【完結】壊された女神の箱庭ー姫と呼ばれていきなり異世界に連れ去られましたー

秋空花林

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第四章 誰がために、その金は甦るのか

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 目を開けると、緑の籠の中で横になっていた。腕の中にはルースがいた。

 昨夜、静かに泣いている彼を抱きしめて、そのまま横になって一緒に寝たのを思い出す。

 ルースの瞼は腫れていた。目元に涙の跡があるのを見て胸が痛んだ。

 昨日あれから自分に出来る事は何かを色々考えた。太陽は金の力があると言われてるが、自分では思う様に使えない。最近やっと癒しの力を使える様になったくらいだ。

 まずは北に行く事。それが最優先。そんな気がした。そして早く光の勇者に会いたい。きっと彼が全ての鍵を握ってる筈だ。

「…んん」

 胸元に顔を埋め寝ていたルースが、身じろぎして、ぼんやりと目を開けた。

「ルースさん。おはようございます。体調は大丈夫ですか?」
「…うん。大丈夫」

 ルースが甘える様に胸元に顔を埋めて、抱きついてきた。その仕草が可愛いくて、キュンとした。

「ねえ、タイヨウ…」
「何ですか?」
「君は…いなくならないでね」
「ルースさん?」
「もう…魔王に関わる事で大切な人を失いたくないんだ。もし君まで失ってしまったら…僕はきっともう…生きていけない…」

 ルースの瞳が不安定に揺れていた。今にもまた泣きそうだ。

「側にいます。俺もあなたの側にいたい」
「タイヨウ…」

 ルースが身体を起こして、太陽に口づけてきた。必死に、まるでそこに太陽が存在しているのを確かめる様に。

「ん…ルース…さん」
「愛してる。タイヨウ…僕の伴侶」

 キスが深まって、気づけばルースに押し倒されていた。

「タイヨウ…今、伴侶の儀をしてもいいかい?」
「伴侶の儀?」
「エルフの結婚の儀式だよ。将来を誓った相手に、自分の寿命の半分を分け与えるんだ」

 必死な表情でルースは太陽を見つめていた。こんなに何かに駆り立てられる様な彼は初めてだった。

「もし僕に何かあっても。逆に君に何かあっても。普通の人間では無くなるから、少なくとも今の君よりは生命力が高まる」
「それって…」
 
 その分、ルースの生命力が弱まるということ?

 何となくそんな気がした。そんなの頷けない。

「それって…ルースさんの生命力が下がるって事ですよね?そんなのダメです」
「タイヨウ…でも」
「いずれ俺は貴方の伴侶になります。なりたいです。でもそれは今じゃない。ちゃんと魔王や瘴気の事を片付けてからです。それまで貴方の生命を受け取れません」
「……どうしても?」
「ごめんなさい。でも俺も…貴方が大切だから、譲れないんです」

 太陽を押し倒したままルースの瞳から涙が溢れた。お互いを想うがゆえに、互いが譲れない。それがルースも分かるから、無理に押し付けられなくて胸が苦しい。

 太陽はルースを見上げながら、その涙を拭いた。

「ルースさん。俺約束します。この旅が終わったら。この世界の問題が片付いたら、その時は絶対受け取りますから」
「タイヨウ…」

 太陽がルースを引き寄せ、優しく口づけを交わした。

「愛してます。ルースさん。俺の伴侶」



ーーー

 次話、閲覧注意です。
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