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最終章 運命を創る者
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「タイヨウ。君に言わないといけない事があるんだ」
真剣な表情のルースが、ソッと太陽を引き離した。
「君はこの世界にいたい?それとも向こうの世界に戻りたい?」
「向こうに戻りたいです」
太陽は即答した。太陽にとって既に大事な物はココより向こうの世界の方が多い。
「じゃあ…あの後の王女の状況を説明するね」
あの時、太陽を守る為に王女はほとんどの力を使い果たした。だから今瀕死の状態だとルースは言った。
「そんな…」
「1つだけ助かる方法があるとすれば、君が彼女を取り込んで同化する事。もう意識を乗っ取られる事は無いそうだよ」
「そうなんですね」
よかった、と太陽は安堵の息を吐いた。だがルースの表情は浮かない。
「ルースさんは反対なんですか?」
「いいや。ただもし君が王女を取り込んだら、妖精王は君に求愛するそうだ」
「え?」
妖精王。白い髪に水色の瞳の美形を思い出す。無表情な彼は王女である妖精をとても大事にしていた。
「何でですか?王女の代わりに俺を?」
「違う。代わりじゃない。王女と同一になった君を愛するつもりなんだよ」
意味が分からなかった。何故そんな話をルースは淡々としてるのか。
「俺は…ルースさんと伴侶になるんですよね?」
「……」
ルースは返事をしなかった。不安が太陽の胸に広がる。
「ルースさん?どうして何も言ってくれないんですか?」
「タイヨウ…僕は…」
「俺はルースさんと一緒に生きていきたいんです!」
何で?何で?
この世界まで追いかけてくれたのに。
記憶も取り戻り戻したのに。
どうして俺から離れようとするの?
目の前にいる筈なのにルースがいなくなってしまいそうで。恐怖から太陽はルースにしがみついた。今さらこの人を失うなんて考えられなかった。
「僕は…君に魅了の魔法をかけた」
「何を…」
「初めてこの世界に来た時に…君は両親を失って…哀しみで…壊れてしまいそうで…」
3年前の交通事故。あの日、太陽は錯乱状態で当時の事をよく覚えていない。
でもあの時、誰かが自分を車から助け出してくれた。
「雨の中、両親と一緒に死ねばよかったと泣く君がほっとけなくて…」
そんな記憶は1つしかない。大雨の日、親戚に追い出され、1人両親の墓の前で絶望して泣いた。そしてその後、熱を出して寝込んだ。
誰かに会った気はしていた。でも熱が酷くて朦朧としていてー。
「タイヨウ。ごめん。君が…そこまで僕を求めるのは…きっと僕のせいだ」
泣きながらルースが変化の魔法を解いた。黒い目が緑に変わる。美しい緑の瞳は涙に濡れていた。
「あ…」
忘れていた記憶が蘇る。
そうだ。雨の中、ぼんやりと光る美しい緑の瞳を見た。
それが目の前のルースの瞳と重なった。
「鳥族の長の言う通りだった…。君の感情はきっと僕が洗脳したせいだ」
ルースが太陽をソッと離すと、左薬指から指輪を外してテーブルに置いた。
「もし…僕が君を魅了しなければ…ソラかワルオが君の恋人になっていたかもしれないのに」
ルースが思い出した数々の記憶。
東の村で、2人一緒のベッドで寝ていた太陽とソラ。
西の館で、ルースやソラよりもワルオを庇って駆け寄った太陽。
そして何より、既に家族として認められている2人。
それに対してルースは一度も太陽に家族になりたいと言われた事は無い。それがずっと気になっていた。
魅了をかけた時は太陽と2人絶対に結ばれると信じていた。だけどソラやワルオとの深い繋がりを思い出した今、前の様な絶対的な自信はルースの中から無くなっていた。
「また明日…来るから」
ルースは立ち上がり席を立った。
ーーー
次話、閲覧注意です。
真剣な表情のルースが、ソッと太陽を引き離した。
「君はこの世界にいたい?それとも向こうの世界に戻りたい?」
「向こうに戻りたいです」
太陽は即答した。太陽にとって既に大事な物はココより向こうの世界の方が多い。
「じゃあ…あの後の王女の状況を説明するね」
あの時、太陽を守る為に王女はほとんどの力を使い果たした。だから今瀕死の状態だとルースは言った。
「そんな…」
「1つだけ助かる方法があるとすれば、君が彼女を取り込んで同化する事。もう意識を乗っ取られる事は無いそうだよ」
「そうなんですね」
よかった、と太陽は安堵の息を吐いた。だがルースの表情は浮かない。
「ルースさんは反対なんですか?」
「いいや。ただもし君が王女を取り込んだら、妖精王は君に求愛するそうだ」
「え?」
妖精王。白い髪に水色の瞳の美形を思い出す。無表情な彼は王女である妖精をとても大事にしていた。
「何でですか?王女の代わりに俺を?」
「違う。代わりじゃない。王女と同一になった君を愛するつもりなんだよ」
意味が分からなかった。何故そんな話をルースは淡々としてるのか。
「俺は…ルースさんと伴侶になるんですよね?」
「……」
ルースは返事をしなかった。不安が太陽の胸に広がる。
「ルースさん?どうして何も言ってくれないんですか?」
「タイヨウ…僕は…」
「俺はルースさんと一緒に生きていきたいんです!」
何で?何で?
この世界まで追いかけてくれたのに。
記憶も取り戻り戻したのに。
どうして俺から離れようとするの?
目の前にいる筈なのにルースがいなくなってしまいそうで。恐怖から太陽はルースにしがみついた。今さらこの人を失うなんて考えられなかった。
「僕は…君に魅了の魔法をかけた」
「何を…」
「初めてこの世界に来た時に…君は両親を失って…哀しみで…壊れてしまいそうで…」
3年前の交通事故。あの日、太陽は錯乱状態で当時の事をよく覚えていない。
でもあの時、誰かが自分を車から助け出してくれた。
「雨の中、両親と一緒に死ねばよかったと泣く君がほっとけなくて…」
そんな記憶は1つしかない。大雨の日、親戚に追い出され、1人両親の墓の前で絶望して泣いた。そしてその後、熱を出して寝込んだ。
誰かに会った気はしていた。でも熱が酷くて朦朧としていてー。
「タイヨウ。ごめん。君が…そこまで僕を求めるのは…きっと僕のせいだ」
泣きながらルースが変化の魔法を解いた。黒い目が緑に変わる。美しい緑の瞳は涙に濡れていた。
「あ…」
忘れていた記憶が蘇る。
そうだ。雨の中、ぼんやりと光る美しい緑の瞳を見た。
それが目の前のルースの瞳と重なった。
「鳥族の長の言う通りだった…。君の感情はきっと僕が洗脳したせいだ」
ルースが太陽をソッと離すと、左薬指から指輪を外してテーブルに置いた。
「もし…僕が君を魅了しなければ…ソラかワルオが君の恋人になっていたかもしれないのに」
ルースが思い出した数々の記憶。
東の村で、2人一緒のベッドで寝ていた太陽とソラ。
西の館で、ルースやソラよりもワルオを庇って駆け寄った太陽。
そして何より、既に家族として認められている2人。
それに対してルースは一度も太陽に家族になりたいと言われた事は無い。それがずっと気になっていた。
魅了をかけた時は太陽と2人絶対に結ばれると信じていた。だけどソラやワルオとの深い繋がりを思い出した今、前の様な絶対的な自信はルースの中から無くなっていた。
「また明日…来るから」
ルースは立ち上がり席を立った。
ーーー
次話、閲覧注意です。
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