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第二章 闇に囚われし緑よ、いずれ
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馬車というより後ろを布で覆った荷馬車だった。御者席に御者のマノスと護衛のラドが同乗した。太陽とルースと空は後ろの荷台だ。
村の人達が見送ってくれる中、馬車は走り出した。
遠ざかって行く村を見て太陽は感動した。
村を取り囲む多くの野菜畑。その土がキラキラと緑と黄色に美しく光っていたからだ。
美しい光が畑と村をまるで守っている様に輝いていた。来た時は元気の無かった野菜畑も心なしか元気になってる様に見える。
心当たりがあるとしたら村人達と一緒に撒いたルースの肥料。ルースが格安で売ってくれる肥料はとても良く効くとみんな喜んでいた。
「あれは緑の者の聖気だ」
太陽の疑問に答える様に空の声がした。
聖気。
それを見るのは2回目だ。空が放った青と銀の光の風を思い出す。
「オレの聖気は東の山や森と動物を守る。緑の者の聖気は植物や大地を守る。あれは緑を育みながら村を守る結界だ」
思わず隣りのルースを見上げた。
一緒に遠ざかる村を見ていたルースが太陽の視線に気づいて、どうしたの?と微笑んだ。
ルースはほとんどただ同然で肥料を譲っていると聞いた。
それは土や食物を育みこの村を守る為。その意図がわかり、やっぱり優しい人だと思った。
そして少しの不安。
貴方は何者なんですか?
「セーヤ?」
無言の太陽にルースが不思議そうな顔をしている。
初めて会った時とは違う茶髪と茶色い瞳。本来の彼の纏う色は緑だ。
店主から聞いた話を思い出した。南の森を守る森の民。もしかしてルースは。
貴方は人間じゃないんですか?
「ルースさん。俺話したい事があります」
「何だい?」
「俺嘘ついてました。記憶が無いっていうのは嘘です。全部覚えてます」
本当はもっと落ち着いた場所で話すつもりだった。
でも、もっとこの人の事を知りたい、そう思ったら自然と口に出していた。
ルースに自分の事も知って欲しいと思ったから。
ルースは風に靡く髪を抑えながら、黙って太陽の話に耳を傾けている。
「俺、この世界の人間じゃないんです。だから本当の事を言ったら距離を置かれそうで怖くて言えませんでした。ごめんなさい」
太陽が頭を下げた。
「そう。大変だったね」
ルースの意外な一言に、太陽がパッと顔を上げる。
「信じてくれるんですか?」
「君が僕にそんな嘘つく必要ないでしょ?信じるよ」
「ルースさん」
こんなにアッサリ信じてくれるなんて。こんな事ならもっと早く言えば良かった、と拍子抜けした。
「詳しい話はまた後にしよう。ヤツらが来た」
ルースが弓を手に取った。
寝そべっていた空も立ち上がり、外を見て唸っている。
馬車は既に村から遠く離れ、所々緑が禿げた道を走っている。
馬車の後方遠くに、追いかけてくる獣の群れを発見した。
澱んだ目をした魔獣。それが集団で馬車を追いかけて来ていた。
「ちょうどいい。弓の練習をしようか」
手本を見せるから見てて。
そう言ってルースは己の弓で矢を放った。
まるで吸い込まれる様に矢が魔獣に当たり一頭が倒れた。後方の魔獣が巻き込まれて一気に数頭が見えなくなった。
「すごい!」
「ただ当てるだけじゃなく、どこに当てると効率的かを考えて討つんだ」
ルースにアドバイスを受け太陽も矢を放った。
惜しくも飛距離が伸びず魔獣の手前で落ちる。
もっと弓を引いて、とルースが太陽の背中側から一緒に弓を引いてくれた。
背中にルースの体温を感じる。
魔獣に追われているこんな状況なのに、不思議と怖くなかった。
ルースと共に矢を放つ。
一頭に当たり、後方の魔獣を巻き込んで見えなくなった。
「出来た!」
嬉しくてルースを振り向いた。
ルースが太陽の頭を優しく撫でてくれた。
「さすがセーヤ。飲み込みが早いね」
『さすが姫様。飲み込みが早いですね』
「!?」
「どうしたの?」
「い、今…」
ルースの姿と声に重なる様に誰かの面影を見た気がした。
こんな風に飲み込みが早いと褒めてくれた。でも…それが誰だか思い出せない。
「ちまちま倒してたらラチがあかん。オレがセーヤに力を貸すからもう一度やってみろ」
空が太陽の近くに来て毛を逆立てる。よく見ると空の周りに青と銀の光が生じていた。
「よし。じゃあ今度は1人で弓を引いてみようか」
ルースに言われ矢を番う。
先程と違ってどうするべきか不思議とやり方がわかっていた。
『どこが効率的かよく考えるのです』
はい師匠。
狙うは魔獣の集団戦闘の中央。
『姿勢を伸ばしギリギリまで弓を引きなさい』
背筋を伸ばす。
まるで何年も扱ってるかの様にコツがわかった。限界まで弓の弦を引く。
『獲物から視線を離してはいけません』
馬車が揺れる。
それでも狙った獲物から視線は外さない。
『最後は自分を信じて放て!』
太陽は矢を放った。
同時に空から青と銀に光る粒を纏った風が放たれた。
太陽の放った矢に追いつき矢の周りが風で渦巻くのが見えた。
矢は狙い通り魔獣の先頭中央に当たり、ドーンと爆破した様に魔獣達が吹き飛んだ。
若干こちら側にも荒れた強い風が吹いて来た。
「わっ!何?」
「面倒だから全部吹き飛ばした」
「はは、ソラは豪快だねー」
風に押されて馬車の速度が上がった。前方でマノスが「わー!何なの!?」と騒いでるのが聞こえた。
魔獣達の群れは先程の太陽の放った矢で全部吹き飛んでいた。
村の人達が見送ってくれる中、馬車は走り出した。
遠ざかって行く村を見て太陽は感動した。
村を取り囲む多くの野菜畑。その土がキラキラと緑と黄色に美しく光っていたからだ。
美しい光が畑と村をまるで守っている様に輝いていた。来た時は元気の無かった野菜畑も心なしか元気になってる様に見える。
心当たりがあるとしたら村人達と一緒に撒いたルースの肥料。ルースが格安で売ってくれる肥料はとても良く効くとみんな喜んでいた。
「あれは緑の者の聖気だ」
太陽の疑問に答える様に空の声がした。
聖気。
それを見るのは2回目だ。空が放った青と銀の光の風を思い出す。
「オレの聖気は東の山や森と動物を守る。緑の者の聖気は植物や大地を守る。あれは緑を育みながら村を守る結界だ」
思わず隣りのルースを見上げた。
一緒に遠ざかる村を見ていたルースが太陽の視線に気づいて、どうしたの?と微笑んだ。
ルースはほとんどただ同然で肥料を譲っていると聞いた。
それは土や食物を育みこの村を守る為。その意図がわかり、やっぱり優しい人だと思った。
そして少しの不安。
貴方は何者なんですか?
「セーヤ?」
無言の太陽にルースが不思議そうな顔をしている。
初めて会った時とは違う茶髪と茶色い瞳。本来の彼の纏う色は緑だ。
店主から聞いた話を思い出した。南の森を守る森の民。もしかしてルースは。
貴方は人間じゃないんですか?
「ルースさん。俺話したい事があります」
「何だい?」
「俺嘘ついてました。記憶が無いっていうのは嘘です。全部覚えてます」
本当はもっと落ち着いた場所で話すつもりだった。
でも、もっとこの人の事を知りたい、そう思ったら自然と口に出していた。
ルースに自分の事も知って欲しいと思ったから。
ルースは風に靡く髪を抑えながら、黙って太陽の話に耳を傾けている。
「俺、この世界の人間じゃないんです。だから本当の事を言ったら距離を置かれそうで怖くて言えませんでした。ごめんなさい」
太陽が頭を下げた。
「そう。大変だったね」
ルースの意外な一言に、太陽がパッと顔を上げる。
「信じてくれるんですか?」
「君が僕にそんな嘘つく必要ないでしょ?信じるよ」
「ルースさん」
こんなにアッサリ信じてくれるなんて。こんな事ならもっと早く言えば良かった、と拍子抜けした。
「詳しい話はまた後にしよう。ヤツらが来た」
ルースが弓を手に取った。
寝そべっていた空も立ち上がり、外を見て唸っている。
馬車は既に村から遠く離れ、所々緑が禿げた道を走っている。
馬車の後方遠くに、追いかけてくる獣の群れを発見した。
澱んだ目をした魔獣。それが集団で馬車を追いかけて来ていた。
「ちょうどいい。弓の練習をしようか」
手本を見せるから見てて。
そう言ってルースは己の弓で矢を放った。
まるで吸い込まれる様に矢が魔獣に当たり一頭が倒れた。後方の魔獣が巻き込まれて一気に数頭が見えなくなった。
「すごい!」
「ただ当てるだけじゃなく、どこに当てると効率的かを考えて討つんだ」
ルースにアドバイスを受け太陽も矢を放った。
惜しくも飛距離が伸びず魔獣の手前で落ちる。
もっと弓を引いて、とルースが太陽の背中側から一緒に弓を引いてくれた。
背中にルースの体温を感じる。
魔獣に追われているこんな状況なのに、不思議と怖くなかった。
ルースと共に矢を放つ。
一頭に当たり、後方の魔獣を巻き込んで見えなくなった。
「出来た!」
嬉しくてルースを振り向いた。
ルースが太陽の頭を優しく撫でてくれた。
「さすがセーヤ。飲み込みが早いね」
『さすが姫様。飲み込みが早いですね』
「!?」
「どうしたの?」
「い、今…」
ルースの姿と声に重なる様に誰かの面影を見た気がした。
こんな風に飲み込みが早いと褒めてくれた。でも…それが誰だか思い出せない。
「ちまちま倒してたらラチがあかん。オレがセーヤに力を貸すからもう一度やってみろ」
空が太陽の近くに来て毛を逆立てる。よく見ると空の周りに青と銀の光が生じていた。
「よし。じゃあ今度は1人で弓を引いてみようか」
ルースに言われ矢を番う。
先程と違ってどうするべきか不思議とやり方がわかっていた。
『どこが効率的かよく考えるのです』
はい師匠。
狙うは魔獣の集団戦闘の中央。
『姿勢を伸ばしギリギリまで弓を引きなさい』
背筋を伸ばす。
まるで何年も扱ってるかの様にコツがわかった。限界まで弓の弦を引く。
『獲物から視線を離してはいけません』
馬車が揺れる。
それでも狙った獲物から視線は外さない。
『最後は自分を信じて放て!』
太陽は矢を放った。
同時に空から青と銀に光る粒を纏った風が放たれた。
太陽の放った矢に追いつき矢の周りが風で渦巻くのが見えた。
矢は狙い通り魔獣の先頭中央に当たり、ドーンと爆破した様に魔獣達が吹き飛んだ。
若干こちら側にも荒れた強い風が吹いて来た。
「わっ!何?」
「面倒だから全部吹き飛ばした」
「はは、ソラは豪快だねー」
風に押されて馬車の速度が上がった。前方でマノスが「わー!何なの!?」と騒いでるのが聞こえた。
魔獣達の群れは先程の太陽の放った矢で全部吹き飛んでいた。
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