【完結】壊された女神の箱庭ー姫と呼ばれていきなり異世界に連れ去られましたー

秋空花林

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第六章 運命を壊す者

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「すげー!初めて見た!」
「イエみたい!」

 ルースが作り出した緑の物体に、悪男とショーキは興奮した。

 ルースの足元から広がった緑の光から飛び出た植物は、あっという間に太陽とルースの2人を覆い隠してしまった。

 2人の姿が見えなくなっても、どんどん緑は広がり、ちょっとした部屋のサイズ程度まで広がって止まった。

「これ何?」
「タベレル?」

 離れて見ていた小鳥のショーキが、パクっと植物に噛み付いて、カタイッと叫んで雪の上に落っこちた。

「それはエルフ族の秘術だ」

 呆れた表情で空は雪の中に落っこちて埋もれた悪男を咥えて助け出した。パタパタ飛んで、空の頭に移動する。

「タスカッタ!」
「秘術?何それ?」
「エルフが伴侶の義を行う時に展開する緑の要塞だな。中は防音で、外からの攻撃を決して通さん」
「伴侶のって…」

 何をする場所か思い当たった悪男が、ちょっと照れた。中身が子供のショーキはピィ?と不思議そうだ。

「じゃあ、今頃2人は、その」
「まぁ、そういう事だろうな。やっとセーヤが目覚めて再会出来たんだ。ゆっくりさせてやれ」

 言いながら空は辺りを窺いながら歩き出す。あの緑の要塞はどんな攻撃も通じないから大丈夫だと思うが、念の為周囲を確認してから城に戻るつもりだ。

「なぁ、空兄貴はセーヤの事いいのか?」
「どういう意味だ?」
「セーヤの恋人狙ってたんだろ?」

 東の洞で銀狼の少年が確かそう言ってた筈だ。それを聞いてから悪男は密かに気にしていた。空がずっと1人片想いしてるのではないかと。

「ふむ。まぁ、あわよくばだな」
「あわよくば?」
「ヨクバ?」

 クンクンと、空は周囲の匂いを嗅ぎながら歩く。

「オレはすでに番と死に別れてるからな。セーヤの番にはなれん」
「え?そうなの?」
「ガソルは孫だ」
「ええ!」
「ピィ?」

 衝撃的な事実に悪男がピョンと跳ねた。太陽と同じ位の驚き様だが、その理由は太陽よりも深刻だった。

 通常この世界では番に死なれた場合、連れて行かれる様にもう片方もすぐに死んでしまうからだ。

「もう200年も前の話だ」
「200年!」
「スゴイ」

 鳥族の寿命は200年位とされている。ちなみに悪男はまだ18歳で、鳥族の中でもまだまだ子供扱いだ。

「オレは聖女の祝福を受けたから寿命が延びたんだ」

 いつかまた聖女がこの世界に誕生した時、王女の代わりにその者を守ると決めてずっと生きて来た。それを番にも言っていたせいか、番が死んだ後も、空を迎えには来なかった。

「きっとオレが役目を果たして自分の元へ来るのを待ってる筈だ」
「そうなんだ」

 空の話に耳を傾けて、ちょっと感動していた悪男が、途中で「ん?」と首を傾げた。

「じゃあ何でセーヤの恋人になるって言ったんだ?」
「セーヤは美人だし男だからな。番に言い訳出来る」
「空兄貴、最低!」
「イタッ」

 大事な友人に対しての最低発言に、悪男が怒って空の頭をツツいた。
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