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第一章 銀狼は青に還りて
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太陽と一緒にいたくて攫ったなら帰してくれる筈もない。もしかしてココから出さないつもりなのか?
「やだ。俺を元のとこに戻せよ。探さないといけない奴がいるんだ」
「ソトハキケン」
「危険なのはお前だろ!もういい。勝手に帰るから」
立ち上がって出口の方へ向かう。幸い弓も握り締めて持っていたし。途中で何本か落ちたが、矢も数本は残っていた。
獣は止めなかった。
少し距離を空けて太陽の後をついてくる。
歩きながら周囲を観察すると、洞窟というには丁寧に作られている感じがした。まるで自然の洞穴を人間が使い勝手の良い様に作り替えた様な。
洞穴から外に出た太陽は絶望した。
そこは斜面というより、ほぼ崖の上と言った方が正しい。せりだした僅かな面積より下は、剥き出しの斜面。そして更にその下に木々が見えた。
森や遠くを全面に見渡せる絶景の場所だった。到底降りれる高さでも、斜面でもなかった。
ショックのあまりその場に座り込む。
小屋からは大分離れている。
きっとルースでもこんな場所探せる筈がない。そもそも彼には自分を探して助ける義務もない。
もう、ルースに会えない。胸が苦しくて涙が浮かんできた。
眼帯の男も探せない。元の世界にも帰れない。
でもそれよりも。
ルースに会えない。その事実が太陽の胸を締めつけた。いつの間にか、彼の事がこんなにも好きになっていた。
「うっ、うっ、ひっく」
こんな事なら昨日ルースに好きだと伝えれば良かった。怖いなんて言わずに最後まで抱いて貰えば良かった。
始めは面倒見の良い優しいお兄さん位にしか思えなかった。
でもあの湖でキスされて、この世界では男同士での恋愛は普通だと教えてもらって。
穏やかで面倒見の良い彼と、ずっとこんな風に暮らすのも悪くないな、と思ったらもう好きになってた。
「ルースさん、ルースさん、会いたいよぉ」
寂しくて悲しくて、涙が止まらなかった。眼帯の男が見つかったらお別れする可能性がある事は理解していた。でも、いきなりこんな風にお別れなんて。
ペロリと慰める様に獣が太陽の頬を舐めた。
「やめろよ、ひっく、お前なんか許さないからな。ひっく、俺をルースさんのとこに帰せよ」
「ルース、ダレ?」
「最初に俺がお前に襲われてた時に助けてくれた人だよ」
「ワカラナイ」
「俺を助けてくれた人なんだよ。優しくて綺麗な人で、好きだったのに…」
溢れてくる涙を獣がペロリと舐めた。やめろと言っても聞かないので、もう放っておいた。
風が冷たくなってきた。厚い雲の向こうは茜色に染まりつつある。標高が高い分、地上より気温が低い。
寒い。両手で身体を抱きしめると、獣が大きな身体で太陽を囲む様に寄り添って来た。風が当たらなくなり、獣の身体が毛皮みたいに太陽を包んだ。
「何だよ。こんな事しても許さないからな」
またペロッと獣が頬を舐められた。
許さない。ルースと引き離して、こんな所に閉じ込めて。許すつもりはないのに、獣の身体はとても温かくて。
昔飼っていた愛犬を思い出した。
昔まだ両親が生きていた頃。太陽が小さな頃から飼っていた大型犬。いつも何をするにも一緒で、ペットでもあり親友でもあった。でもそんな愛犬も太陽が中学に入る頃に病気で死んでしまった。
「何で、みんな、いなくなるんだよ。ひっく。父さんも、母さんも、ルースさんも、あいつも。ひっく。みんな、俺の大事な人達はいなくなる…」
また涙が出て来た。愛犬が死んだ時も両親が死んだ時も。涙が枯れる程泣いたのに。この胸の苦しみは癒される事はない。
それでも。今は寄り添ってくれる獣の温もりが気持ち良くて。太陽は知らない内に獣に包まれて眠りに落ちた。
ーーー
次話からR18要素入ります。閲覧注意です。
明日から月・木・土曜日更新に戻ります。
「やだ。俺を元のとこに戻せよ。探さないといけない奴がいるんだ」
「ソトハキケン」
「危険なのはお前だろ!もういい。勝手に帰るから」
立ち上がって出口の方へ向かう。幸い弓も握り締めて持っていたし。途中で何本か落ちたが、矢も数本は残っていた。
獣は止めなかった。
少し距離を空けて太陽の後をついてくる。
歩きながら周囲を観察すると、洞窟というには丁寧に作られている感じがした。まるで自然の洞穴を人間が使い勝手の良い様に作り替えた様な。
洞穴から外に出た太陽は絶望した。
そこは斜面というより、ほぼ崖の上と言った方が正しい。せりだした僅かな面積より下は、剥き出しの斜面。そして更にその下に木々が見えた。
森や遠くを全面に見渡せる絶景の場所だった。到底降りれる高さでも、斜面でもなかった。
ショックのあまりその場に座り込む。
小屋からは大分離れている。
きっとルースでもこんな場所探せる筈がない。そもそも彼には自分を探して助ける義務もない。
もう、ルースに会えない。胸が苦しくて涙が浮かんできた。
眼帯の男も探せない。元の世界にも帰れない。
でもそれよりも。
ルースに会えない。その事実が太陽の胸を締めつけた。いつの間にか、彼の事がこんなにも好きになっていた。
「うっ、うっ、ひっく」
こんな事なら昨日ルースに好きだと伝えれば良かった。怖いなんて言わずに最後まで抱いて貰えば良かった。
始めは面倒見の良い優しいお兄さん位にしか思えなかった。
でもあの湖でキスされて、この世界では男同士での恋愛は普通だと教えてもらって。
穏やかで面倒見の良い彼と、ずっとこんな風に暮らすのも悪くないな、と思ったらもう好きになってた。
「ルースさん、ルースさん、会いたいよぉ」
寂しくて悲しくて、涙が止まらなかった。眼帯の男が見つかったらお別れする可能性がある事は理解していた。でも、いきなりこんな風にお別れなんて。
ペロリと慰める様に獣が太陽の頬を舐めた。
「やめろよ、ひっく、お前なんか許さないからな。ひっく、俺をルースさんのとこに帰せよ」
「ルース、ダレ?」
「最初に俺がお前に襲われてた時に助けてくれた人だよ」
「ワカラナイ」
「俺を助けてくれた人なんだよ。優しくて綺麗な人で、好きだったのに…」
溢れてくる涙を獣がペロリと舐めた。やめろと言っても聞かないので、もう放っておいた。
風が冷たくなってきた。厚い雲の向こうは茜色に染まりつつある。標高が高い分、地上より気温が低い。
寒い。両手で身体を抱きしめると、獣が大きな身体で太陽を囲む様に寄り添って来た。風が当たらなくなり、獣の身体が毛皮みたいに太陽を包んだ。
「何だよ。こんな事しても許さないからな」
またペロッと獣が頬を舐められた。
許さない。ルースと引き離して、こんな所に閉じ込めて。許すつもりはないのに、獣の身体はとても温かくて。
昔飼っていた愛犬を思い出した。
昔まだ両親が生きていた頃。太陽が小さな頃から飼っていた大型犬。いつも何をするにも一緒で、ペットでもあり親友でもあった。でもそんな愛犬も太陽が中学に入る頃に病気で死んでしまった。
「何で、みんな、いなくなるんだよ。ひっく。父さんも、母さんも、ルースさんも、あいつも。ひっく。みんな、俺の大事な人達はいなくなる…」
また涙が出て来た。愛犬が死んだ時も両親が死んだ時も。涙が枯れる程泣いたのに。この胸の苦しみは癒される事はない。
それでも。今は寄り添ってくれる獣の温もりが気持ち良くて。太陽は知らない内に獣に包まれて眠りに落ちた。
ーーー
次話からR18要素入ります。閲覧注意です。
明日から月・木・土曜日更新に戻ります。
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