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第五章 果てなき旅路より戻りし者
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「ワルオリ!セーヤ!よく無事に戻って来たね!」
出迎え1番に鳥族の長が迎えてくれた。
そのまま悪男とセーヤを同時に片腕ずつ抱きしめた。
「姉ちゃん!苦しい!ソラ兄貴とルース兄貴もいるよ!」
「あぁ、そうだったね!」
涙を滲ませながら、長は今度は空とルースを片腕ずつで抱き締めた。
「無事で良かった」
「ふん。当たり前だ」
「……」
空は当然という様に鼻を鳴らし、ルースは不思議そうな顔をしていた。
「ルース。この前は追い出す様な真似をして悪かった。もうアンタとセーヤの仲は邪魔しないから」
「…え?」
「じゃあ、少し休んで落ち着いたら話を聞かせておくれ」
言うだけ言って、長は2人を解放した。
「オレとワルオで話しておく。ルースは少し散策でもして来い。何か思い出すかもしれぬ」
空が悪男を呼んで、長について行った。
援軍メンバーも疲れた~とグッタリしている。エルフや銀狼は少し休もう、と話していて、鳥族は酒盛りしよう、とハシャいでいた。
取り残されたルースは、西の館や周囲を見渡した。この景色は覚えてる。空とココに来て、長を闇堕ちから救うのを手伝った。
でもどうやって解放したのかは覚えてない。金の者がいるなら、きっと彼が闇堕ちから助けたに違いない。
チラッと金の少年を一瞥して、ルースは彼に声をかける事なく、散策の為に歩き出した。
◇◇◇
頂きの見晴らしの良い場所に、小さな石があった。それを静かにルースは見つめていた。
これも覚えてる。殺した魔鳥を埋めた。誰かの言葉で、申し訳ない気持ちになって弔った。でも誰の影響だったのか、わからない。
「ルースさん」
呼ぶ声に振り向くと、金色の髪と金色の瞳を持つ少年がいた。
綺麗な顔立ちで内側から惹きつける様な美しさを纏っていた。そこに金の髪と瞳が加わって、神々しさに直視出来ない。思わず目を逸らした。
そのまま少し歩いて、崖下に目をやる。美しい地層が広がっていた。まだ外は明るい。闇夜にココから同じ景色を見た気がする。
「何か思い出しましたか?」
少年が側に来た。少年はルースの事を名前で呼ぶ。名前を呼び合うほど親しかったなら、何故自分の記憶に彼はいないのだろう。
先程の鳥族の長の言葉通りなら、自分と彼は恋仲という事になる。自分が金の者と恋仲になるなど、ルースには考えられなかった。
「夜…ここで景色を見た気がする」
「本当ですか?」
少年が嬉しそうにルースを見上げてくる。そして、ココから2人で飛び降りて夜の渓谷を冒険した話を楽しそうに語ってくれた。
飛び降りるのが怖かった、といえば本当に身体を縮こませ、夜景が綺麗だったと言えば、目をキラキラさせる。先程までの落ち着いた雰囲気と違い、2人っきりの彼はとても表情豊かだった。
「その後、東の森の小屋で一緒に数日過ごしたんです。あ、俺達が会ったのもその近くで…」
今度は2人の出会いの話になった。必死にルースと出会った頃の話をしてくれた。
彼を見ていると、この少年は本当に自分の事が好きなのだと伝わってきた。
出来る事なら、自分も思い出してあげたい。それなのにー。
ルースの中には別に思い浮かぶ姿があった。
氷の部屋で目覚め、隣の部屋へ顔を出した時。ルースの目を引いたのは、駆け寄って来たこの少年では無かった。
ソファに1人座る魔王の容姿に目が釘付けになった。
その後も、彼が気になって仕方無かった。だから、これが何なのか知りたくて北に残ろうと思ったのにー。
「ルースさん」
呼ばれて少年に視線を向ける。少年は泣きそうな顔をしていた。
「どうして、ずっと遠くを見てるんですか?もしかして魔王に会いたいんですか?」
ーーー
年内は今日が最後の更新です。
どうぞ良いお年をお迎えください。
出迎え1番に鳥族の長が迎えてくれた。
そのまま悪男とセーヤを同時に片腕ずつ抱きしめた。
「姉ちゃん!苦しい!ソラ兄貴とルース兄貴もいるよ!」
「あぁ、そうだったね!」
涙を滲ませながら、長は今度は空とルースを片腕ずつで抱き締めた。
「無事で良かった」
「ふん。当たり前だ」
「……」
空は当然という様に鼻を鳴らし、ルースは不思議そうな顔をしていた。
「ルース。この前は追い出す様な真似をして悪かった。もうアンタとセーヤの仲は邪魔しないから」
「…え?」
「じゃあ、少し休んで落ち着いたら話を聞かせておくれ」
言うだけ言って、長は2人を解放した。
「オレとワルオで話しておく。ルースは少し散策でもして来い。何か思い出すかもしれぬ」
空が悪男を呼んで、長について行った。
援軍メンバーも疲れた~とグッタリしている。エルフや銀狼は少し休もう、と話していて、鳥族は酒盛りしよう、とハシャいでいた。
取り残されたルースは、西の館や周囲を見渡した。この景色は覚えてる。空とココに来て、長を闇堕ちから救うのを手伝った。
でもどうやって解放したのかは覚えてない。金の者がいるなら、きっと彼が闇堕ちから助けたに違いない。
チラッと金の少年を一瞥して、ルースは彼に声をかける事なく、散策の為に歩き出した。
◇◇◇
頂きの見晴らしの良い場所に、小さな石があった。それを静かにルースは見つめていた。
これも覚えてる。殺した魔鳥を埋めた。誰かの言葉で、申し訳ない気持ちになって弔った。でも誰の影響だったのか、わからない。
「ルースさん」
呼ぶ声に振り向くと、金色の髪と金色の瞳を持つ少年がいた。
綺麗な顔立ちで内側から惹きつける様な美しさを纏っていた。そこに金の髪と瞳が加わって、神々しさに直視出来ない。思わず目を逸らした。
そのまま少し歩いて、崖下に目をやる。美しい地層が広がっていた。まだ外は明るい。闇夜にココから同じ景色を見た気がする。
「何か思い出しましたか?」
少年が側に来た。少年はルースの事を名前で呼ぶ。名前を呼び合うほど親しかったなら、何故自分の記憶に彼はいないのだろう。
先程の鳥族の長の言葉通りなら、自分と彼は恋仲という事になる。自分が金の者と恋仲になるなど、ルースには考えられなかった。
「夜…ここで景色を見た気がする」
「本当ですか?」
少年が嬉しそうにルースを見上げてくる。そして、ココから2人で飛び降りて夜の渓谷を冒険した話を楽しそうに語ってくれた。
飛び降りるのが怖かった、といえば本当に身体を縮こませ、夜景が綺麗だったと言えば、目をキラキラさせる。先程までの落ち着いた雰囲気と違い、2人っきりの彼はとても表情豊かだった。
「その後、東の森の小屋で一緒に数日過ごしたんです。あ、俺達が会ったのもその近くで…」
今度は2人の出会いの話になった。必死にルースと出会った頃の話をしてくれた。
彼を見ていると、この少年は本当に自分の事が好きなのだと伝わってきた。
出来る事なら、自分も思い出してあげたい。それなのにー。
ルースの中には別に思い浮かぶ姿があった。
氷の部屋で目覚め、隣の部屋へ顔を出した時。ルースの目を引いたのは、駆け寄って来たこの少年では無かった。
ソファに1人座る魔王の容姿に目が釘付けになった。
その後も、彼が気になって仕方無かった。だから、これが何なのか知りたくて北に残ろうと思ったのにー。
「ルースさん」
呼ばれて少年に視線を向ける。少年は泣きそうな顔をしていた。
「どうして、ずっと遠くを見てるんですか?もしかして魔王に会いたいんですか?」
ーーー
年内は今日が最後の更新です。
どうぞ良いお年をお迎えください。
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