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第六章 運命を壊す者
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翌日、鳥族達の背に乗り王女達一行は西に向かった。今回は勇者ラリエスも魔王とキャスも一緒だった。
魔王の瘴気を可能な限り抑える為、王女、勇者、魔王は同じ鳥族に同乗した。キャスは代わりにルースや空が護衛して、北の大地を飛ぶ。
「緑と青!キャスに触ったら許しませんよ」
離れた所からラリエスが威嚇してくる。ずっと見つめてくる圧が暑苦しい。
「え…と、聞いてもいいかな?」
「何だ?」
「彼の…どこがいいの?」
ラリエスのあまりの束縛ぶりにルースがキャスに尋ねた。彼の束縛はうっとうしいレベルだ。
「…私は元々冒険者なので、そこらの男には簡単には負けない」
「まあ、そうだろうね」
王女の護衛につく位だし。
「私が勝てない相手が唯一彼だった」
「まぁ、そうだろうね」
勇者は1番強い者が選ばれる訳だし。
「私なんか赤子をひねる様だった」
「…え~と、お似合いだね」
「ありがとう」
キャスにラリエスのどこに惹かれたのか聞いてもサッパリわからなかった。どうやら彼女は自分より強い男が好きなのだろう、という事はわかった。
「おい!キャスが赤くなってるじゃないか!緑!お前何をした!」
隣を並走して飛んでるラリエスが再び威嚇してきた。言葉遣いまで変わって、鬱陶しさが増している。
しまった。彼女に関わるべきじゃ無かった。ルースは後悔した。
「君と彼女がとてもお似合いだねって言ったんだよ」
「何だと?当然だが、緑よ!お前はよくわかってますね!特別に私の事を名前で呼ぶ事を許しましょう!
「…………どうも」
ルースはラリエスの名前呼びをゲットした。
今回の北の魔物は始めから強い瘴気を帯びていた。攻撃も真っ黒な瘴気を帯び、不気味な奇声を上げていた。
それは、まるで太陽達一行に怒り狂っている様にも見えた。
「私達が生きてるとわかって、あのクソ女が怒ってるんでしょう」
ラリエスが背中に背負った剣を一振りすると、強く輝く金の光が魔物達を一閃した。断末魔を上げながら多くの黒い魔物達が身体を引き裂かれ、消えていった。
その攻撃に王女がラリエスを諌める。
「ラリエス、全てを倒す必要は無いわ」
「アレは闇堕ちした魔物です。既に死んだも同然」
「それでも…元に戻るかもしれないじゃない」
「相変わらずですね」
ラリエスは肩を竦めると剣をしまった。少なくとも今の一太刀で、周囲の魔物は瘴気もろともいなくなった。
そのまま一行は西へ入った。
◇◇◇
西の砂漠には、既に長を含む数人の鳥族達が人型の状態で待機していた。
昨日王女が北へ飛び出した時に、ルース達が翌日に砂漠で落ち合う約束をしていた為だ。
互いに上空で落ち合いながら、魔王が鳥族の長に礼を述べた。
「赤よ。この度の協力に感謝する」
「魔王様…いえ、精霊王様。鳥族の今があるのは、昔アンタが守ってくれたお陰。今度はアタイらが恩を返す番です」
周囲の鳥族達も盛り上がっている。まるでお祭り騒ぎだ。その様子を見ていた魔王が、フッと口元を上げた。
「我は…赤のその明るさが好きなのだ」
「魔王様!」
美形な魔王の微笑みに何名かの鳥族が心を鷲掴みにされた。
そして、広い砂漠の上に魔王は1人降り立った。
魔王が降りたった場所が少し瘴気を帯びた。
ここに今から魔王の抱える瘴気の約3割を移すのだ。
「行くぞ」
魔王の足元から禍々しい気配が砂漠に染み込み、広がっていく。美しかった砂の海が、徐々に黒い気配に変わり、広大な範囲に広がっていった。
「ラリエス」
「任せてください」
王女の合図で、王女と勇者の髪と瞳が輝き出す。並んだ2人の前方に巨大な光の魔法陣が現れた。
古代の言葉で書かれているのか、周囲の者には読み解け無かった。王女と勇者の口から、歌の様な呪文の様な言葉が流れ出てくる。
魔法陣の周囲が強く金色に輝き、内側に向かって線が走ってゆく。その光が全ての魔法陣を走った時、魔法陣がゆっくりと、瘴気に支配された砂漠に落ちていく。
魔法陣が完全に砂漠に落ちる前に、魔王の身体が黒いシルエットに変化した。
前にルースを襲った時とも違う。背中に半透明な羽根を持った、優美な姿だった。そのままふわりと宙に浮かび上がる。
それと行き違いに、光の魔法陣が砂漠に落ちた。
魔王の瘴気を可能な限り抑える為、王女、勇者、魔王は同じ鳥族に同乗した。キャスは代わりにルースや空が護衛して、北の大地を飛ぶ。
「緑と青!キャスに触ったら許しませんよ」
離れた所からラリエスが威嚇してくる。ずっと見つめてくる圧が暑苦しい。
「え…と、聞いてもいいかな?」
「何だ?」
「彼の…どこがいいの?」
ラリエスのあまりの束縛ぶりにルースがキャスに尋ねた。彼の束縛はうっとうしいレベルだ。
「…私は元々冒険者なので、そこらの男には簡単には負けない」
「まあ、そうだろうね」
王女の護衛につく位だし。
「私が勝てない相手が唯一彼だった」
「まぁ、そうだろうね」
勇者は1番強い者が選ばれる訳だし。
「私なんか赤子をひねる様だった」
「…え~と、お似合いだね」
「ありがとう」
キャスにラリエスのどこに惹かれたのか聞いてもサッパリわからなかった。どうやら彼女は自分より強い男が好きなのだろう、という事はわかった。
「おい!キャスが赤くなってるじゃないか!緑!お前何をした!」
隣を並走して飛んでるラリエスが再び威嚇してきた。言葉遣いまで変わって、鬱陶しさが増している。
しまった。彼女に関わるべきじゃ無かった。ルースは後悔した。
「君と彼女がとてもお似合いだねって言ったんだよ」
「何だと?当然だが、緑よ!お前はよくわかってますね!特別に私の事を名前で呼ぶ事を許しましょう!
「…………どうも」
ルースはラリエスの名前呼びをゲットした。
今回の北の魔物は始めから強い瘴気を帯びていた。攻撃も真っ黒な瘴気を帯び、不気味な奇声を上げていた。
それは、まるで太陽達一行に怒り狂っている様にも見えた。
「私達が生きてるとわかって、あのクソ女が怒ってるんでしょう」
ラリエスが背中に背負った剣を一振りすると、強く輝く金の光が魔物達を一閃した。断末魔を上げながら多くの黒い魔物達が身体を引き裂かれ、消えていった。
その攻撃に王女がラリエスを諌める。
「ラリエス、全てを倒す必要は無いわ」
「アレは闇堕ちした魔物です。既に死んだも同然」
「それでも…元に戻るかもしれないじゃない」
「相変わらずですね」
ラリエスは肩を竦めると剣をしまった。少なくとも今の一太刀で、周囲の魔物は瘴気もろともいなくなった。
そのまま一行は西へ入った。
◇◇◇
西の砂漠には、既に長を含む数人の鳥族達が人型の状態で待機していた。
昨日王女が北へ飛び出した時に、ルース達が翌日に砂漠で落ち合う約束をしていた為だ。
互いに上空で落ち合いながら、魔王が鳥族の長に礼を述べた。
「赤よ。この度の協力に感謝する」
「魔王様…いえ、精霊王様。鳥族の今があるのは、昔アンタが守ってくれたお陰。今度はアタイらが恩を返す番です」
周囲の鳥族達も盛り上がっている。まるでお祭り騒ぎだ。その様子を見ていた魔王が、フッと口元を上げた。
「我は…赤のその明るさが好きなのだ」
「魔王様!」
美形な魔王の微笑みに何名かの鳥族が心を鷲掴みにされた。
そして、広い砂漠の上に魔王は1人降り立った。
魔王が降りたった場所が少し瘴気を帯びた。
ここに今から魔王の抱える瘴気の約3割を移すのだ。
「行くぞ」
魔王の足元から禍々しい気配が砂漠に染み込み、広がっていく。美しかった砂の海が、徐々に黒い気配に変わり、広大な範囲に広がっていった。
「ラリエス」
「任せてください」
王女の合図で、王女と勇者の髪と瞳が輝き出す。並んだ2人の前方に巨大な光の魔法陣が現れた。
古代の言葉で書かれているのか、周囲の者には読み解け無かった。王女と勇者の口から、歌の様な呪文の様な言葉が流れ出てくる。
魔法陣の周囲が強く金色に輝き、内側に向かって線が走ってゆく。その光が全ての魔法陣を走った時、魔法陣がゆっくりと、瘴気に支配された砂漠に落ちていく。
魔法陣が完全に砂漠に落ちる前に、魔王の身体が黒いシルエットに変化した。
前にルースを襲った時とも違う。背中に半透明な羽根を持った、優美な姿だった。そのままふわりと宙に浮かび上がる。
それと行き違いに、光の魔法陣が砂漠に落ちた。
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