【完結】壊された女神の箱庭ー姫と呼ばれていきなり異世界に連れ去られましたー

秋空花林

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第二章 闇に囚われし緑よ、いずれ

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 太陽が憂鬱な気持ちになってる間にもルースはスタスタと畑に向かって歩いて行った。

 何やら畑の人達に声をかけている。村の人達がこぞってルースの元に集まり出した。

 何をしてるか気になって空と一緒に近づいていくと。

「毎度おなじみ!ルース印の畑用肥料!今なら大特化だよ!」

 商魂たくましく商売をしていた。

 今までのスマートな印象と違い過ぎて唖然としてると、はいはい、沢山あるから好きなだけ買ってってね~と鞄からドンドン袋を取り出しては村人に売りつけている。

「あ、セーヤ。ちょうど良かった。村の人集まってるから例の件を聞いてみたら?」
「あ、はい!」

 ルースに言われて太陽もその輪の中に加わったのだった。



◇◇◇



 夕飯を食べた後。太陽は宿のベッドに大の字で寝転んだ。

 ルースに言われて村の人達に話を聞いてる内に、何故かルースと共にそのまま畑仕事を手伝うハメになり。

 慣れない肉体労働の疲労でダウンしたのだ。

 同じ様に畑仕事を手伝った筈のルースは、僕は久しぶりに宿のマスターとお酒でも飲んでくるよ、と店主の所へ元気に出かけてしまった。

「大丈夫か?」

 太陽と2人っきりなので、人型になった空が太陽を心配してる。

「あんまり大丈夫じゃない…」

 しかも頑張った割に、眼帯の男の情報は全くなかったのが残念だ。

 無理はするな、と言って空が頬にキスしてきた。

 そのまま、チュッチュッとおでこや鼻に口づけ、口にもキスをしようとしてきたので、太陽は空の口元を押さえた。

「空待って、何当たり前にキスしようとしてるんだ」
「やっと2人きりになれた」

 ニヤリと笑って空が太陽にのしかかって来た。

 その手が太陽の腰に回る。慌てて太陽は空の胸を必死に押し戻した。

「ちょっと待て!俺とお前はそんな関係じゃないだろ!恋人じゃないんだから」
「オレを恋人の1人にすればいい。優しくしてやる」

 言いながら太陽の上着の中に手を入れ、肌を優しく触って来た。

「恋人の1人って、俺はそんなふしだらじゃない、あ」

 首に唇を這わされ、不覚にも声が出てしまう。

「…前から思っていたが、何でセーヤはそんなにルースだけにこだわるんだ?つがいでもないのに」
「番って何?」
「知らないのか?人間で言う夫婦の事だ」

 空の手が下半身に降りていく。太陽の腰やお尻をズボンの上から触っている。何だかゾクゾクして来た。

「ん…普通は好きな奴がいたら、好きな人にだけ触れたいと、思うだろ?」
「人間でそう思う奴も珍しいな」

 空の手が前に回ろうとしたので、太陽は両手でその手を掴んだ。何だか今、聞き捨てならない言葉を聞いた。

「今のどういう意味?」

 空が何を聞かれているのかわからない様な不思議そうな顔をしている。獣耳がピクピクしていた。

 そういえば空には太陽の事情を話していなかった事に気づいた。

 一旦ベッドに座り直してから、太陽は空に自分の状況を説明した。

 気づいたら東の森にいて記憶を失っていた。だから常識的な事がわからない。直前に眼帯の男に会った事は覚えていてそれで彼を探している、とルースにしたのと同じ説明をした。

 本当は空とルースの事を信用してるから記憶喪失は嘘で、別世界から連れて来られたと本当の事を言ってもいいとは思ってはいる。

 ただ、もし万が一疑われたり、頭のおかしな奴だと思われたら。

 この世界で2人しか頼れる人がいない太陽は、それが怖くてどうしても本当の事を打ち明けられないでいた。

 太陽の話を聞いた空は、それでかと呟いた。

「だからセーヤは他の人間と考え方が違うんだな」
「えっと、例えば?俺も知りたいから気になった事は教えて欲しい」
「お前はショックを受けるかもしれないが。普通人間は男も女もお前みたいに1人にこだわらないぞ。複数と関係を持つのが普通だ」
「は?」

 ポカンとした太陽に空が説明してくれた。

 昔は違ったが現在人間達の間では一夫一妻という考えは無いらしい。

 そんな事をしたら人口減少に拍車がかかるから、基本女性はハーレムで男性を選び放題だとか。

 男性にしても、そもそも女性と縁のない奴の方が多い。だから当然の様に男同士で恋愛もする。

 だけど好き合って同性同士でパートナーとして一緒に住む事はあっても、お互いの恋愛を縛る事はないそうだ。

「何なのその淫らな世界!俺にはハードル高すぎる!」


ーーー


 お待たせしました(?)
 次話から少しずつR18要素が入り始めます。

 軽いものは注意書きは入れてません。
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