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第五章 果てなき旅路より戻りし者
36 the others 最終話
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音も無くソレはやって来た。
一瞬、目の前の光景が歪んだかと思うと、高熱の空気が男達の全身を包んだ。
「ぐあぁぁぁ!」
「何だこれ…は」
「熱い!熱い!助けてくれ!」
いきなりの苦痛に男達は膝を着き苦しみ出す。何が起きたか分からず、人々は壇上に目を向けた。
金色を纏った少年は、怒りに表情を歪め全身の空気をユラリと揺らめかせていた。
屋内の室温も先程より高くなっている。
『どうだ熱いか?それがお前等が偽物と疑った金の炎の熱だ』
少年の声が広間に響いた。その声自体に力があるかの様に人々の耳に届いた。
ユラリ、と再び少年の周囲の空気が歪む。
男達を取り巻いていた熱が一気に霧散した。解放された後も、男達は痛みや恐怖心から、怯えたまま壇上の少年にひれ伏した。
この世界で熱や火に関わる能力は金の者にしか扱えない。
自分達が侮辱した相手は間違いなく金の能力者。それを男達は身をもって理解したのだ。
「セーヤ?どうしたの?」
ルースが太陽に近づこうとして…立ち止まった。太陽の周りに高温の熱波が揺らめき、とてもじゃないが近寄れる状況では無かったからだ。
そんなルースを振り向く事なく、太陽は目の前の群衆に視線を向けている。
その姿は、まるで人々の注目を浴びるのに慣れているかの様に堂々としていた。
『この世界はやがて瘴気によって滅びる。何故か分かるか?』
太陽の言葉に、声を上げる者はいなかった。
これまでの太陽や長達の話で、何となく気づいてはいる。だが…ソレを口にするのは恐ろしい。
誰も声を上げない静寂の中、太陽は正解を口にした。
『女神がこの世界を見捨てて、壊そうとしているからだ』
そんな、と誰の声が虚しく広間に響いた。
『古来より女神はこの世界を愛でて来た。我々が鉢や庭で花を愛でる様に。だが間違えた手入れを続けられた結果。花は病んだ』
群衆は無言で耳を傾けている。
金の者の言葉に救いはあるのか?この世界に希望はあるのか?
人々は固唾を飲んで金の者の次の言葉を待つ。
『我々が行おうとしているのは、病んだ原因を取り除き、正しい手入れをし、花を健康に戻そうとする行為だ』
そこで太陽は一旦言葉を切り、再び周囲を見渡して…口を開いた。
『この苦難を乗り越えれば、今度こそ我々はこの瘴気の恐怖から逃れられるだろう』
おお、と人々の顔が明るくなった。
もう反対の声を上げる者はいなかった。
◇◇◇
演説後、一行は元の打ち合わせをしていた部屋へ戻って来た。
「君は…誰?」
ルースの声に太陽が振り向いた。
太陽と容姿は同じなのに、今受ける印象は全然違っていた。
普段が控えめで謙虚な印象だとしたら、目の前の彼は威厳を感じさせる力強さがあった。
『師匠に…ミドにそっくり』
「っ」
ルースの頬に手を添えて顔を寄せて来た太陽に、ルースがとっさに顔を背けた。太陽と同じ顔なのに、目の前の彼は別人だと感じたからだ。
『どうして避けるの?私は彼と同じ存在なのに』
「…君はセーヤじゃない。セーヤはどこ?」
『今は私の中で寝てる。反対派を言いくるめるにはあの子は優しすぎる』
空がルースを庇う様に、太陽とルースの間に割り込んだ。
「お前は…誰だ?」
そんな空に太陽がつまらなさな表情を浮かべる。
『私を忘れた?ルフトゥ?』
その言葉に空とベイティが驚愕した。
それはかつて、最後の王女が当時お気に入りの空に名付けた名前だったからだ。
その名を知るのは、今この中では当時を生きていた空とベイティ位しかいない。
「お前…王女か?何故?」
空の疑問に太陽の姿をしたその人物は笑った。まるで花が咲く様に、艶やかに。いつもの控えめな太陽はどこにもいなかった。
『元々この魂の主人格は私なの。だから私が彼に譲らない限り彼は目覚めないわ』
◇◇◇
名もない世界の秘密は暴かれた。
それは『女神の箱庭』
自分の好き放題にいじり、思い通りにならなければ荒らし、気に食わなければ摘み刈りとる。
残虐な主人にとうとう花達は自ら再生する道を選んだ。
少しずつ壊されていく『女神の箱庭』。
最後に壊すのは誰か。
その日まで、もうすぐー。
第五章 果てなき旅路より戻りし者。完。
ーーー
第六章は2月中旬に公開予定です。
そろそろ物語も終盤ですが、一時的に主人公不在になります。(意識を乗っ取られた為)
★お知らせ★
『たっくんとコウちゃん【大学生編】』の番外編を本日から開始しました。大学生編と同じスレッドに追加しています。
現代・幼馴染ものです。お口直しに、よければそちらもお読み頂けたら嬉しいです。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
一瞬、目の前の光景が歪んだかと思うと、高熱の空気が男達の全身を包んだ。
「ぐあぁぁぁ!」
「何だこれ…は」
「熱い!熱い!助けてくれ!」
いきなりの苦痛に男達は膝を着き苦しみ出す。何が起きたか分からず、人々は壇上に目を向けた。
金色を纏った少年は、怒りに表情を歪め全身の空気をユラリと揺らめかせていた。
屋内の室温も先程より高くなっている。
『どうだ熱いか?それがお前等が偽物と疑った金の炎の熱だ』
少年の声が広間に響いた。その声自体に力があるかの様に人々の耳に届いた。
ユラリ、と再び少年の周囲の空気が歪む。
男達を取り巻いていた熱が一気に霧散した。解放された後も、男達は痛みや恐怖心から、怯えたまま壇上の少年にひれ伏した。
この世界で熱や火に関わる能力は金の者にしか扱えない。
自分達が侮辱した相手は間違いなく金の能力者。それを男達は身をもって理解したのだ。
「セーヤ?どうしたの?」
ルースが太陽に近づこうとして…立ち止まった。太陽の周りに高温の熱波が揺らめき、とてもじゃないが近寄れる状況では無かったからだ。
そんなルースを振り向く事なく、太陽は目の前の群衆に視線を向けている。
その姿は、まるで人々の注目を浴びるのに慣れているかの様に堂々としていた。
『この世界はやがて瘴気によって滅びる。何故か分かるか?』
太陽の言葉に、声を上げる者はいなかった。
これまでの太陽や長達の話で、何となく気づいてはいる。だが…ソレを口にするのは恐ろしい。
誰も声を上げない静寂の中、太陽は正解を口にした。
『女神がこの世界を見捨てて、壊そうとしているからだ』
そんな、と誰の声が虚しく広間に響いた。
『古来より女神はこの世界を愛でて来た。我々が鉢や庭で花を愛でる様に。だが間違えた手入れを続けられた結果。花は病んだ』
群衆は無言で耳を傾けている。
金の者の言葉に救いはあるのか?この世界に希望はあるのか?
人々は固唾を飲んで金の者の次の言葉を待つ。
『我々が行おうとしているのは、病んだ原因を取り除き、正しい手入れをし、花を健康に戻そうとする行為だ』
そこで太陽は一旦言葉を切り、再び周囲を見渡して…口を開いた。
『この苦難を乗り越えれば、今度こそ我々はこの瘴気の恐怖から逃れられるだろう』
おお、と人々の顔が明るくなった。
もう反対の声を上げる者はいなかった。
◇◇◇
演説後、一行は元の打ち合わせをしていた部屋へ戻って来た。
「君は…誰?」
ルースの声に太陽が振り向いた。
太陽と容姿は同じなのに、今受ける印象は全然違っていた。
普段が控えめで謙虚な印象だとしたら、目の前の彼は威厳を感じさせる力強さがあった。
『師匠に…ミドにそっくり』
「っ」
ルースの頬に手を添えて顔を寄せて来た太陽に、ルースがとっさに顔を背けた。太陽と同じ顔なのに、目の前の彼は別人だと感じたからだ。
『どうして避けるの?私は彼と同じ存在なのに』
「…君はセーヤじゃない。セーヤはどこ?」
『今は私の中で寝てる。反対派を言いくるめるにはあの子は優しすぎる』
空がルースを庇う様に、太陽とルースの間に割り込んだ。
「お前は…誰だ?」
そんな空に太陽がつまらなさな表情を浮かべる。
『私を忘れた?ルフトゥ?』
その言葉に空とベイティが驚愕した。
それはかつて、最後の王女が当時お気に入りの空に名付けた名前だったからだ。
その名を知るのは、今この中では当時を生きていた空とベイティ位しかいない。
「お前…王女か?何故?」
空の疑問に太陽の姿をしたその人物は笑った。まるで花が咲く様に、艶やかに。いつもの控えめな太陽はどこにもいなかった。
『元々この魂の主人格は私なの。だから私が彼に譲らない限り彼は目覚めないわ』
◇◇◇
名もない世界の秘密は暴かれた。
それは『女神の箱庭』
自分の好き放題にいじり、思い通りにならなければ荒らし、気に食わなければ摘み刈りとる。
残虐な主人にとうとう花達は自ら再生する道を選んだ。
少しずつ壊されていく『女神の箱庭』。
最後に壊すのは誰か。
その日まで、もうすぐー。
第五章 果てなき旅路より戻りし者。完。
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そろそろ物語も終盤ですが、一時的に主人公不在になります。(意識を乗っ取られた為)
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ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
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