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第五章 果てなき旅路より戻りし者
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金の勇者に続いてルースが歩こうとしたが、右腕が無いせいか、はたまた体調不良からか、バランスが取れずにふらついた。
慌てて太陽がルースを支える。
「ルースさん、大丈夫?」
「君は…?」
「え?」
予想外の事を言われて、一瞬戸惑ったが自分の髪と目が変わった事に思い至った。
「俺セーヤです。ルースさんと離れた後、気づいたらこうなっていて…変ですか?」
「…いや、そんな事ないよ」
首を振ったルースに太陽の心臓がギュッとなった。
ルースが生きている。それだけで、もう太陽は泣きそうだった。こんな話し合いの場でなければ、きっとルースに縋って泣いていた。
「ルースさん、俺治療しますから、休んでください。こんな…酷い状態で…」
腕や身体からの血は止まっていたが、全身服も身体もボロボロだった。とても普通に話し合いに参加出来そうに見えない。
「大丈夫。終わったら休むから」
でも、とそれでも心配そうな太陽にラリエスが声をかけた。
「一応、私も癒しはかけましたよ。貴方が治癒をかけたら暫く目覚めないでしょうから、今は話し合いに参加させた方がいいでしょう。でないと南に不利な条件になってしまうかもしれない」
「そんな…」
「本当に大丈夫だよ。悪いけど、手を貸してもらえる?」
その時、壁際に無言で立ち尽くしていた女騎士キャスが、太陽とルースにスッと近づいて来た。
「私も手伝おう」
一言断って、太陽と反対側からキャスがルースを支えてくれた。2人でサポートしながらルースをソファへ座らせた。
先に座っていた空は席を立ち、獣化してルースの足元へ座った。その様子を向かいに座っていたラリエスが、へえ、と面白そうに見ていた。
席が空いたことで、太陽はそのままルースの隣へ腰掛け、女騎士はルースの手伝いが終わると再び壁際に移動して直立した。
みんなが落ち着いたのを見て、最初に口火を切ったのはラリエスだった。
「そちらのキャスと緑の者には簡単に説明してます。では話を再開しましょう。中央は人間が捨てた土地が多い。特に北寄りは。その一部に瘴気を詰めましょう」
「それは…人間が反発しないか?」
「大丈夫です。私が黙らせます」
魔王の懸念にラリエスがニッコリ微笑んだ。
西の館で、王家を復活させないと言い切ったアキエスを思い起こさせる。今更だが、空とベイティがアキエスをラリエスに似ていると言ったのも納得だ。名前も見た目も性格までソックリだ!
「金なら濃い瘴気も浄化できます。これで残りはどの位ですか?」
「…あと少し残る位だ」
「ならそれは北で出来ますか?」
「…出来る。だが…」
魔王が顔を少し伏せた。
「瘴気を各地で浄化するなら、これから起こりえる自然災害はどうするのだ?この先、長の能力だけでは対処しきぬぞ?」
「だそうですよ、聖女」
急にラリエスがセーヤに話をふってきた。
話の行末を見守っていた太陽は焦った。
「そんな急に言われても、俺がわかるわけ…」
「大丈夫です。この世界を救うだけの知識を貴方は学んで来た筈。だから貴方に私の声は届いた」
「え?」
「答えは貴方の中にある筈です」
目の前のラリエスが自信ありげにニヤリと笑った。まるで太陽が答えられない筈が無い、とでも言う様に自信たっぷりに。
目の前の男は眼帯はしていない。垂れ目の優男だし、あの吊り目の男とは全然違う筈なのに、これまで夢の中で会った勇者と印象が重なる。
俺の中に答えがある。
一旦、太陽は自身を落ち着ける為、目を閉じて深呼吸した。俺の中にあると言うなら、きっとそれは難しいことじゃ無い筈だ。元の世界なら、こんな時どうする?そう考えたら、自ずと答えは出た。
「各地から希望者を集めて組織を作りましょう」
「組織?」
ラリエスが片眉を上げた。
「大きな問題には、みんなの協力が必要です。水の問題には北の力、風の問題には東の力、緑や大地の問題なら南の力、大気に関する問題には西の力。どこで何が起きるか分からないからこそ、どこで何が起きても対応できる組織を作る必要があります」
「おもしろい」
ラリエスがニヤリと笑った。
「中央の人間は物作り位しか出来ないですが、それでも出来る事で参加させましょう。他に異論は無いですか?」
ラリエスが周囲を見回す。誰も反対の声は上げなかった。ここまでの話を聞いて、反対など出来る筈も無い。
それを確認して、ラリエスが魔王に視線を向けた。
「だそうですよ。いい加減、貴方も覚悟を決めなさい白」
「…この荷を下ろしても良いのか?」
「当たり前です。言ったでしょ?きっと彼女なら、私も貴方もキャスも纏めて救ってくれる方法を持ち帰る筈だって」
「だが」
なかなか煮えきらない魔王に、太陽がずっと言いたくて仕方無かった事を伝えた。
「これ以上、貴方が1人で苦しむ事は無いんです。大きな問題はみんなで解決しましょう。俺達にも手伝わせてください」
その言葉に魔王が驚いた様に太陽を見た。
「そなたは…」
一瞬眩しい物を見る様な表情を浮かべ、すぐに顔を伏せた。そして一言「わかった」と呟いた。
慌てて太陽がルースを支える。
「ルースさん、大丈夫?」
「君は…?」
「え?」
予想外の事を言われて、一瞬戸惑ったが自分の髪と目が変わった事に思い至った。
「俺セーヤです。ルースさんと離れた後、気づいたらこうなっていて…変ですか?」
「…いや、そんな事ないよ」
首を振ったルースに太陽の心臓がギュッとなった。
ルースが生きている。それだけで、もう太陽は泣きそうだった。こんな話し合いの場でなければ、きっとルースに縋って泣いていた。
「ルースさん、俺治療しますから、休んでください。こんな…酷い状態で…」
腕や身体からの血は止まっていたが、全身服も身体もボロボロだった。とても普通に話し合いに参加出来そうに見えない。
「大丈夫。終わったら休むから」
でも、とそれでも心配そうな太陽にラリエスが声をかけた。
「一応、私も癒しはかけましたよ。貴方が治癒をかけたら暫く目覚めないでしょうから、今は話し合いに参加させた方がいいでしょう。でないと南に不利な条件になってしまうかもしれない」
「そんな…」
「本当に大丈夫だよ。悪いけど、手を貸してもらえる?」
その時、壁際に無言で立ち尽くしていた女騎士キャスが、太陽とルースにスッと近づいて来た。
「私も手伝おう」
一言断って、太陽と反対側からキャスがルースを支えてくれた。2人でサポートしながらルースをソファへ座らせた。
先に座っていた空は席を立ち、獣化してルースの足元へ座った。その様子を向かいに座っていたラリエスが、へえ、と面白そうに見ていた。
席が空いたことで、太陽はそのままルースの隣へ腰掛け、女騎士はルースの手伝いが終わると再び壁際に移動して直立した。
みんなが落ち着いたのを見て、最初に口火を切ったのはラリエスだった。
「そちらのキャスと緑の者には簡単に説明してます。では話を再開しましょう。中央は人間が捨てた土地が多い。特に北寄りは。その一部に瘴気を詰めましょう」
「それは…人間が反発しないか?」
「大丈夫です。私が黙らせます」
魔王の懸念にラリエスがニッコリ微笑んだ。
西の館で、王家を復活させないと言い切ったアキエスを思い起こさせる。今更だが、空とベイティがアキエスをラリエスに似ていると言ったのも納得だ。名前も見た目も性格までソックリだ!
「金なら濃い瘴気も浄化できます。これで残りはどの位ですか?」
「…あと少し残る位だ」
「ならそれは北で出来ますか?」
「…出来る。だが…」
魔王が顔を少し伏せた。
「瘴気を各地で浄化するなら、これから起こりえる自然災害はどうするのだ?この先、長の能力だけでは対処しきぬぞ?」
「だそうですよ、聖女」
急にラリエスがセーヤに話をふってきた。
話の行末を見守っていた太陽は焦った。
「そんな急に言われても、俺がわかるわけ…」
「大丈夫です。この世界を救うだけの知識を貴方は学んで来た筈。だから貴方に私の声は届いた」
「え?」
「答えは貴方の中にある筈です」
目の前のラリエスが自信ありげにニヤリと笑った。まるで太陽が答えられない筈が無い、とでも言う様に自信たっぷりに。
目の前の男は眼帯はしていない。垂れ目の優男だし、あの吊り目の男とは全然違う筈なのに、これまで夢の中で会った勇者と印象が重なる。
俺の中に答えがある。
一旦、太陽は自身を落ち着ける為、目を閉じて深呼吸した。俺の中にあると言うなら、きっとそれは難しいことじゃ無い筈だ。元の世界なら、こんな時どうする?そう考えたら、自ずと答えは出た。
「各地から希望者を集めて組織を作りましょう」
「組織?」
ラリエスが片眉を上げた。
「大きな問題には、みんなの協力が必要です。水の問題には北の力、風の問題には東の力、緑や大地の問題なら南の力、大気に関する問題には西の力。どこで何が起きるか分からないからこそ、どこで何が起きても対応できる組織を作る必要があります」
「おもしろい」
ラリエスがニヤリと笑った。
「中央の人間は物作り位しか出来ないですが、それでも出来る事で参加させましょう。他に異論は無いですか?」
ラリエスが周囲を見回す。誰も反対の声は上げなかった。ここまでの話を聞いて、反対など出来る筈も無い。
それを確認して、ラリエスが魔王に視線を向けた。
「だそうですよ。いい加減、貴方も覚悟を決めなさい白」
「…この荷を下ろしても良いのか?」
「当たり前です。言ったでしょ?きっと彼女なら、私も貴方もキャスも纏めて救ってくれる方法を持ち帰る筈だって」
「だが」
なかなか煮えきらない魔王に、太陽がずっと言いたくて仕方無かった事を伝えた。
「これ以上、貴方が1人で苦しむ事は無いんです。大きな問題はみんなで解決しましょう。俺達にも手伝わせてください」
その言葉に魔王が驚いた様に太陽を見た。
「そなたは…」
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