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第四章 誰がために、その金は甦るのか
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「俺…そろそろ出発出来そうです」
「わかった。身体は大丈夫?」
「はい」
身支度を整えたルースが太陽の側に近づいて来た。
激しく愛し合って、身体を休めた翌朝。2人は西に戻る為の準備をしていた。
目覚めてから、ルースはもう伴侶の儀の事は口にしなかった。
でも太陽には分かっていた。ルースは決して納得した訳では無いと。
太陽の気持ちを汲んで、無理やり自分の心を押し殺しているだけだと。
どんなに身体を重ねても、ルースの心を軽くする事は出来なかった。
彼は今もただ太陽を案じている。これから向かう北で危険があった時。金の能力が完全に目覚めていない状態の太陽はただの人間でしかない。
ルースや空、悪男でも太刀打ち出来ない魔王に対峙した時。太陽が無事でいられる保証がないからー。
それでも、太陽も退けなかった。
だからせめて。絶対に自分は死なないという覚悟を彼に示そうと思った。
「ルースさん。向かう前にお願いがあります」
◇◇◇
自分は絶対に死なない。
必ずルースと共に生きて一緒になる。
太陽なりの覚悟を準備して。
太陽はその覚悟をルースに手渡した。
「これは?」
「俺の世界で伴侶になった2人はお揃いの指輪をつけるんです」
太陽が準備したのは2人お揃いの指輪だった。ルースに頼んで準備してもらった緑の鉱石の指輪に、太陽が文字を入れた。太陽の世界の言葉で。
「…何て書いてるの?」
「ルースさんと俺の名前です」
LOOSE&TAIYO。ルースのスペルが当たってるか不安だが、要は気持ちだ。うん。
「今はこんな形でしか答えられなくてごめんなさい。俺は絶対死なないです。きっと無事に生きてあなたの伴侶になります」
「タイヨウ…ありがとう」
ルースが感動して太陽を抱きしめた。
指輪も嬉しい。でも何よりも、絶対に死なないと覚悟を決めて見せてくれた事が嬉しかった。
「僕も自分を大切にする。だから2人で無事に戻ってこよう」
「はい」
指輪を互いの左手の薬指に嵌め合った。
互いの顔を見つめながら微笑むその表情に、もう先ほどの憂いは無かった。
ルースによって、緑の籠は解除された。
普通の小屋に戻ったところでルースは荷物を手に取った。
「もうそろそろ、2人も向かってる頃だよ」
「2人?」
「君の家族だよ」
家族。空と悪男の事だった。
「何で…」
「西の長を説得して、北に向かう用意が出来たから迎えに来るって、ソラから連絡があったんだ」
「空が…」
太陽の中に空への感謝が湧き上がった。
太陽がルースの事で傷つき西の館を飛び出した後。空は西の長の誤解を説く為に動いてくれたんだ。それがわかった。いつも彼は太陽が本当に望む事を察して動いてくれる。
「西の長も考えを改めた様だよ」
「本当ですか?良かった!」
心の底から安堵した。
鳥族の長の彼女の事は嫌いじゃない。情に厚い人だから、今回あんな事になったのはわかってる。
「じゃあ、一度西に戻るんですか?」
「そうだよ。東と南の長も西に集まって今後の事を話し合ってるらしい」
「それって…」
西の鳥族は魔王の手下。それがこの世界の常識。だから他の種族から嫌厭されていた筈。それが今、西に集まって今後の事を話し合ってるという。それって…。
「話し合う様に各地の長を動かしたのはソラだけど。そのキッカケを作ったのは君だよ。君が各地を周り長と知り合い、土地を守った。だからその従属のソラの呼びかけに各地の長が応えたんだ」
「……っ」
やって来た事は無駄じゃない。そう認められた事に胸が熱くなった。
「じゃあ今頃はみんな魔王の事を」
「あぁ。西の長から話を聞いてるだろうね。東はソラもいるし、僕の伯父も馬鹿じゃない。この話を聞いてまだ魔王に光の封印を施そうとはしない筈だ」
だからそれを踏まえて、これから先、瘴気とどう向き合うか話し合っている筈だとルースは言った。
この先は、中央の管轄だよ。そうルースに聞いて木々の間を抜けると、草木も生えない剥き出しの地面が広がっていた。
風が吹いて砂埃が舞う。一面、枯れた土地が広がり、動いている生き物は見当たらなかった。
「こんなに変わるんですね」
「女神に見放された土地だからね」
荒廃した土地を歩く。所々に崩れ落ちた建物が見えた。人が去り、食べ物を求めた獣が荒らし、更にはこの地が瘴気で覆われたからだろうとルースが言った。
言われてみれば東の森に比べ空気がとても澱んでいる。初めて森に訪れた時みたいだ。
「この先を行けば西の領土に入る。その頃にはソラとワルオと合流できるよ」
「はい」
空と悪男。離れて数日しか経っていないのに、懐かしい気持ちになる。早く2人にも会いたい。
その時、遠くから大きな音が響いてきた。ドドド、と激しい音と共に地面が揺れる。
地面の揺れから、何かが大群で駆けてくるのが分かり、辺りを見回すとちょうど北の辺りから砂煙が近づいてくるのが見えた。
「何あれ…」
「北の魔物だ!」
ルースは太陽を抱えると走り出した。
「わかった。身体は大丈夫?」
「はい」
身支度を整えたルースが太陽の側に近づいて来た。
激しく愛し合って、身体を休めた翌朝。2人は西に戻る為の準備をしていた。
目覚めてから、ルースはもう伴侶の儀の事は口にしなかった。
でも太陽には分かっていた。ルースは決して納得した訳では無いと。
太陽の気持ちを汲んで、無理やり自分の心を押し殺しているだけだと。
どんなに身体を重ねても、ルースの心を軽くする事は出来なかった。
彼は今もただ太陽を案じている。これから向かう北で危険があった時。金の能力が完全に目覚めていない状態の太陽はただの人間でしかない。
ルースや空、悪男でも太刀打ち出来ない魔王に対峙した時。太陽が無事でいられる保証がないからー。
それでも、太陽も退けなかった。
だからせめて。絶対に自分は死なないという覚悟を彼に示そうと思った。
「ルースさん。向かう前にお願いがあります」
◇◇◇
自分は絶対に死なない。
必ずルースと共に生きて一緒になる。
太陽なりの覚悟を準備して。
太陽はその覚悟をルースに手渡した。
「これは?」
「俺の世界で伴侶になった2人はお揃いの指輪をつけるんです」
太陽が準備したのは2人お揃いの指輪だった。ルースに頼んで準備してもらった緑の鉱石の指輪に、太陽が文字を入れた。太陽の世界の言葉で。
「…何て書いてるの?」
「ルースさんと俺の名前です」
LOOSE&TAIYO。ルースのスペルが当たってるか不安だが、要は気持ちだ。うん。
「今はこんな形でしか答えられなくてごめんなさい。俺は絶対死なないです。きっと無事に生きてあなたの伴侶になります」
「タイヨウ…ありがとう」
ルースが感動して太陽を抱きしめた。
指輪も嬉しい。でも何よりも、絶対に死なないと覚悟を決めて見せてくれた事が嬉しかった。
「僕も自分を大切にする。だから2人で無事に戻ってこよう」
「はい」
指輪を互いの左手の薬指に嵌め合った。
互いの顔を見つめながら微笑むその表情に、もう先ほどの憂いは無かった。
ルースによって、緑の籠は解除された。
普通の小屋に戻ったところでルースは荷物を手に取った。
「もうそろそろ、2人も向かってる頃だよ」
「2人?」
「君の家族だよ」
家族。空と悪男の事だった。
「何で…」
「西の長を説得して、北に向かう用意が出来たから迎えに来るって、ソラから連絡があったんだ」
「空が…」
太陽の中に空への感謝が湧き上がった。
太陽がルースの事で傷つき西の館を飛び出した後。空は西の長の誤解を説く為に動いてくれたんだ。それがわかった。いつも彼は太陽が本当に望む事を察して動いてくれる。
「西の長も考えを改めた様だよ」
「本当ですか?良かった!」
心の底から安堵した。
鳥族の長の彼女の事は嫌いじゃない。情に厚い人だから、今回あんな事になったのはわかってる。
「じゃあ、一度西に戻るんですか?」
「そうだよ。東と南の長も西に集まって今後の事を話し合ってるらしい」
「それって…」
西の鳥族は魔王の手下。それがこの世界の常識。だから他の種族から嫌厭されていた筈。それが今、西に集まって今後の事を話し合ってるという。それって…。
「話し合う様に各地の長を動かしたのはソラだけど。そのキッカケを作ったのは君だよ。君が各地を周り長と知り合い、土地を守った。だからその従属のソラの呼びかけに各地の長が応えたんだ」
「……っ」
やって来た事は無駄じゃない。そう認められた事に胸が熱くなった。
「じゃあ今頃はみんな魔王の事を」
「あぁ。西の長から話を聞いてるだろうね。東はソラもいるし、僕の伯父も馬鹿じゃない。この話を聞いてまだ魔王に光の封印を施そうとはしない筈だ」
だからそれを踏まえて、これから先、瘴気とどう向き合うか話し合っている筈だとルースは言った。
この先は、中央の管轄だよ。そうルースに聞いて木々の間を抜けると、草木も生えない剥き出しの地面が広がっていた。
風が吹いて砂埃が舞う。一面、枯れた土地が広がり、動いている生き物は見当たらなかった。
「こんなに変わるんですね」
「女神に見放された土地だからね」
荒廃した土地を歩く。所々に崩れ落ちた建物が見えた。人が去り、食べ物を求めた獣が荒らし、更にはこの地が瘴気で覆われたからだろうとルースが言った。
言われてみれば東の森に比べ空気がとても澱んでいる。初めて森に訪れた時みたいだ。
「この先を行けば西の領土に入る。その頃にはソラとワルオと合流できるよ」
「はい」
空と悪男。離れて数日しか経っていないのに、懐かしい気持ちになる。早く2人にも会いたい。
その時、遠くから大きな音が響いてきた。ドドド、と激しい音と共に地面が揺れる。
地面の揺れから、何かが大群で駆けてくるのが分かり、辺りを見回すとちょうど北の辺りから砂煙が近づいてくるのが見えた。
「何あれ…」
「北の魔物だ!」
ルースは太陽を抱えると走り出した。
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