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第一章 銀狼は青に還りて
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ルースが鞄から次々と獲物を取り出した。
入れた瞬間に時間を止める亜空間のバッグらしい。初めて見た時は衝撃を受けたが、魔法もある世界だから、きっと何でもアリなんだろうと思う事にした。
ルースが血抜きして動物の身体にナイフを突き刺し処理していく。血の臭いとグロテスクな光景に、うぅと吐き気が襲って来た。
口を押さえて吐き気を抑えていると、ルースが心配そうに声をかけてきた。
「セーヤ大丈夫?気持ちが悪かったら今日は直接しなくてもいいよ。ただ今後の為に、手順だけは見てた方がいいと思うけど」
「うっぷ。今後?」
「眼帯の男を見つけて故郷に帰るんでしょ?もし遠い場所だったら長旅になるかもしれないじゃないか。そしたら食糧の確保は大変だよ」
「あ…」
そうだ。ルースとの旅は眼帯の男を見つけるまで。その後は元の世界に帰れるにしろ、帰れないにしろ、ルースと今みたいに一緒に居れる保証はない。
胸がキリッと痛んだ。
せめてルースといる今は彼の足手まといになりたくない。
吐き気を堪えてルースのやり方を見て手順を覚える。
ルースは太陽が困らない様に生きる術を教えようとしてくれている。ならば少しでもそれに応えたいと思った。
吐き気が少しマシになった所で、ルースに教わりながら一体を自分で捌く事にした。
目の前に鳥を1羽置いて手を合わせる。
それから、ナイフで肉を切り血を抜いた。効率の良い捌き方を教えてもらいながらナイフで肉を切断していく。手に生き物の肉を切断する感触が伝わってきて…少し怖かった。
「初めてにしては上手いね。後は僕がやろうか?」
「いえ、このままやらせて下さい」
その後も1つずつ手を合わせてから残りの獲物を解体していった。
最後の処理が終わった所で、ルースが浄化魔法を唱えた事で血の嫌な臭いと身体や服についた汚れが一瞬で消えた。
空気まで清浄された様で太陽はホッと安堵の息を吐いた。
「セーヤ。さっきのアレって何?ご飯を食べる前にもしてたよね」
ルースが太陽がした様に両手を合わせるポーズをした。
「あ、あれは!生き物の生命を頂く事に感謝というか、生命を無駄にしませんとか、とにかく、そういう気持ちを表してました!」
合掌の意味や生命を頂く事への感謝の念とか。同じ日本人なら言葉もなくその意味は伝わるだろう。
あえて聞かれる事で、仕草や考え方がここの常識じゃないんだと思い知らされる。
「生命を無駄にしない…」
「あ、あの変ですか?」
恐る恐る尋ねた太陽に、ルースはゆっくり首を振り顔を伏せながら言った。
「素晴らしいよ。そう全ての生命に意味がある。だからそれを摘み取る者も相応の理由と覚悟が必要だと僕も思う」
その声が僅かに震えている様な気がしたのに、ルースは、じゃあ片付けようか、とサッサと後片付けを始めた。
処理した肉を亜空間の収納バッグへ戻す。最後に血抜きの際に集めた動物の血が入った袋も収納した。
「血も何かに使うんですか?」
「そうだよ。生命は無駄にしない、だろ?」
茶化した様に言うルースに先程感じた泣きそうな気配はもう無かった。
◇◇◇
今日は早く帰るから、とルースは出かけて行った。
太陽は日課となった弓の練習だ。
的を狙って矢を射る。
昨日の獣との練習の成果か、射つスピードも正確さも格段に上がった気がする。
無心になって練習をしていると、例の音が聞こえた。
グルルル
獣が来たー。
入れた瞬間に時間を止める亜空間のバッグらしい。初めて見た時は衝撃を受けたが、魔法もある世界だから、きっと何でもアリなんだろうと思う事にした。
ルースが血抜きして動物の身体にナイフを突き刺し処理していく。血の臭いとグロテスクな光景に、うぅと吐き気が襲って来た。
口を押さえて吐き気を抑えていると、ルースが心配そうに声をかけてきた。
「セーヤ大丈夫?気持ちが悪かったら今日は直接しなくてもいいよ。ただ今後の為に、手順だけは見てた方がいいと思うけど」
「うっぷ。今後?」
「眼帯の男を見つけて故郷に帰るんでしょ?もし遠い場所だったら長旅になるかもしれないじゃないか。そしたら食糧の確保は大変だよ」
「あ…」
そうだ。ルースとの旅は眼帯の男を見つけるまで。その後は元の世界に帰れるにしろ、帰れないにしろ、ルースと今みたいに一緒に居れる保証はない。
胸がキリッと痛んだ。
せめてルースといる今は彼の足手まといになりたくない。
吐き気を堪えてルースのやり方を見て手順を覚える。
ルースは太陽が困らない様に生きる術を教えようとしてくれている。ならば少しでもそれに応えたいと思った。
吐き気が少しマシになった所で、ルースに教わりながら一体を自分で捌く事にした。
目の前に鳥を1羽置いて手を合わせる。
それから、ナイフで肉を切り血を抜いた。効率の良い捌き方を教えてもらいながらナイフで肉を切断していく。手に生き物の肉を切断する感触が伝わってきて…少し怖かった。
「初めてにしては上手いね。後は僕がやろうか?」
「いえ、このままやらせて下さい」
その後も1つずつ手を合わせてから残りの獲物を解体していった。
最後の処理が終わった所で、ルースが浄化魔法を唱えた事で血の嫌な臭いと身体や服についた汚れが一瞬で消えた。
空気まで清浄された様で太陽はホッと安堵の息を吐いた。
「セーヤ。さっきのアレって何?ご飯を食べる前にもしてたよね」
ルースが太陽がした様に両手を合わせるポーズをした。
「あ、あれは!生き物の生命を頂く事に感謝というか、生命を無駄にしませんとか、とにかく、そういう気持ちを表してました!」
合掌の意味や生命を頂く事への感謝の念とか。同じ日本人なら言葉もなくその意味は伝わるだろう。
あえて聞かれる事で、仕草や考え方がここの常識じゃないんだと思い知らされる。
「生命を無駄にしない…」
「あ、あの変ですか?」
恐る恐る尋ねた太陽に、ルースはゆっくり首を振り顔を伏せながら言った。
「素晴らしいよ。そう全ての生命に意味がある。だからそれを摘み取る者も相応の理由と覚悟が必要だと僕も思う」
その声が僅かに震えている様な気がしたのに、ルースは、じゃあ片付けようか、とサッサと後片付けを始めた。
処理した肉を亜空間の収納バッグへ戻す。最後に血抜きの際に集めた動物の血が入った袋も収納した。
「血も何かに使うんですか?」
「そうだよ。生命は無駄にしない、だろ?」
茶化した様に言うルースに先程感じた泣きそうな気配はもう無かった。
◇◇◇
今日は早く帰るから、とルースは出かけて行った。
太陽は日課となった弓の練習だ。
的を狙って矢を射る。
昨日の獣との練習の成果か、射つスピードも正確さも格段に上がった気がする。
無心になって練習をしていると、例の音が聞こえた。
グルルル
獣が来たー。
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