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第四章 誰がために、その金は甦るのか
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「さあ!さあ!今日は久しぶりに家族が集まった祝いだよ!宴だよ!大いに飲みな!」
西の長の掛け声と共に宴は始まった。
西の館は、中も外も多くの鳥族で溢れていた。
彼らは一族を総じて「家族」と呼んだ。
他の種族の様に長をきちんと敬っているものの、どちらかといえば「家長」というより「姉御」というイメージだ。
そんな彼らは目覚めてすぐ、宴をすると決めてから一切に狩りを初めた。一体どこにこんなに食べ物があったのかと不思議になる程、宴は食べ物や飲み物に溢れていた。
長の張った結界により、それまで口に出来ない状態だった獲物や数少ない植物達も食べれる様になったらしい。
太陽やルースが持っていた大量の食材も提供した。それはもう大層喜ばれ、今では恩人扱いから大家族の一員に昇格した。
そろそろ日も暮れるので辺りは薄暗い。なのに鳥族は鳥目だからという理由で、やたら大量の光る石があちらこちらに飾られ、まるで昼間の様に明るかった。
そして鳥族の館の不思議な構造の理由が判明した。
館内の出入口がやけに大きい、そして窓がただの大きな長四角の穴だった理由は、彼らの行動を見れば納得だった。
歩くより早いという理由で、屋内だろうが普通に飛ぶし、玄関らしき物を無視して普通に窓から飛んで出入りしていた。
「赤の者は豪快な種族だね」
そう評したルースの言葉に太陽も納得だ。
「そうだな。それに強引で人の話を聞かん」
それは空もだろ!太陽は心の中でツッコンだ。
「でも気持ち良い種族だ。裏表が無い分、好感が持てる」
その言葉には同意だ。
長含め、鳥族のみんなは多少豪快で強引だが、気のいい人達だった。
「セーヤ!飲んでるかい?」
呼ばれて顔を上げると、酒瓶らしき物を持った鳥族の長。悪男の姉だった。
「はい。何か甘い飲み物もらってます。美味しいですね、コレ」
「あぁ、砂漠にいる虫の体液だね」
「ぶほぉっ!」
虫と聞いて思わず噴いた。
北まで追いかけた気持ち悪い虫を思い出す。
まさか、あれじゃ無いよな……?
「何してんだい」
長が呆れた様に笑った。
そのまま太陽にしなだれる様に寄りかかって来る。
豊満な胸が腕に当たった。
「お、長、ちょっと近いデス」
「ん~?この位で緊張してるのかい?」
長は見た目が20代半ばの綺麗な女性だった。服装も胸元が大きくカッティングされていて、セクシーだ。
要は角度に関係なく、胸の谷間が見えるわけで…。
「ねぇセーヤ。2人きりになれるとこに行かないかい?」
「ぐっ…」
今度は食べ物が詰まった。
そんなセーヤの耳元で長が囁く。
「…ワルオリに聞いたよ。アンタの色」
「……!」
「…代々、西の長にだけ伝えられている魔王の秘密がある」
ごく、と喉がなった。それは今きっと、太陽が1番欲しい情報かもしれない。
「…2人きりになれる場所に行くかい?」
「…はい」
「ふふ、赤くなって可愛いねぇ。こっちさ。ついておいで」
長に続いて立ち上がる。
チラリと横の空を見ると、その聴覚で話を聞いていたのか無言で頷いた。
一方ルースは。
「私エルフって初めて会ったわ!噂通り美形ね!」
「もっと食べてくれよ!俺がとってきた獲物なんだ!」
相変わらずモテモテで、多くの人に囲まれてルースの姿は見えなかった。
俺のルースさんなのに…。ちょっと妬けてしまう。でも。太陽の腕には、ルースから贈られた腕輪があった。
いつか2人一緒になろうという約束の証。だから、もう嫉妬はしない…というのは嘘で、嫉妬はする。
ただ前ほど心配になったりはしない。
空に軽く合図して、太陽は長に続いて部屋を出た。
◇◇◇
てっきり2人だけになれる部屋に行くと思ったのに。
まさか連れて行かれたのは深夜の空中デート(?)だった。
「アタイ以外の鳥族は夜は飛べない!だから秘密の話にはピッタリなのさ!」
そう話す長は、片手を太陽の胴体に手を回して飛んでいる。どちらかといえば荷物みたいに運ばれている感じで、全くロマンチックなカケラも無かった。
「まずはこの地を救う為、アタイやワルオリを助けてくれてありがとう!感謝する、金の者よ!」
先ほどまでの豪快な姉さんとうって代わり、長としての威厳を持って感謝を述べられた。
「いえ…西は魔王の配下と聞いてたのに。悪男がとっても良い奴だったので、ほっとけなかったんです」
「アッハッハ!そうか!アイツとショーキは可愛いだろう?自慢の弟だ!」
「はい。ショーキは可愛いし、悪男も強がってる癖に結構ぬけてて面白いです」
「アッハハ!いいね、アンタ。気に入ったよ。うちの弟に勝手に名付けしやがってと思ったけど。きっとこれも必然だね、弟の事を頼んだよ」
そう言って長は渓谷の間を通る。
そこは、キラキラと光る石が所々にあって、とても綺麗だった。
「わあ!綺麗!夜はこんな風に見えるんだ!」
「ハッハッハッ!綺麗だろ?なのに鳥族はココまで飛んで来れないんだよ。アタイの秘密の場所さ」
長が渓谷の崖の広い場所に降りたった。
暗闇の中、ほんのり光る渓谷は幻想的だった。
崖を椅子代わり座り渓谷を見渡す。
強い光や弱い光、その明かりに照らされる幾多もの赤い地層。自然が織りなす芸術がそこに広がっていた。
何だか感動して涙が滲んだ。
「どうしたんだい?」
「昼の地層も雄大で感動したけど、この光景はただただ美しくて感動します」
「ふふ、ありがとう。アンタは本当に西の良さを分かってくれるんだね。今世に現れた金の者がアンタみたいな子で良かったよ」
そこで、長はふぅと一息吐いた。
「さて、アンタはどこまでワルオリに聞いた?」
「瘴気を抑えてるのは魔王だって。俺は東と南で、魔王が瘴気の原因だって聞いてたから驚きました」
「そうだろうね。だがどちらもある意味当たってるよ」
「え?」
「魔王様は瘴気を抑えてる。だけど魔王様がこの世にいるからこそ、瘴気は無くならないのさ」
その相反する話に困惑する。よく分からなかった。
「そもそも瘴気とは何か知ってるかい?」
「いいえ。北から来て徐々に生き物を狂わせるという位しか…」
「あれはね、この世界が生み出した歪みや穢れなのさ」
元々この世界は大きな災害も無く大陸間の争いもない平和な世界だった。
争いが無い理由は、この世界を作った絶対的な光の女神が存在し、その女神に寵愛された人族の王族が中心となって世界を治めていたからだ。
それ以外の種族は敬愛する光の女神の意向に添い、人族の王族と親交を深め、それぞれの土地を守っていた。
だが一見平和で理想的な世界には相応の代償があった。災害が無い。干ばつが無い。緑や花々、木々、食材が豊富。これらを継続させる為に、女神は本来起こる筈だった自然の災害や法則を捻じ曲げたのだ。
そして限界が来た時。
それらは瘴気となって世に溢れた。
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「さあ!さあ!今日は久しぶりに家族が集まった祝いだよ!宴だよ!大いに飲みな!」
西の長の掛け声と共に宴は始まった。
西の館は、中も外も多くの鳥族で溢れていた。
彼らは一族を総じて「家族」と呼んだ。
他の種族の様に長をきちんと敬っているものの、どちらかといえば「家長」というより「姉御」というイメージだ。
そんな彼らは目覚めてすぐ、宴をすると決めてから一切に狩りを初めた。一体どこにこんなに食べ物があったのかと不思議になる程、宴は食べ物や飲み物に溢れていた。
長の張った結界により、それまで口に出来ない状態だった獲物や数少ない植物達も食べれる様になったらしい。
太陽やルースが持っていた大量の食材も提供した。それはもう大層喜ばれ、今では恩人扱いから大家族の一員に昇格した。
そろそろ日も暮れるので辺りは薄暗い。なのに鳥族は鳥目だからという理由で、やたら大量の光る石があちらこちらに飾られ、まるで昼間の様に明るかった。
そして鳥族の館の不思議な構造の理由が判明した。
館内の出入口がやけに大きい、そして窓がただの大きな長四角の穴だった理由は、彼らの行動を見れば納得だった。
歩くより早いという理由で、屋内だろうが普通に飛ぶし、玄関らしき物を無視して普通に窓から飛んで出入りしていた。
「赤の者は豪快な種族だね」
そう評したルースの言葉に太陽も納得だ。
「そうだな。それに強引で人の話を聞かん」
それは空もだろ!太陽は心の中でツッコンだ。
「でも気持ち良い種族だ。裏表が無い分、好感が持てる」
その言葉には同意だ。
長含め、鳥族のみんなは多少豪快で強引だが、気のいい人達だった。
「セーヤ!飲んでるかい?」
呼ばれて顔を上げると、酒瓶らしき物を持った鳥族の長。悪男の姉だった。
「はい。何か甘い飲み物もらってます。美味しいですね、コレ」
「あぁ、砂漠にいる虫の体液だね」
「ぶほぉっ!」
虫と聞いて思わず噴いた。
北まで追いかけた気持ち悪い虫を思い出す。
まさか、あれじゃ無いよな……?
「何してんだい」
長が呆れた様に笑った。
そのまま太陽にしなだれる様に寄りかかって来る。
豊満な胸が腕に当たった。
「お、長、ちょっと近いデス」
「ん~?この位で緊張してるのかい?」
長は見た目が20代半ばの綺麗な女性だった。服装も胸元が大きくカッティングされていて、セクシーだ。
要は角度に関係なく、胸の谷間が見えるわけで…。
「ねぇセーヤ。2人きりになれるとこに行かないかい?」
「ぐっ…」
今度は食べ物が詰まった。
そんなセーヤの耳元で長が囁く。
「…ワルオリに聞いたよ。アンタの色」
「……!」
「…代々、西の長にだけ伝えられている魔王の秘密がある」
ごく、と喉がなった。それは今きっと、太陽が1番欲しい情報かもしれない。
「…2人きりになれる場所に行くかい?」
「…はい」
「ふふ、赤くなって可愛いねぇ。こっちさ。ついておいで」
長に続いて立ち上がる。
チラリと横の空を見ると、その聴覚で話を聞いていたのか無言で頷いた。
一方ルースは。
「私エルフって初めて会ったわ!噂通り美形ね!」
「もっと食べてくれよ!俺がとってきた獲物なんだ!」
相変わらずモテモテで、多くの人に囲まれてルースの姿は見えなかった。
俺のルースさんなのに…。ちょっと妬けてしまう。でも。太陽の腕には、ルースから贈られた腕輪があった。
いつか2人一緒になろうという約束の証。だから、もう嫉妬はしない…というのは嘘で、嫉妬はする。
ただ前ほど心配になったりはしない。
空に軽く合図して、太陽は長に続いて部屋を出た。
◇◇◇
てっきり2人だけになれる部屋に行くと思ったのに。
まさか連れて行かれたのは深夜の空中デート(?)だった。
「アタイ以外の鳥族は夜は飛べない!だから秘密の話にはピッタリなのさ!」
そう話す長は、片手を太陽の胴体に手を回して飛んでいる。どちらかといえば荷物みたいに運ばれている感じで、全くロマンチックなカケラも無かった。
「まずはこの地を救う為、アタイやワルオリを助けてくれてありがとう!感謝する、金の者よ!」
先ほどまでの豪快な姉さんとうって代わり、長としての威厳を持って感謝を述べられた。
「いえ…西は魔王の配下と聞いてたのに。悪男がとっても良い奴だったので、ほっとけなかったんです」
「アッハッハ!そうか!アイツとショーキは可愛いだろう?自慢の弟だ!」
「はい。ショーキは可愛いし、悪男も強がってる癖に結構ぬけてて面白いです」
「アッハハ!いいね、アンタ。気に入ったよ。うちの弟に勝手に名付けしやがってと思ったけど。きっとこれも必然だね、弟の事を頼んだよ」
そう言って長は渓谷の間を通る。
そこは、キラキラと光る石が所々にあって、とても綺麗だった。
「わあ!綺麗!夜はこんな風に見えるんだ!」
「ハッハッハッ!綺麗だろ?なのに鳥族はココまで飛んで来れないんだよ。アタイの秘密の場所さ」
長が渓谷の崖の広い場所に降りたった。
暗闇の中、ほんのり光る渓谷は幻想的だった。
崖を椅子代わり座り渓谷を見渡す。
強い光や弱い光、その明かりに照らされる幾多もの赤い地層。自然が織りなす芸術がそこに広がっていた。
何だか感動して涙が滲んだ。
「どうしたんだい?」
「昼の地層も雄大で感動したけど、この光景はただただ美しくて感動します」
「ふふ、ありがとう。アンタは本当に西の良さを分かってくれるんだね。今世に現れた金の者がアンタみたいな子で良かったよ」
そこで、長はふぅと一息吐いた。
「さて、アンタはどこまでワルオリに聞いた?」
「瘴気を抑えてるのは魔王だって。俺は東と南で、魔王が瘴気の原因だって聞いてたから驚きました」
「そうだろうね。だがどちらもある意味当たってるよ」
「え?」
「魔王様は瘴気を抑えてる。だけど魔王様がこの世にいるからこそ、瘴気は無くならないのさ」
その相反する話に困惑する。よく分からなかった。
「そもそも瘴気とは何か知ってるかい?」
「いいえ。北から来て徐々に生き物を狂わせるという位しか…」
「あれはね、この世界が生み出した歪みや穢れなのさ」
元々この世界は大きな災害も無く大陸間の争いもない平和な世界だった。
争いが無い理由は、この世界を作った絶対的な光の女神が存在し、その女神に寵愛された人族の王族が中心となって世界を治めていたからだ。
それ以外の種族は敬愛する光の女神の意向に添い、人族の王族と親交を深め、それぞれの土地を守っていた。
だが一見平和で理想的な世界には相応の代償があった。災害が無い。干ばつが無い。緑や花々、木々、食材が豊富。これらを継続させる為に、女神は本来起こる筈だった自然の災害や法則を捻じ曲げたのだ。
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