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悪役令嬢の断罪から始まるモブ令嬢の復讐劇
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翌日、私たちは人間界の王宮に乗り込んでいた。
「ご機嫌麗しゅう、陛下。今日は謁見の場を設けていただき、ありがとうございます」
私はそう言いながらにこやかに笑うが、陛下は目に怒りを込めながら私を睨みつけてくる。
「……なにをしにきた?」
「あら?私はソフィアさんに怪我をさせられた被害者ですよ?そんな可哀そうな私を、陛下は無下に扱うのですか?」
「…貴様の目的はなんだ?」
「それはもちろん……この国を乗っ取ることですわ」
「……」
「あら?ここは笑うところですよ。まったく、これだから年寄りは……」
「貴様、陛下に向かって何たることを……!!」
さすがに護衛の方々も我慢の限界だったようで、私に矛先を向ける。
「あら、どうしましょう?」
「さすがに今のは貴様が悪いだろ……」
能天気につぶやく私に、シュエルは呆れたようにそう小さくささやく。
「まあ、いいわ。陛下、要件を言ってもいいですか?」
「……あぁ、かまわん」
不機嫌なご様子で、陛下は私に許可を出す。
「陛下はライリオン王国の魔物を奴隷にしたいと言っておりましたよね?」
「まさか、魔物を奴隷にして……」
「――あはっ、そんなわけないじゃないですか。今の私の発言に、たいして意味などありません」
馬鹿なことを言おうとしている陛下の言葉に、私は少しだけ笑ってしまった。
「ねぇ、陛下。ソフィアさんは昨夜、自身よりもはるかに格上の私に、明確な殺意を持って、私の腹にナイフを突き刺した。それって、かなりの罪になるでしょう?」
「そ、それは……」
「――それに」
私の言葉に弁明をしようとする陛下の言葉を遮り、私は言葉を続ける。
「ソフィアさんは直接手を下していないとはいえ、ルナソル君に指示し、レイナ殺害に関与した……聖女としてもてはやされているとはいえ、平民が貴族殺害に関与しただなんて、この国では極刑でしょう?」
「……」
「この国では極刑は死刑でしたよね?それならば、私にソフィアさんの死刑執行を任せていただきたいのです」
「それに、我が国のはどんなメリットがある?」
「ふふっ、ソフィアさんが私を殺そうとしたことをなかったことにして差し上げましょう。それが許されないのであれば……ライリオン王国の全勢力を挙げて、この国を攻め滅ぼします。……さぁ、どうします?」
「……」
陛下は少しの間、考え込んでいたが、ソフィアの命と、この国の民全員を……いや、自身の命を天秤にかけた結果、後者をとり、「わかった。ヴィル嬢にソフィア嬢の死刑執行の担当をすることを認めよう」と、私に伝えた。
「ありがとうございます」
少々上から目線なのが気に食わなかったが、当たり障りのない返事をし、私たちは王宮を去ったのであった。
―――――
「ヴィル。君は王との交渉が成立しなかったら、本当に国を滅ぼす気だったのか?」
「まさか」
私たちがライリオン王国の王宮に戻って来るや否や、シュエルはそう聞いてくる。
「陛下なら、たとえ心酔しているソフィアの命がかかっていたとしても、自身の命を優先することは分かってたから」
そう言いながら、私はソフィアにどんな処刑を実行するか考える。
「ねぇ、シュエル。ソフィアの死刑時の映像を、この国全体に配信することはできる?」
「え?まぁ、できないこともないが……そんな悪趣味なことをするのか?」
「えぇ、そうよ。国の民み~んなを絶望に落とさなければね」
くすくすと、私は悪趣味な笑みを浮かべるのであった。
―――――
「こんにちは、ルネンス様、フィランス様」
人間界の王宮の地下の部屋にて。
私は、ルネンスとフィランスを呼び出し、にこやかに笑った。
二人は私の挨拶に何も返事をしなかったが、私は気にせず話を続ける。
「では、お二人とも。これからソフィアさんの処刑を開始しますが、よろしいですか?」
「い、いいわけないだろ!?」
ルネンスがみっともなく取り乱し、フィランスも顔面を蒼白にさせる。
「あなた方に拒否権があると思いで?」
私が冷たくそう言い放つと、ルネンスはあっさりと押し黙る。
「愚かですね。やはり、恋い慕う相手なんかよりも、自分の命が大切ですよね?」
「……」
「ふふっ、まぁ、いいですわ」
そう言って、私の足元に倒れこんでいるソフィアを、処刑台の上に拘束する。
「では、お二人のお願いしたいことがあります。お二人には、今日から毎日一本ずつ、手と足の指を切っていってほしいのです」
「「 !? 」」
私がそんなことを言うと思っていなかったのか、二人は驚愕の表情を浮かべた。
「あぁ、一応言っておきますが、たとえソフィアさんが苦しんでいたって、頼んできたって、私がいいと言うまで、ソフィアさんにとどめを刺してはいけませんよ?」
くすくすと笑いながら、私はあらかじめ部屋に設置しておいたカメラの再生ボタンを押す。
「では、私はこの部屋から去りますが……先ほどの私の言葉に背く行為をした場合、この国の民の命がどうなるか……わかっていますよね?」
見下すように、笑いながらそう言うと二人は私を睨みつけてくるが、私はそんなことは気にせずに、部屋を出る。
なぜ、このような残酷なことをと思われても仕方がない。こんなことをしたってレイナが帰ってこないことなんてわかっている。それでも、この憎しみを抑えるためには、レイナを傷つけた者たちに復讐するほかなかった。
―――――
それから15日後、ソフィアは絶命した。
ルネンスやフィランスは私の言いつけをしっかり守り、従順にソフィアを自らの手で、傷つけていった。
処刑開始から10日間はソフィアの手足の指を切り離し、それから5日間は、止血をしたうえで手首足首を切り離したり、美しいソフィアの白髪を切ったりした。
そして、ソフィアはその苦しみに耐えかねたのか、自ら舌を噛み切って、絶命したのだ。
その後、ソフィアが国民全員にかけた魅了魔法は解けたのだが、犯した罪や、ソフィアに心酔していたことには変わりない。ソフィアが処刑を受けているときは、国民は絶望に染まっていたが、ソフィアが絶命したとたん、国民は皆、無実の罪でレイナを傷つけたこと、そして、依存対象を失ったことにより、無気力になった。それは、貴族も同じである。ちなみに、ソフィアの処刑を担当したルネンスとフィランスは、言葉がしゃべれないほどのトラウマが芽生えたらしいが、レイナはもう二度と目覚めることはない。それに比べれば、生きているだけありがたいと思ってほしい。
デイファンは、私が投げたナイフの怪我のせいで、利き手である右手が使えなくなり、生活に支障が起き、そんなものが王位を継げるはずもなく、王位継承権は剥奪された。しかし、陛下もソフィアを失ったことにひどく消沈しており、王族も貴族も平民も完全に機能しなくなったことにより、他国に攻め入られそうになっていた。そこで手を差し伸べたのは、シュエル率いるライリオン王国。シュエルは、自分が国の王になる代わりに、戦争に加勢しよう、と取引を仕掛けた。陛下は二つ返事でそれを了承し、シュエルは晴れて、二国の王となった。
そして、戦争は魔物の力により、圧勝。
これでめでたしめでたしと思ったのだが、レイナの従兄であり、攻略対象の一人であるシオンが、他国へと逃亡していたらしい。
かかわることはあまりなかったのだが、確かゲームの設定では、シオンはプライドが高い性格。他の攻略対象が私により絶望したのにもかかわらず、自分だけがあまり傷を負っていないと知れば、彼の大切なプライドは粉々に砕け散るのであろう。
そして、テイラン家はシュエルにより、公爵家の身分を剥奪されたうえ、一族まとめて国外追放となった。
いい気味だったよ。私の身内なんだから、そんなひどいことをする必要ないじゃないかって、そう言われてしまった。不思議だよね?私を家から追い出したくせに、私の身内気取りだなんて。そんな奴に、私が味方するわけないのに。
でも、私は散々いい気味だとか、いろいろ言ってきたが、たまに怖くなる時はある。復讐が怖いのか?そんなわけない。レイナは今の私を見て、軽蔑するんじゃないかって、たまにそう思って、怖くなる。でも、そういう時に限って、私は、幼いときの夢を見る。
(ねぇ、ヴィル)
(なぁに、レイナ?)
(もしも、私に何かあったとしても、貴女は何もかかわらないでね?)
(――わかったよ、レイナがそう言うなら……どうしたの?)
(ううん、何でもない)
(そっか……ねぇ、レイナ。私も一つお願いしていい?)
(いいよ、何でも言って)
(それじゃあ……たとえ、私がどんなに世界を敵に回すような行動をしても、貴女だけは、私の友達でいてね?)
(ううん)
(え……)
(だって、私たちはただの友達じゃなくて、親友だよ?)
(……そっか……!!)
まるで、レイナが夢にまで出て、私に大丈夫だよ、私はヴィルの親友だよって、そう言っているように思えて、私はこんなにも弱かったんだって、自覚する。
それでも、私は誰かに心配なんかかけたくなくて、平気なふりをする。でも、自分では完璧だと思ってたって、絶対にシュエルには看破されてしまう。その事実がたまらなく悔しいと思うと同時に、嬉しいと思ってしまう自分もいて、私はなんだかよくわかんなくなってしまう。
ちなみに、私はシュエルの王宮にいまだ居候させてもらっている。本当は、ソフィアが絶命してから、すぐにでも出ていこうと思っていた。だが、シュエルに引き留められてしまった。それから、シュエルは私を口説くようになった。意味が分からない。でも、一番意味が分からないのは、私がシュエルから口説かれるのを、嫌とは思っていないことだ。
私は、シュエルのことが……好きだ。だからこそ、もしもシュエルが私にささやく言葉が、全てうそだと言ったら。そんなこと言われたら、私は今度こそ、本当に立ち直れなくなる。でも、もしもシュエルの言葉が心からの言葉であるのなら。私は、今日こそシュエルの言葉に、肯定的な返事をしてしまうのかもしれない。
「ご機嫌麗しゅう、陛下。今日は謁見の場を設けていただき、ありがとうございます」
私はそう言いながらにこやかに笑うが、陛下は目に怒りを込めながら私を睨みつけてくる。
「……なにをしにきた?」
「あら?私はソフィアさんに怪我をさせられた被害者ですよ?そんな可哀そうな私を、陛下は無下に扱うのですか?」
「…貴様の目的はなんだ?」
「それはもちろん……この国を乗っ取ることですわ」
「……」
「あら?ここは笑うところですよ。まったく、これだから年寄りは……」
「貴様、陛下に向かって何たることを……!!」
さすがに護衛の方々も我慢の限界だったようで、私に矛先を向ける。
「あら、どうしましょう?」
「さすがに今のは貴様が悪いだろ……」
能天気につぶやく私に、シュエルは呆れたようにそう小さくささやく。
「まあ、いいわ。陛下、要件を言ってもいいですか?」
「……あぁ、かまわん」
不機嫌なご様子で、陛下は私に許可を出す。
「陛下はライリオン王国の魔物を奴隷にしたいと言っておりましたよね?」
「まさか、魔物を奴隷にして……」
「――あはっ、そんなわけないじゃないですか。今の私の発言に、たいして意味などありません」
馬鹿なことを言おうとしている陛下の言葉に、私は少しだけ笑ってしまった。
「ねぇ、陛下。ソフィアさんは昨夜、自身よりもはるかに格上の私に、明確な殺意を持って、私の腹にナイフを突き刺した。それって、かなりの罪になるでしょう?」
「そ、それは……」
「――それに」
私の言葉に弁明をしようとする陛下の言葉を遮り、私は言葉を続ける。
「ソフィアさんは直接手を下していないとはいえ、ルナソル君に指示し、レイナ殺害に関与した……聖女としてもてはやされているとはいえ、平民が貴族殺害に関与しただなんて、この国では極刑でしょう?」
「……」
「この国では極刑は死刑でしたよね?それならば、私にソフィアさんの死刑執行を任せていただきたいのです」
「それに、我が国のはどんなメリットがある?」
「ふふっ、ソフィアさんが私を殺そうとしたことをなかったことにして差し上げましょう。それが許されないのであれば……ライリオン王国の全勢力を挙げて、この国を攻め滅ぼします。……さぁ、どうします?」
「……」
陛下は少しの間、考え込んでいたが、ソフィアの命と、この国の民全員を……いや、自身の命を天秤にかけた結果、後者をとり、「わかった。ヴィル嬢にソフィア嬢の死刑執行の担当をすることを認めよう」と、私に伝えた。
「ありがとうございます」
少々上から目線なのが気に食わなかったが、当たり障りのない返事をし、私たちは王宮を去ったのであった。
―――――
「ヴィル。君は王との交渉が成立しなかったら、本当に国を滅ぼす気だったのか?」
「まさか」
私たちがライリオン王国の王宮に戻って来るや否や、シュエルはそう聞いてくる。
「陛下なら、たとえ心酔しているソフィアの命がかかっていたとしても、自身の命を優先することは分かってたから」
そう言いながら、私はソフィアにどんな処刑を実行するか考える。
「ねぇ、シュエル。ソフィアの死刑時の映像を、この国全体に配信することはできる?」
「え?まぁ、できないこともないが……そんな悪趣味なことをするのか?」
「えぇ、そうよ。国の民み~んなを絶望に落とさなければね」
くすくすと、私は悪趣味な笑みを浮かべるのであった。
―――――
「こんにちは、ルネンス様、フィランス様」
人間界の王宮の地下の部屋にて。
私は、ルネンスとフィランスを呼び出し、にこやかに笑った。
二人は私の挨拶に何も返事をしなかったが、私は気にせず話を続ける。
「では、お二人とも。これからソフィアさんの処刑を開始しますが、よろしいですか?」
「い、いいわけないだろ!?」
ルネンスがみっともなく取り乱し、フィランスも顔面を蒼白にさせる。
「あなた方に拒否権があると思いで?」
私が冷たくそう言い放つと、ルネンスはあっさりと押し黙る。
「愚かですね。やはり、恋い慕う相手なんかよりも、自分の命が大切ですよね?」
「……」
「ふふっ、まぁ、いいですわ」
そう言って、私の足元に倒れこんでいるソフィアを、処刑台の上に拘束する。
「では、お二人のお願いしたいことがあります。お二人には、今日から毎日一本ずつ、手と足の指を切っていってほしいのです」
「「 !? 」」
私がそんなことを言うと思っていなかったのか、二人は驚愕の表情を浮かべた。
「あぁ、一応言っておきますが、たとえソフィアさんが苦しんでいたって、頼んできたって、私がいいと言うまで、ソフィアさんにとどめを刺してはいけませんよ?」
くすくすと笑いながら、私はあらかじめ部屋に設置しておいたカメラの再生ボタンを押す。
「では、私はこの部屋から去りますが……先ほどの私の言葉に背く行為をした場合、この国の民の命がどうなるか……わかっていますよね?」
見下すように、笑いながらそう言うと二人は私を睨みつけてくるが、私はそんなことは気にせずに、部屋を出る。
なぜ、このような残酷なことをと思われても仕方がない。こんなことをしたってレイナが帰ってこないことなんてわかっている。それでも、この憎しみを抑えるためには、レイナを傷つけた者たちに復讐するほかなかった。
―――――
それから15日後、ソフィアは絶命した。
ルネンスやフィランスは私の言いつけをしっかり守り、従順にソフィアを自らの手で、傷つけていった。
処刑開始から10日間はソフィアの手足の指を切り離し、それから5日間は、止血をしたうえで手首足首を切り離したり、美しいソフィアの白髪を切ったりした。
そして、ソフィアはその苦しみに耐えかねたのか、自ら舌を噛み切って、絶命したのだ。
その後、ソフィアが国民全員にかけた魅了魔法は解けたのだが、犯した罪や、ソフィアに心酔していたことには変わりない。ソフィアが処刑を受けているときは、国民は絶望に染まっていたが、ソフィアが絶命したとたん、国民は皆、無実の罪でレイナを傷つけたこと、そして、依存対象を失ったことにより、無気力になった。それは、貴族も同じである。ちなみに、ソフィアの処刑を担当したルネンスとフィランスは、言葉がしゃべれないほどのトラウマが芽生えたらしいが、レイナはもう二度と目覚めることはない。それに比べれば、生きているだけありがたいと思ってほしい。
デイファンは、私が投げたナイフの怪我のせいで、利き手である右手が使えなくなり、生活に支障が起き、そんなものが王位を継げるはずもなく、王位継承権は剥奪された。しかし、陛下もソフィアを失ったことにひどく消沈しており、王族も貴族も平民も完全に機能しなくなったことにより、他国に攻め入られそうになっていた。そこで手を差し伸べたのは、シュエル率いるライリオン王国。シュエルは、自分が国の王になる代わりに、戦争に加勢しよう、と取引を仕掛けた。陛下は二つ返事でそれを了承し、シュエルは晴れて、二国の王となった。
そして、戦争は魔物の力により、圧勝。
これでめでたしめでたしと思ったのだが、レイナの従兄であり、攻略対象の一人であるシオンが、他国へと逃亡していたらしい。
かかわることはあまりなかったのだが、確かゲームの設定では、シオンはプライドが高い性格。他の攻略対象が私により絶望したのにもかかわらず、自分だけがあまり傷を負っていないと知れば、彼の大切なプライドは粉々に砕け散るのであろう。
そして、テイラン家はシュエルにより、公爵家の身分を剥奪されたうえ、一族まとめて国外追放となった。
いい気味だったよ。私の身内なんだから、そんなひどいことをする必要ないじゃないかって、そう言われてしまった。不思議だよね?私を家から追い出したくせに、私の身内気取りだなんて。そんな奴に、私が味方するわけないのに。
でも、私は散々いい気味だとか、いろいろ言ってきたが、たまに怖くなる時はある。復讐が怖いのか?そんなわけない。レイナは今の私を見て、軽蔑するんじゃないかって、たまにそう思って、怖くなる。でも、そういう時に限って、私は、幼いときの夢を見る。
(ねぇ、ヴィル)
(なぁに、レイナ?)
(もしも、私に何かあったとしても、貴女は何もかかわらないでね?)
(――わかったよ、レイナがそう言うなら……どうしたの?)
(ううん、何でもない)
(そっか……ねぇ、レイナ。私も一つお願いしていい?)
(いいよ、何でも言って)
(それじゃあ……たとえ、私がどんなに世界を敵に回すような行動をしても、貴女だけは、私の友達でいてね?)
(ううん)
(え……)
(だって、私たちはただの友達じゃなくて、親友だよ?)
(……そっか……!!)
まるで、レイナが夢にまで出て、私に大丈夫だよ、私はヴィルの親友だよって、そう言っているように思えて、私はこんなにも弱かったんだって、自覚する。
それでも、私は誰かに心配なんかかけたくなくて、平気なふりをする。でも、自分では完璧だと思ってたって、絶対にシュエルには看破されてしまう。その事実がたまらなく悔しいと思うと同時に、嬉しいと思ってしまう自分もいて、私はなんだかよくわかんなくなってしまう。
ちなみに、私はシュエルの王宮にいまだ居候させてもらっている。本当は、ソフィアが絶命してから、すぐにでも出ていこうと思っていた。だが、シュエルに引き留められてしまった。それから、シュエルは私を口説くようになった。意味が分からない。でも、一番意味が分からないのは、私がシュエルから口説かれるのを、嫌とは思っていないことだ。
私は、シュエルのことが……好きだ。だからこそ、もしもシュエルが私にささやく言葉が、全てうそだと言ったら。そんなこと言われたら、私は今度こそ、本当に立ち直れなくなる。でも、もしもシュエルの言葉が心からの言葉であるのなら。私は、今日こそシュエルの言葉に、肯定的な返事をしてしまうのかもしれない。
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