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第六章 運命を壊す者
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中央の地の北寄りの場所。
そこに魔王の中の2割を封印する。
人間達の土地で考えると約5分の1にもなる。決して小さくは無い犠牲だ。
だが、哀しい事に。それだけの土地を奪われても、人間達は全く困る事も無いのだ。それほどに人間達は人口が激減していた。女神によって。
ずっと魔王と共にあり世界の行末を見ていたラリエスと違い、その事実を初めて知ったキャスは大きな衝撃を受けていた。
側にラリエスが寄り添い慰めている。
「キャス…私の子を…」
「白よ。あの阿保はもうほって置いて、サッサと始めろ」
ラリエスに見切りをつけた空が魔王を急かした。魔王は頷き、ラリエスを一瞥して歩き出した。
◇◇◇
じわじわと魔王の足元から広がる闇は、その辺り一帯の荒野を黒く染めた。
その様子を一向は無言で見つめていた。
空と悪男がチラリとルースに視線を向けた。彼は特に変わった様子も無く、魔王の方を見ていた。
ルースは覚えていないが、この地はルースが襲われた場所だった。この土地が封印されればルースは記憶を取り戻すだろうか、と密かに空と悪男は期待していた。
やがて光の封印が始まった。
王女と勇者で作った光の魔法陣が、かつて荒野だった場所に落ちていき、まるで大地に刻印されたかの様に刻まれて。光を放った。
続けて、王女の身体が金色に包まれた。
この地は元々聖女が結果を張るべき場所。王女の中に宿る金の力が、身体から光の粒となって広がっていく。
まるで先日、西に表れた光の祝福の様だった。だが、今回その光はある程度宙に浮くと、大気に溶ける様にして、消えた。
特に言葉を発しないが、王女の表情は青ざめていた。続けての光の封印に、結果の強化に、身体の負担は相当の物だろう。
ふらり、と王女がよろけた。
それをルースが抱き止めた。
王女の体調が良くないのを察知して、近くで様子を見守っていたのだ。
「…離して」
「運ぶよ」
泣きそうな表情を浮かべた王女をルースが横抱きにしようとして…それを魔王が止めた。
「我が運ぼう」
驚くルースと王女を無視して、魔王が王女を横抱きにした。今度は王女は嫌だとは言わなかった。そのままされるがまま、魔王の胸元に顔を埋める。
「コレの事は我に任せるがいい」
魔王は王女とラリエスと共に、鳥に乗って先に飛びだってしまった。
呆然するルースに空が「行くぞ」と声をかけて来た。
その後ルースは空やキャスと3人で悪男に乗り込み、再び北へ向かった。
「ルースよ。何か記憶に変化は無いか?」
「記憶?いや、特に何も」
ルースの言葉に、そうかと空が返事したが、内心は空も悪男もひそかに残念に思っていた。この地で無くした物なら何かキッカケがあればもしやと思ったのだが。
また一方、大人しく乗っているキャスも複雑な気持ちを抱えていた。
この次の封印が終われば王女の人格は無くなるらしい。それが彼女の気分を重くしていた。
彼女の中では時が止まっていたので、王女を護衛していたのは最近の事だ。
それが目覚めてみれば、この世界を救う為に異世界へ旅に出た王女は、まさかの男になってこの世界に帰って来た。しかも当時とは別人格で。
出来る事なら。人の良さそうな彼の人格も、自分の敬愛する王女の人格も消えないで欲しい。そう願わずにはいられなかった。
北の封印場所は魔王がハッキリ言及しなかった為、明かされていなかった。そのため、前方を行く魔王達を追いかけると、どうやら城の方へ向かっている様だった。
途中追って来る北の魔物達は、相変わらずラリエスが一掃していた。力の差がありすぎて一瞬で魔物達が消し炭になっている。
その内、城の前に皆が降り立った。
外からの化け物を避ける為、城の中に入る様に促された。王女も含め城に入る様に言われた為、今外に出ているのは魔王とラリエスのみだった。
意外な組み合わせに、王女やルース達も不思議そうな表情を浮かべている。王女にも北の封印場所は明かされていなかった。
「本当にいいのだな?」
「だいぶ減ってますからね、まぁ大丈夫です。でも長くは持ちませんよ」
不吉なやり取りに、王女とキャスが顔を見合わせる。彼らは何をやろうとしているのかー。
「ではゆくぞ」
魔王がラリエスの肩に手を置き、その目を閉じた。身体からユラリと黒いモヤが立ち上がる。今まで魔王の中に閉じ込めていた残りの瘴気だ。それが魔王の手を通して、ラリエスに移って行く。
「そんな!ラリエス!」
キャスが悲鳴を上げた。魔王から立ち昇った黒い瘴気がラリエスに入り込んで行く。まるでそこが封印場所であるかの様にー。
キャスの声に答える事も無く、ラリエスは目を閉じ、黙ったままその瘴気を受け入れた。
そして、数分後。
北の大地には金の髪を持つ勇者と。
白い髪と水色の瞳を持つ妖精王が立っていた。
そこに魔王の中の2割を封印する。
人間達の土地で考えると約5分の1にもなる。決して小さくは無い犠牲だ。
だが、哀しい事に。それだけの土地を奪われても、人間達は全く困る事も無いのだ。それほどに人間達は人口が激減していた。女神によって。
ずっと魔王と共にあり世界の行末を見ていたラリエスと違い、その事実を初めて知ったキャスは大きな衝撃を受けていた。
側にラリエスが寄り添い慰めている。
「キャス…私の子を…」
「白よ。あの阿保はもうほって置いて、サッサと始めろ」
ラリエスに見切りをつけた空が魔王を急かした。魔王は頷き、ラリエスを一瞥して歩き出した。
◇◇◇
じわじわと魔王の足元から広がる闇は、その辺り一帯の荒野を黒く染めた。
その様子を一向は無言で見つめていた。
空と悪男がチラリとルースに視線を向けた。彼は特に変わった様子も無く、魔王の方を見ていた。
ルースは覚えていないが、この地はルースが襲われた場所だった。この土地が封印されればルースは記憶を取り戻すだろうか、と密かに空と悪男は期待していた。
やがて光の封印が始まった。
王女と勇者で作った光の魔法陣が、かつて荒野だった場所に落ちていき、まるで大地に刻印されたかの様に刻まれて。光を放った。
続けて、王女の身体が金色に包まれた。
この地は元々聖女が結果を張るべき場所。王女の中に宿る金の力が、身体から光の粒となって広がっていく。
まるで先日、西に表れた光の祝福の様だった。だが、今回その光はある程度宙に浮くと、大気に溶ける様にして、消えた。
特に言葉を発しないが、王女の表情は青ざめていた。続けての光の封印に、結果の強化に、身体の負担は相当の物だろう。
ふらり、と王女がよろけた。
それをルースが抱き止めた。
王女の体調が良くないのを察知して、近くで様子を見守っていたのだ。
「…離して」
「運ぶよ」
泣きそうな表情を浮かべた王女をルースが横抱きにしようとして…それを魔王が止めた。
「我が運ぼう」
驚くルースと王女を無視して、魔王が王女を横抱きにした。今度は王女は嫌だとは言わなかった。そのままされるがまま、魔王の胸元に顔を埋める。
「コレの事は我に任せるがいい」
魔王は王女とラリエスと共に、鳥に乗って先に飛びだってしまった。
呆然するルースに空が「行くぞ」と声をかけて来た。
その後ルースは空やキャスと3人で悪男に乗り込み、再び北へ向かった。
「ルースよ。何か記憶に変化は無いか?」
「記憶?いや、特に何も」
ルースの言葉に、そうかと空が返事したが、内心は空も悪男もひそかに残念に思っていた。この地で無くした物なら何かキッカケがあればもしやと思ったのだが。
また一方、大人しく乗っているキャスも複雑な気持ちを抱えていた。
この次の封印が終われば王女の人格は無くなるらしい。それが彼女の気分を重くしていた。
彼女の中では時が止まっていたので、王女を護衛していたのは最近の事だ。
それが目覚めてみれば、この世界を救う為に異世界へ旅に出た王女は、まさかの男になってこの世界に帰って来た。しかも当時とは別人格で。
出来る事なら。人の良さそうな彼の人格も、自分の敬愛する王女の人格も消えないで欲しい。そう願わずにはいられなかった。
北の封印場所は魔王がハッキリ言及しなかった為、明かされていなかった。そのため、前方を行く魔王達を追いかけると、どうやら城の方へ向かっている様だった。
途中追って来る北の魔物達は、相変わらずラリエスが一掃していた。力の差がありすぎて一瞬で魔物達が消し炭になっている。
その内、城の前に皆が降り立った。
外からの化け物を避ける為、城の中に入る様に促された。王女も含め城に入る様に言われた為、今外に出ているのは魔王とラリエスのみだった。
意外な組み合わせに、王女やルース達も不思議そうな表情を浮かべている。王女にも北の封印場所は明かされていなかった。
「本当にいいのだな?」
「だいぶ減ってますからね、まぁ大丈夫です。でも長くは持ちませんよ」
不吉なやり取りに、王女とキャスが顔を見合わせる。彼らは何をやろうとしているのかー。
「ではゆくぞ」
魔王がラリエスの肩に手を置き、その目を閉じた。身体からユラリと黒いモヤが立ち上がる。今まで魔王の中に閉じ込めていた残りの瘴気だ。それが魔王の手を通して、ラリエスに移って行く。
「そんな!ラリエス!」
キャスが悲鳴を上げた。魔王から立ち昇った黒い瘴気がラリエスに入り込んで行く。まるでそこが封印場所であるかの様にー。
キャスの声に答える事も無く、ラリエスは目を閉じ、黙ったままその瘴気を受け入れた。
そして、数分後。
北の大地には金の髪を持つ勇者と。
白い髪と水色の瞳を持つ妖精王が立っていた。
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