【完結】壊された女神の箱庭ー姫と呼ばれていきなり異世界に連れ去られましたー

秋空花林

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第二章 闇に囚われし緑よ、いずれ

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 ラドが立ち去った後、ルースは太陽の手を握った。

「ルースさん、あの」
「君は目を離すとすぐ何かに巻き込まれるから」

 まるで小さい子を連れる様にルースが太陽の手を引いて歩き出した。

 子供扱いされてる様で恥ずかしい。空も太陽の後からトコトコついてきた。

「君に紹介したい人がいるんだ。僕の伯父なんだけど、君が探してる奴のヒントになるかもしれない」
「本当ですか?」

 そういえば色々バタバタしてて、馬車で見た夢を話すのを忘れていた。その時に一緒に話してしまおう。

「あと君が昨日話してくれた違う所から来たって話。それも後でまとめて話してくれたら嬉しい」
「はい、わかりました」

 その後はお互い無言で歩く。

 子供扱いされるのが嫌で、少し早足でルースの隣に並んだ。

 ルースが少し驚いて太陽に目線を向けてきた。

 子供扱いしないで、という気持ちを込めて強い視線でルースを見上げる。

「っ」

 ルースが照れた様に顔を背けた。繋いだ手を離そうとしたので、今度は太陽からギュッと握る。

「俺危なっかしいんで、お願いします」
 
 昨日告白してルースに断られたけど、太陽も引く気はなかった。

 わざと指と指を広げて恋人繋ぎにする。こっそり見上げると、ほんのりルースの頬が赤くなっていた。

「…家に行く前にセーヤの鞄を買おうか」
「…はい」



◇◇◇



 連れて行かれたお店は沢山の鞄が並べられていた。

 好きなのを選んでと言われて太陽は店内を見て回る。空は店の入口でお留守番だ。

「ルースやっと帰って来たのか。寂しかったぜ」
「ただいま。よく言うよ。相手は沢山いるだろう?」
「相性の話さ、今夜泊まりに来いよ」

 ルースと店主の会話が聞こえて来た。目を離したら何かに巻き込まれてるのは、果たしてどっちか。

 太陽はルースの元へ行くと、一緒に選んで欲しいです、と話しかけた。

 太陽を見た店主が驚いた顔をする。

「こりゃ、ルースに負けない位のすごい美人だな!今夜どうだ?」
「…結構です」

 この世界に来てから出会う人間はみんな口説いてくる。もしかしてこれがコッチの挨拶なのかな?

「つれねえな。鞄探してんなら、コッチもオススメだぞ」

 店主が目の前のガラスケースを指差した。指輪に収納機能があり即座に出し入れ出来る便利な代物だそうだ。

「あ、これ綺麗…」

 太陽は1つの指輪に釘付けになった。透明度のある美しい黄緑の石がハマっていた。

 店主がケースから取り出して見せてくれた。光の加減でキラキラして見えた。

「でもこれは高いぞ!オススメはこの辺りだ」

 店主が指差した方を見るが、これといって心惹かれる物は無かった。

「それがいいの?」
「はい。この色が好きです」

 ルースの瞳の色。言わなくても伝わった様で、気のせいかルースの頬がほんのり赤くなっていた。

「これにするよ。お金と現物どっちがいい?」
「現物がいいな」

 ルースと店主は交渉して、ルースは材料になる質の良い宝石を数個店主へ手渡した。

 おまけで肩から斜め掛けできるバッグを貰った。
 そのまま指輪だけだと、指輪目当てで強盗に会う可能性があるから、鞄も持っていた方がいいとアドバイスされた。

 精算を終わらせて2人は外に出る。

「じゃあ、また来るよ」
「ありがとうございました」
「おお、こっちこそ良い宝石ありがとな。ルース今度は泊まってけよ!」

 店主の言葉にちょっとムッとして、太陽は再びルースの手を繋いだ。

 驚いてこちらを見たルースを見上げて、拗ねた様に言った。

「ルースさん、目を離すとすぐ何かに巻き込まれるから」
「……」

 ルースの言葉を引用したセリフにルースも観念した様に、僕の家はこっちだよ、と太陽の手を引いて歩き出した。
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