【完結】壊された女神の箱庭ー姫と呼ばれていきなり異世界に連れ去られましたー

秋空花林

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第四章 誰がために、その金は甦るのか

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「セーヤ?大丈夫?」

 優しく揺り起こされて目を開けると、優しい緑の髪と緑の瞳が視界に映った。

「…師匠?」
「寝ぼけてるの?泣いてるよ。怖い夢でも見た?」

 目の前の彼が、優しく太陽の目元を拭き取った。その姿はー。

「…ルースさん?」
「おはよう。もう朝だよ」

 目の前にいたのはルースだった。
 夢の中で見た男性によく似ている。
 彼はー。

「なんだっけ?何か夢を見たのに忘れちゃった」
「ふはっ、お茶でも飲む?」

 ルースが笑いながら、窓を開けた。少し寒い風が入って来て、完全に目が覚める。

「お茶、俺が淹れます」
「ありがとう」

 2人で過ごす2日目。
 昨日はルースが料理のほとんどをしてくれたから。今日からは少しずつ自分もやっていこう。

 手際良くお茶を淹れると、2人で食卓につく。

 太陽もここ数年は一人暮らしだったから、ある程度は家事全般が出来る。でも、調理方法や食材が違うから少しずつ覚えていきたい。

 だってルースに美味しいのを食べてもらいたいから…。

 ゴンッ!
 唐突にテーブルに頭を打ちつけた。

「セーヤ?どうしたの?」
「いえ…ちょっと、自分の思考回路が…」

 これって、完全に新婚夫婦の奥さんの心境!

 何だか照れて、淹れたお茶を一気に口にした。

「あちっ!」
「セーヤ!?」



◇◇◇



 2日目は湖へ向かった。
 あの太陽がルースの前に裸で飛び込んだ場所だ。今でも思い出すと顔から火が出そうだ。

「あの時のセーヤには驚いたよ」
「ルースさん、それ言わないで」

 ハハ、とルースが笑う。
 
 俺は水に濡れたルースさんに見惚れたけど。恥ずかしいから秘密だ。

 湖は以前見た時よりは透明度が増していた。だが陽の光が差さないこの世界ではこれ以上の透明感を見れるのは難しいかもしれない。何となくそう思った。

 うーん、とルースが何か悩んでる。

「どうしたんですか?」
「いや、北の白がいたらもう少し改善されるのかなと思って」
「北の白…」

 あまり僕も詳しくは無いけどと前置きして、ルースは北の白い妖精は水にまつわる能力を持っているらしいと言った。それで思い出したのは、北で見かけた魔王だった。鳥の長の話が本当なら、きっとあの人が白い妖精王だ。

「ルースさん、俺ルースさんに話しておきたい事があるんです」
「何だい?」

 少し口ごもってから、周囲を気にしながらルースの耳元に囁いた。鳥の長だけに語り継がれている魔王の秘密を聞いたと。

 ルースが表情を変えずに頷く。

「夜、話そう」
「わかりました」

 そして暫く湖の周辺を散策して帰った。



◇◇◇



 夜。夕飯が終わった後に、ルースが足元から美しい緑の光を放った。幾重にも伸びた光が部屋いっぱいに広がり実体化すると緑で覆われた籠が出来上がった。

 前に西の館でルースと2人で過ごした部屋だ。

 いくつかの花が咲き、美しい灯りを灯す。瞬く間に幻想的な空間になった。

「ルースさん、何でわざわざ?」
「誰が聞いてるかわからないからね。この部屋は防音も出来るんだ。長だけに語り継がれるなら相当重要なんだろう?」

 ルースの言葉に太陽は頷いた。多分、この世界の常識を変えるくらい。

「じゃあ、教えてくれる?話せる範囲で構わないから」

 それから太陽は、ルースに鳥の長に聞いた話を伝えた。
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