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第四章 誰がために、その金は甦るのか
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空と長が話し合いを設ける前に、時間は遡る。
「~~~~っ!」
強く寒い風を全身に浴びながら、太陽は必死に悲鳴を飲み込み恐怖に耐えていた。
今の状況は言うなれば深夜のダイビング!深夜のジェットコースター!
デートなんて甘い物じゃ無い。まさに生死をかけた冒険劇だ!
攫って欲しい、と泣いて縋った恋人にルースは優しく、いいよ、と返事した。
ルースは鳥族では無いから空は飛べない。なら西の館の頂きから降りるとなると力技しか無いわけで…。
みんなにバレない様に静かにしててね、と言った後。ルースは太陽を片手で抱きしめると、崖をダイブした。
ひえええーっ!!
バレたら連れ戻されると分かってるから、悲鳴は何とか抑えた。それでも、落下する浮遊感への恐怖は消せない。
闇夜の中、落ちていく恐怖に怯える太陽と違って、ルースは楽しそうに笑ってる。
「大丈夫。絶対落とさないからね。どんどん行くよ」
優男に見えて意外にルースは冒険家の様だ。
突然、落ちていく浮遊感から引っ張られる様な負荷がかかる。
それまで真下から受けていた風を横に受けた事で、今度は横に移動してるだと気づいた。
「ヘー!スゴイ!セーヤ見てごらん。綺麗だよ!」
ルースの言葉に恐る恐る目を開けると。そこは先ほど長と話し合う為に通った渓谷の合間だった。
「わぁ…綺麗…」
思わず感嘆が漏れる。
闇夜に幾つもの光る鉱石が浮かび上がる幻想的な場所だった。淡い光、強い光、点滅する光。様々な光の向こうにはほんのりと赤い地層が折り重なってるのが見えた。
ルースはその光る渓谷の合間を、次々と片手で蔦を生じさせては、振り子の要領で宙を移動していた。
ルースさん、ス○イダーマンみたい!
優しくてカッコ良くてセクシーな上に冒険も出来る!やっぱり俺の恋人は最高だ!
相変わらず全身に風を受けてるから寒いし、浮遊感を感じる為怖さは相変わらずだけど。
目の前の光景は素晴らしかった。
都会の夜景とは違う自然ならではの神秘さが目を奪う。
「西は昼も夜も美しいね」
ルースの言葉に思わず笑う。
太陽が長に述べた感想と同じだからだ。美しいと感動する事を共有できたことが嬉しかった。
「ルースさんと見れて嬉しいです」
「僕もだよ」
ルースへの信頼と眼前の美しい光景から、太陽は暫く恐怖を忘れて深夜のデートを楽しんだのだった。
◇◇◇
パチパチ パチッ
焚き火の様な乾燥した木の音がした。
耳馴染みの良いこの音が太陽は好きだった。
少しずつ意識が覚醒して目を覚ますと、木の天井が見えた。
前に見たことがある様な…。
何度か瞬きしてから、太陽は横を見た。
簡素な暖炉に焚き火が燃えている。それが部屋全体を暖かくしているのがわかった。
ココは…東の小屋だ。
太陽がルースと2人で帰りたかった場所。
太陽の願いを叶える為、ルースがココまで連れて来てくれたんだと分かった。
窓の向こうの景色が明るい。すでに昼だ。
隣にルースはいなかった。
「ルースさん?何処?」
太陽はベッドを起きると、靴を履いて外に飛び出る。これまで何度も引き裂かれたせいか、ルースの姿が見えないと不安になってしまう。
すると腕輪から緑色の細い光が伸びて行く。
それを辿って行くと、小屋の裏側にルースがいた。
「セーヤ?起きた?」
汗を拭いながらルースが微笑んだ。その足元にはいくつもの薪。暖炉に焚べる薪を準備してくれていた。
緑の光がルースの腕輪がある側の腕に巻きついて実体化した。ぐるぐる甘える様に巻きつく細い蔦を見て、ルースが吹き出す。
「大丈夫だよ。どこにも行かないから」
「ルースさん、これって」
「セーヤの気持ちが形になってるんだよ」
俺の気持ち。ぐるぐる甘える様にルースの腕に巻きつくのを見て、ものすごく恥ずかしくなった。
「ちょっと遅いけど、昼ごはんにしようか」
ルースが優しく太陽の手を取った。ルースの腕輪からも数本の細い蔦がニョキニョキはえて、優しく太陽の腕に絡まった。
嬉しさに頬が赤くなるのがわかった。
「はい…」
照れて顔を伏せる太陽に、ルースの笑う気配がした。
「~~~~っ!」
強く寒い風を全身に浴びながら、太陽は必死に悲鳴を飲み込み恐怖に耐えていた。
今の状況は言うなれば深夜のダイビング!深夜のジェットコースター!
デートなんて甘い物じゃ無い。まさに生死をかけた冒険劇だ!
攫って欲しい、と泣いて縋った恋人にルースは優しく、いいよ、と返事した。
ルースは鳥族では無いから空は飛べない。なら西の館の頂きから降りるとなると力技しか無いわけで…。
みんなにバレない様に静かにしててね、と言った後。ルースは太陽を片手で抱きしめると、崖をダイブした。
ひえええーっ!!
バレたら連れ戻されると分かってるから、悲鳴は何とか抑えた。それでも、落下する浮遊感への恐怖は消せない。
闇夜の中、落ちていく恐怖に怯える太陽と違って、ルースは楽しそうに笑ってる。
「大丈夫。絶対落とさないからね。どんどん行くよ」
優男に見えて意外にルースは冒険家の様だ。
突然、落ちていく浮遊感から引っ張られる様な負荷がかかる。
それまで真下から受けていた風を横に受けた事で、今度は横に移動してるだと気づいた。
「ヘー!スゴイ!セーヤ見てごらん。綺麗だよ!」
ルースの言葉に恐る恐る目を開けると。そこは先ほど長と話し合う為に通った渓谷の合間だった。
「わぁ…綺麗…」
思わず感嘆が漏れる。
闇夜に幾つもの光る鉱石が浮かび上がる幻想的な場所だった。淡い光、強い光、点滅する光。様々な光の向こうにはほんのりと赤い地層が折り重なってるのが見えた。
ルースはその光る渓谷の合間を、次々と片手で蔦を生じさせては、振り子の要領で宙を移動していた。
ルースさん、ス○イダーマンみたい!
優しくてカッコ良くてセクシーな上に冒険も出来る!やっぱり俺の恋人は最高だ!
相変わらず全身に風を受けてるから寒いし、浮遊感を感じる為怖さは相変わらずだけど。
目の前の光景は素晴らしかった。
都会の夜景とは違う自然ならではの神秘さが目を奪う。
「西は昼も夜も美しいね」
ルースの言葉に思わず笑う。
太陽が長に述べた感想と同じだからだ。美しいと感動する事を共有できたことが嬉しかった。
「ルースさんと見れて嬉しいです」
「僕もだよ」
ルースへの信頼と眼前の美しい光景から、太陽は暫く恐怖を忘れて深夜のデートを楽しんだのだった。
◇◇◇
パチパチ パチッ
焚き火の様な乾燥した木の音がした。
耳馴染みの良いこの音が太陽は好きだった。
少しずつ意識が覚醒して目を覚ますと、木の天井が見えた。
前に見たことがある様な…。
何度か瞬きしてから、太陽は横を見た。
簡素な暖炉に焚き火が燃えている。それが部屋全体を暖かくしているのがわかった。
ココは…東の小屋だ。
太陽がルースと2人で帰りたかった場所。
太陽の願いを叶える為、ルースがココまで連れて来てくれたんだと分かった。
窓の向こうの景色が明るい。すでに昼だ。
隣にルースはいなかった。
「ルースさん?何処?」
太陽はベッドを起きると、靴を履いて外に飛び出る。これまで何度も引き裂かれたせいか、ルースの姿が見えないと不安になってしまう。
すると腕輪から緑色の細い光が伸びて行く。
それを辿って行くと、小屋の裏側にルースがいた。
「セーヤ?起きた?」
汗を拭いながらルースが微笑んだ。その足元にはいくつもの薪。暖炉に焚べる薪を準備してくれていた。
緑の光がルースの腕輪がある側の腕に巻きついて実体化した。ぐるぐる甘える様に巻きつく細い蔦を見て、ルースが吹き出す。
「大丈夫だよ。どこにも行かないから」
「ルースさん、これって」
「セーヤの気持ちが形になってるんだよ」
俺の気持ち。ぐるぐる甘える様にルースの腕に巻きつくのを見て、ものすごく恥ずかしくなった。
「ちょっと遅いけど、昼ごはんにしようか」
ルースが優しく太陽の手を取った。ルースの腕輪からも数本の細い蔦がニョキニョキはえて、優しく太陽の腕に絡まった。
嬉しさに頬が赤くなるのがわかった。
「はい…」
照れて顔を伏せる太陽に、ルースの笑う気配がした。
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