【完結】壊された女神の箱庭ー姫と呼ばれていきなり異世界に連れ去られましたー

秋空花林

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第六章 運命を壊す者

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 壇上から周囲を見回せば、群衆の中にガソルやベイティ、ユナがいた。

 上空には鳥族の長もいる。

 自分の側にはラリエスとキャス。

 儀式台の下には、ルース、空、悪男、妖精王もいた。

 みんなが見守ってくれている。この世界をこれからも守る為、力を貸してくれている。そんな気がした。

 この世界に名付ける名は、わかりやすく、誰もが覚えやすい名前にして欲しい。そう妖精王から要望されていた。その名を皆が口にし、語り継ぐ事で、その効力は半永久になるからだそうだ。

「ふぅ」

 深呼吸する。
 
 太陽はこの国の言葉や単語が分からない。だから自分がしっくり来る言葉にした。その方が気持ちが入るから。

 お腹の中から熱が生じるのがわかる。これは怒りの炎。アキエスは魔王や瘴気への怒りだと言っていたが正確には悪への怒りだ。

 王女やラリエス達が生きていた時代なら、魔王や瘴気と聞けば、それは悪だと決めつけていただろう。そしてすぐに金の能力は開花していた。

 でも異世界から召喚され違う価値観を持つ太陽は、魔王や瘴気を決めつけ無かった。

 みんなから話を聞いて、自分の目で見て、少しずつ真実を確かめていった。

 だからごうを煮やした女神が、強制的に魔王を憎ませた。それがあの惨劇。だから太陽は絶対に女神を許さない。

 女神がこの世界をどうしたかったのかはわからない。ただ言える事は、女神がかつて愛したこの世界は彼女の歪んだ愛情で破滅に進んだという事だ。

 だから今、その歪みから世界を救うのが自分がこの世界に呼ばれた意味だと思う。

 腹の中に溜まった怒りを、抽出する様に手の平に具現化した。それは金の弓と金の矢。矢をつがえて、空に向ける。

 この怒りの矛先は悪では無い。身勝手な創造主に対してだ。今、この世界は女神からの独立を宣言する。



 矢をギリギリまで引く。弓がしなる。
 怒りを込めて太陽は矢を空に向かって放った。

 矢が激しい金色の炎に包まれる。

 それが金の粒を散らしながら、グングン昇って、そのまま空を覆った厚い雲を突き抜けた。



◇◇◇



 人々は一瞬何が起きたのか、分からなかった。

 その世界は厚い雲が天を覆い、日中を通して薄暗いのが当たり前だったから。

 なのに目の前の救世主は金の弓と矢を出現させると、空に向かって矢を放った。途中で凄まじい膨大な金の炎を纏って矢は暑い雲に吸い込まれていった。

 一体何のために?

 理解が追いつかない群衆は、ただ呆然と救世主を見つめた。この後、金の者が何を発するのか固唾を飲んで見守った。

 金の者は、スッと指を天に向け静かに言葉を紡ぐ。決して大きな声では無いのに、それは人々の耳にしっかりと届いた。

「この世界の新たな名はトワ」

 意味など分からない。それでもそれは人々の耳にスッと入ってきた。

「意味は異世界の言葉で永遠という意味です」

 その時、雲間から差し込んだ光が目の前の金の者を照らし出した。

「二度とこの世界が瘴気に脅かされない様に。二度とこの世界の種族達が分断される事なく、手を取り合って助け合っていける様に」

 天からの降り注いだ光は、金の者を照らし出すと徐々に広がりその場を明るく照らしていく。

「トワ。この名を語り継いでいってください。この世界の平和がこれからも永遠に続く様に」

 天の光は、いつの間にか群衆をも照らし世界を明るい景色に染め上げていた。

 不思議な現象に天を見上げれば、いつの間にか空を覆っていた厚い雲は無くなり。そこには美しい青空が広がっていた。そして強く輝く眩しい一つの光。

 瘴気が完全に晴れた。
 この世界はこれからより良くなっていく。

 それを完全に理解した群衆は大歓声を上げ、新しい世界の名を歓迎した。
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