47 / 181
第二章 闇に囚われし緑よ、いずれ
13
しおりを挟む
住宅街を歩いて行くと小さな家にたどり着いた。白くオシャレな造りの一階建の家だった。
ルースがドアを開け、どうぞと太陽と空を中に入れてくれた。
部屋の中はシンプルで、ソファやテーブル等、最低限の家具しかなかった。
そこに座ってて、と言われてソファに腰を下ろす。空も太陽の隣に座って甘える様にグリグリ頭を擦り付けて来た。
「鞄の中身を移すまで、ゆっくりしてていいよ」
ルースが鞄から中身を取り出して、太陽の荷物を移していく。
暫く空の頭を撫でて眺めていたが、手持ち無沙汰で太陽は立ち上がった。
「ルースさん、良ければ俺お茶でも淹れます」
「ありがとう。キッチンはそっちだよ」
キッチンには一通り道具が揃っていたが、あまり使われた様子が無かった。生活感が無いキッチンだった。
そこに子犬の空がトコトコやって来た。
「セーヤよ。確認しておきたい事がある。お前はルースの顔が好きなのか?」
は?顔?急な質問に一瞬キョトンとする。
言われて自問自答してみる。顔も勿論好きだけど、1番のキッカケは東の森の小屋で一緒に生活した事だ。ルースとこれからもあんな風に過ごしたいと思ったのだ。
「そうか。なら良い」
空は興味が失せた様に、ふいと居間に戻って行った。
今の質問は何だったんだ?
不思議に思いながらも、とりあえず太陽は3人分のお茶の準備に取りかかった。
3人分のお茶を準備して戻ると、ルースは相変わらずソファに座って鞄の整理をしていて、空は反対のソファで丸まっていた。
その光景を見て、こういうの何かいいな、と気持ちがホッコリする。こんな時間がずっと続けばいいのにー。
3人分のお茶を置いて太陽はソファに座った。そのまま横で寝てる空を撫でた。太陽に撫でられて、空は気持ち良さそうだ。
「セーヤ出来たよ。はい。もう荷物は移したからね」
ルースが鞄と指輪を渡してくれたが、受け取るのを躊躇ってしまう。
「どうしたの?」
「ルースさんの伯父さんに会ったらもうお別れですか?」
「え?」
「前にいつまで一緒にいれるか分からないからって」
「あれは…」
いつまで一緒にいれるかわからないから鞄を。確かルースはそう言った。
ルースもそれを思い出して、フッと笑った。
「これはそんなつもりじゃないよ」
「本当に?」
「少なくとも、君が眼帯の男に会えて無事帰れるまでは側にいるよ。それまでは一緒に旅をしよう」
ルースは立ち上がり太陽の側に行くと、鞄を太陽にかけて、黄緑に煌めく指輪を渡してくれた。
「ルースさん」
太陽の声には答えず、ルースは向かいのソファに戻って、これを飲んだら出発しようと言った。
前のルースなら、不安になっている太陽を抱きしめてキスの1つもしてくれたと思う。今は必要以上に触れてくれない。
「わかりました」
寂しさを押し殺して、太陽は紅茶に口をつけた。
◇◇◇
「そろそろ向かうね」
お茶を飲んで気持ちが落ち着いた頃、ルースが立ち上がった。
白い壁に向かって歩いて立ち止まった。
壁には緑色の美しい模様が描かれている。花の様にも葉や蔦の様にも見えるデザインだった。
そこにルースが手を置くと、手の平から緑色の光が水の様に流れて全体を光らせていった。
その後、カッ!と一瞬強く光ってゆっくり消えた。
「何が…」
何が起きたか分からずルースを見ると、その容姿が変わっていた。
先ほど迄の明るい茶色の髪や瞳は、彼本来の緑色に戻っていた。
そして目についたのは耳だった。
今までと違って上に尖った形をしていた。服装もこれまでの簡素な服から、シースルーの素材を幾重にも重ねた質の良さそうな服になっていた。
「ルースさん見た目が…」
「ここではまやかしの術は全て無効化されるんだ。南の大陸の聖地だからね。ソラも戻ってるよ」
言われて横を見ると、空は獣耳と尻尾のついた人の姿に変わっていた。つまらなさそうに尻尾を軽くふっている。
「ルースさん、貴方は…」
それには答えずルースは玄関に向かった。そしてドアを開けながら振り向いた。
「セーヤ、ソラ。ようこそエルフの里へ。歓迎するよ」
ルースがドアを開け、どうぞと太陽と空を中に入れてくれた。
部屋の中はシンプルで、ソファやテーブル等、最低限の家具しかなかった。
そこに座ってて、と言われてソファに腰を下ろす。空も太陽の隣に座って甘える様にグリグリ頭を擦り付けて来た。
「鞄の中身を移すまで、ゆっくりしてていいよ」
ルースが鞄から中身を取り出して、太陽の荷物を移していく。
暫く空の頭を撫でて眺めていたが、手持ち無沙汰で太陽は立ち上がった。
「ルースさん、良ければ俺お茶でも淹れます」
「ありがとう。キッチンはそっちだよ」
キッチンには一通り道具が揃っていたが、あまり使われた様子が無かった。生活感が無いキッチンだった。
そこに子犬の空がトコトコやって来た。
「セーヤよ。確認しておきたい事がある。お前はルースの顔が好きなのか?」
は?顔?急な質問に一瞬キョトンとする。
言われて自問自答してみる。顔も勿論好きだけど、1番のキッカケは東の森の小屋で一緒に生活した事だ。ルースとこれからもあんな風に過ごしたいと思ったのだ。
「そうか。なら良い」
空は興味が失せた様に、ふいと居間に戻って行った。
今の質問は何だったんだ?
不思議に思いながらも、とりあえず太陽は3人分のお茶の準備に取りかかった。
3人分のお茶を準備して戻ると、ルースは相変わらずソファに座って鞄の整理をしていて、空は反対のソファで丸まっていた。
その光景を見て、こういうの何かいいな、と気持ちがホッコリする。こんな時間がずっと続けばいいのにー。
3人分のお茶を置いて太陽はソファに座った。そのまま横で寝てる空を撫でた。太陽に撫でられて、空は気持ち良さそうだ。
「セーヤ出来たよ。はい。もう荷物は移したからね」
ルースが鞄と指輪を渡してくれたが、受け取るのを躊躇ってしまう。
「どうしたの?」
「ルースさんの伯父さんに会ったらもうお別れですか?」
「え?」
「前にいつまで一緒にいれるか分からないからって」
「あれは…」
いつまで一緒にいれるかわからないから鞄を。確かルースはそう言った。
ルースもそれを思い出して、フッと笑った。
「これはそんなつもりじゃないよ」
「本当に?」
「少なくとも、君が眼帯の男に会えて無事帰れるまでは側にいるよ。それまでは一緒に旅をしよう」
ルースは立ち上がり太陽の側に行くと、鞄を太陽にかけて、黄緑に煌めく指輪を渡してくれた。
「ルースさん」
太陽の声には答えず、ルースは向かいのソファに戻って、これを飲んだら出発しようと言った。
前のルースなら、不安になっている太陽を抱きしめてキスの1つもしてくれたと思う。今は必要以上に触れてくれない。
「わかりました」
寂しさを押し殺して、太陽は紅茶に口をつけた。
◇◇◇
「そろそろ向かうね」
お茶を飲んで気持ちが落ち着いた頃、ルースが立ち上がった。
白い壁に向かって歩いて立ち止まった。
壁には緑色の美しい模様が描かれている。花の様にも葉や蔦の様にも見えるデザインだった。
そこにルースが手を置くと、手の平から緑色の光が水の様に流れて全体を光らせていった。
その後、カッ!と一瞬強く光ってゆっくり消えた。
「何が…」
何が起きたか分からずルースを見ると、その容姿が変わっていた。
先ほど迄の明るい茶色の髪や瞳は、彼本来の緑色に戻っていた。
そして目についたのは耳だった。
今までと違って上に尖った形をしていた。服装もこれまでの簡素な服から、シースルーの素材を幾重にも重ねた質の良さそうな服になっていた。
「ルースさん見た目が…」
「ここではまやかしの術は全て無効化されるんだ。南の大陸の聖地だからね。ソラも戻ってるよ」
言われて横を見ると、空は獣耳と尻尾のついた人の姿に変わっていた。つまらなさそうに尻尾を軽くふっている。
「ルースさん、貴方は…」
それには答えずルースは玄関に向かった。そしてドアを開けながら振り向いた。
「セーヤ、ソラ。ようこそエルフの里へ。歓迎するよ」
24
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました
ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。
タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。
異世界に転生したら竜騎士たちに愛されました
あいえだ
BL
俺は病気で逝ってから生まれ変わったらしい。ど田舎に生まれ、みんな俺のことを伝説の竜騎士って呼ぶんだけど…なんだそれ?俺は生まれたときから何故か一緒にいるドラゴンと、この大自然でゆるゆる暮らしたいのにみんな王宮に行けって言う…。王宮では竜騎士イケメン二人に愛されて…。
完結済みです。
7回BL大賞エントリーします。
表紙、本文中のイラストは自作。キャライラストなどはTwitterに順次上げてます(@aieda_kei)
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(2024.10.21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
塔の魔術師と騎士の献身
倉くらの
BL
かつて勇者の一行として魔王討伐を果たした魔術師のエーティアは、その時の後遺症で魔力欠乏症に陥っていた。
そこへ世話人兼護衛役として派遣されてきたのは、国の第三王子であり騎士でもあるフレンという男だった。
男の説明では性交による魔力供給が必要なのだという。
それを聞いたエーティアは怒り、最後の魔力を使って攻撃するがすでに魔力のほとんどを消失していたためフレンにダメージを与えることはできなかった。
悔しさと息苦しさから涙して「こんなみじめな姿で生きていたくない」と思うエーティアだったが、「あなたを助けたい」とフレンによってやさしく抱き寄せられる。
献身的に尽くす元騎士と、能力の高さ故にチヤホヤされて生きてきたため無自覚でやや高慢気味の魔術師の話。
愛するあまりいつも抱っこしていたい攻め&体がしんどくて楽だから抱っこされて運ばれたい受け。
一人称。
完結しました!
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる