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第三章 空を舞う赤、狂いて
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ーーー
「仲直りは出来たか?」
太陽が空の元へ戻ると、ちょうど空は食事中だった。干し肉を噛みちぎりながら悪男の様子を見てくれていた。
「…何か誤解されて、話を聞いてもらえなかった」
ズーンと落ち込みながら、太陽はルースとのやりとりを話した。何故、悪男とキスした事になってるのかもわからない。
肉を噛み噛みしながら、空がふむ、と思案する。
「多分あれだな。鳥が何か呟いた時に顔を寄せただろう。ルースは距離があったからな。口づけてる様に見えたかもしれんな」
「…あ」
「しかもその前にルースの手を振り払って、他の男に泣いて縋った訳だしな」
「う…」
「どちらにしても、今はソッとしといてやれ。やっとお前が見つかったんだ。今頃仮眠でもしてる事だろう」
食べ切ってペロリと空は指を舐めた。ふわ、と欠伸して獣に変わる。
「ルースさん、ボロボロだったんだ。傷もあったし、顔色も悪かったし。もしかして全然休んでないの?」
丸くなって目を閉じていた空が、片目でチラッと太陽を見る。
「オレの主は想像力が乏しいな。逆に何でそう考えれるかが不思議だ」
空の言い草に太陽がムッとする。そんな太陽の反応に、空はフンッと鼻を鳴らした。
「想像してみろ。数百年悪夢で安らかに寝れなかった男が、やっと呪いが解けて安眠した日に、今度は恋人を攫われたんだぞ」
空の言葉にハッとさせられる。
「足取りを追ってみたら、自分の親兄弟を殺した奴らに連れて行かれたとわかってみろ。それで休めたと思うか?」
返す言葉が見つからず太陽はその場に座り込んだ。情けなさすぎて、空を見れなかった。自分の言動が浅はかだったと気づいたからだ。
忘れていた訳じゃない。ちゃんとルースの状況もわかってた筈なのに。
だけどあの時、太陽は悪男が追い詰められたと思って、悪男を庇ってしまった。
逆だったんだ。
本当に追い詰められていたのはルース。太陽があの時すべきだったのは、悪男にルースや空と話をさせて欲しい、そう頼むべきだった。
後悔が押し寄せる。
そしたらルースや空を傷つける事も、悪男が死にかける事も無かったかもしれない。
ぼんやりと、藁の中の悪男を見つめる。固く目は閉ざされてるが、胸の上下で息をしているのがわかった。
きっと悪男はもう大丈夫。
大丈夫じゃないのはー。
太陽は立ち上がると、空の側に座ってギュッと空を抱きしめた。
「空。こんな頼りない家族でごめんな。向かえに来てくれて、ありがとう」
「…当然だ。ずっと側にいると約束しただろう」
「うん。また一緒にいれて嬉しい」
空の体温の温かさにホッとして、ジワリと目に涙が浮かんだ。当たり前の様に自分を受け入れてくれる存在がどんなに嬉しいか。そこに自分の居場所が有る事にどれだけ救われるか。
「空…俺もう一度ルースさんとこ行ってくる」
「また話を聞いてもらえんかもしれんぞ」
「それでもいい。聞いて貰えるまで頑張るよ。俺も空みたいになりたいんだ。ルースさんにとって、一緒に居るのが当たり前で、側にいて安心出来る、そんな存在になりたいんだ」
フンッと空が鼻を鳴らした後、耳をピクピクさせて、ルースは反対側の左奥で休んでる、と教えてくれた。
「ありがとう。行ってくる」
「…何があっても側に居てやるから。思いのままぶつかって来い」
「うん、行ってきます」
最後にもう一度ギュッと空を抱きしめて、太陽は立ち上がった。
ーーー
「仲直りは出来たか?」
太陽が空の元へ戻ると、ちょうど空は食事中だった。干し肉を噛みちぎりながら悪男の様子を見てくれていた。
「…何か誤解されて、話を聞いてもらえなかった」
ズーンと落ち込みながら、太陽はルースとのやりとりを話した。何故、悪男とキスした事になってるのかもわからない。
肉を噛み噛みしながら、空がふむ、と思案する。
「多分あれだな。鳥が何か呟いた時に顔を寄せただろう。ルースは距離があったからな。口づけてる様に見えたかもしれんな」
「…あ」
「しかもその前にルースの手を振り払って、他の男に泣いて縋った訳だしな」
「う…」
「どちらにしても、今はソッとしといてやれ。やっとお前が見つかったんだ。今頃仮眠でもしてる事だろう」
食べ切ってペロリと空は指を舐めた。ふわ、と欠伸して獣に変わる。
「ルースさん、ボロボロだったんだ。傷もあったし、顔色も悪かったし。もしかして全然休んでないの?」
丸くなって目を閉じていた空が、片目でチラッと太陽を見る。
「オレの主は想像力が乏しいな。逆に何でそう考えれるかが不思議だ」
空の言い草に太陽がムッとする。そんな太陽の反応に、空はフンッと鼻を鳴らした。
「想像してみろ。数百年悪夢で安らかに寝れなかった男が、やっと呪いが解けて安眠した日に、今度は恋人を攫われたんだぞ」
空の言葉にハッとさせられる。
「足取りを追ってみたら、自分の親兄弟を殺した奴らに連れて行かれたとわかってみろ。それで休めたと思うか?」
返す言葉が見つからず太陽はその場に座り込んだ。情けなさすぎて、空を見れなかった。自分の言動が浅はかだったと気づいたからだ。
忘れていた訳じゃない。ちゃんとルースの状況もわかってた筈なのに。
だけどあの時、太陽は悪男が追い詰められたと思って、悪男を庇ってしまった。
逆だったんだ。
本当に追い詰められていたのはルース。太陽があの時すべきだったのは、悪男にルースや空と話をさせて欲しい、そう頼むべきだった。
後悔が押し寄せる。
そしたらルースや空を傷つける事も、悪男が死にかける事も無かったかもしれない。
ぼんやりと、藁の中の悪男を見つめる。固く目は閉ざされてるが、胸の上下で息をしているのがわかった。
きっと悪男はもう大丈夫。
大丈夫じゃないのはー。
太陽は立ち上がると、空の側に座ってギュッと空を抱きしめた。
「空。こんな頼りない家族でごめんな。向かえに来てくれて、ありがとう」
「…当然だ。ずっと側にいると約束しただろう」
「うん。また一緒にいれて嬉しい」
空の体温の温かさにホッとして、ジワリと目に涙が浮かんだ。当たり前の様に自分を受け入れてくれる存在がどんなに嬉しいか。そこに自分の居場所が有る事にどれだけ救われるか。
「空…俺もう一度ルースさんとこ行ってくる」
「また話を聞いてもらえんかもしれんぞ」
「それでもいい。聞いて貰えるまで頑張るよ。俺も空みたいになりたいんだ。ルースさんにとって、一緒に居るのが当たり前で、側にいて安心出来る、そんな存在になりたいんだ」
フンッと空が鼻を鳴らした後、耳をピクピクさせて、ルースは反対側の左奥で休んでる、と教えてくれた。
「ありがとう。行ってくる」
「…何があっても側に居てやるから。思いのままぶつかって来い」
「うん、行ってきます」
最後にもう一度ギュッと空を抱きしめて、太陽は立ち上がった。
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