、国外追放されるはずのレイナを殺した……違うの?)
(か、回復、してくれるの、なら……こ、答え……)
(じゃあ、先に言ってよ。その後で、私は貴方を回復することを誓うわ)
(……せん、ぱの……いう、とおり……で、す)
「な!?そ、それは……!!」
「ふふっ、これはボイスレコーダー。このボイスレコーダーによれば、レイナを殺したのはルナソル君らしいですよ?……人を殺したということは、自分も殺される覚悟があったのでしょう?なら、殺されても仕方がないじゃないですか。……あ、何度も言いますが、私はルナソル君を殺してないですよ」
「そ、そのボイスレコーダーの音声は……貴女が偽造したものかもしれないじゃないですか!!」
「えぇ?やだなぁ。こんなにルナソル君の声そっくりなのに?一体、どうやって偽造をするの?」
「そ、それは……!!ま、魔法を使ってルナソル君の声をまねて……!」
「あなた方とこうやって会話をするだけで、反吐が出そうなのに、私がルナソル君の声を魔法でまねる?そんなことすると、本気でお思いで?」
「わ、分からないじゃない!!貴女は、私を貶めるためならばなんだって……」
「あら?私が貴女を貶めることにしたのは、元々は貴女が原因ではありませんか。ねぇ、心当たりがあるのでしょう?だから貴女は先ほどから顔を青く染めている……違いますか?」
「ち、違う!!全っ然違う!!」
ソフィアは、半ば叫びながらそう言い、殺気を漂わせながら、私に近づいてくる。
「違う、私はやってない。全部、レイナを殺したのも、ルナソルを殺したのも、シュエルを誑かしたのも、全部全部、貴女がやったんだ!!この悪魔!!」
「あら?悪魔を処罰するのは、同じ悪魔の役目でしょう?それならば、悪魔は私にピッタリではありませんか」
「黙れ!」
そう言って、ソフィアは私に拳を振り上げ、私を殴ろうとしたが、危なげなく、隣にいたシュエルがソフィアの拳を受け止め、彼女の動きを止める。
「ソフィアっ!!」
そんなソフィアを見て、デイファンは私たちの方へ駆け寄ろうとしたが、私は彼の右の二の腕めがけ、懐に隠しておいたナイフを投げつける。
「がぁっ……!!」
私のナイフは命中したようで、デイファンはうずくまりながら、右の二の腕を抑える。
「ねぇ、ソフィアさん。早く認めてください。貴女は、我が親友・レイナを貶め、殺害に関与し、ルナソル君を含めたこの国の大勢の人々を魅了し、自身の私利私欲のために利用したのでしょう?」
「ち、違う!!」
「……何が違う?」
「私は……私はレイナを殺していない!!それに、私はレイナを貶めていない!!レイナが私をいじめたんだ!!だから、私のは立派な正当防衛で……」
「正当防衛……ね。では、具体的に何をしたのですか?」
「そ、それは……!!」
「具体的に言ってください。レイナは、貴女をどんなふうにいじめたのですか?そして、貴女はどんなふうにその、正当防衛を行ったのですか?」
「……」
「言えないですよね?だって、レイナは貴女をいじめていない。それに、もしも本当に、あり得ないでしょうけど、レイナが貴女をいじめていたのだったとしても、貴女が行った正当防衛は、正当とは言えない」
「違う、違う違う違う違う!!!」
そう言いながら、彼女はシュエルの拘束を振りほどき、近くの机の上に置いてあった食事用ナイフを手に取り、半狂乱になりながら、それを振り回す。その様子を見た私は、一瞬、シュエルに目配せするが、すぐにソフィアに目を戻す。
「あら、危ないですよ?」
「うるさい、うるさいうるさいうるさい!!」
そう言いながら、彼女は食事用ナイフを私の腹に刺した。
「ふふっ、切れ味が悪いナイフを刺したって、浅傷にしかなりませんよ?……それに」
私はソフィアの腕を力強くつかみ、私の腹に刺さったナイフを抜き取る。
「貴女のこんなか弱い力じゃ、赤子だって殺せませんよ」
そう言って、私はソフィアの首の後ろに手刀を打ち込み、彼女の意識をとばすと、ソフィアは床に勢いよく倒れこむ
「大丈夫か!?」
ソフィアが気を失った瞬間、シュエルが私の安否を確認する。
「えぇ、大丈夫よ。それにしても、よくあの一瞬で、私が言いたいことがわかったね?」
「まぁ、な」
言葉を少し濁すシュエルに、私は軽く頭をかしげる。
あの一瞬と言うのは、ソフィアが食事用ナイフを振り回したとき、私が彼に目配せした瞬間。絶好のチャンスと思い、私は彼に、「庇わないで」という意図で見つめたのだが、どうやらシュエルは、私の言いたいことを理解してくれたようだった。
「てか、治療しなくても大丈夫か?」
「あぁ、忘れてたわ」
シュエルの言葉で、私は自分が怪我をしていたことを思い出し、ヒール、と小さくつぶやき、怪我を治す。
「さて、と。ねぇ、シュエル。貴方はソフィアさんが私に明確な殺意を持って、ナイフを私の腹に刺したこと、しっかり見ていたわよね?」
「あぁ、もちろん」
「なら、もう私がここに留まる理由もないわね」
そう言って、私たちはざわざわしている会場なんか気にせずに、会場を後にする。
今日の出来事で、ソフィアとデイファンには苦しんでもらったが、それではまだ足りない。
ソフィアにはまだまだ苦しんでもらうし、デイファン以外の攻略者や、この国の民にも苦しんでもらわなくてはいけない。
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