【完結】壊された女神の箱庭ー姫と呼ばれていきなり異世界に連れ去られましたー

秋空花林

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第三章 空を舞う赤、狂いて

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 暫く2人は、そのままの格好で横たわったまま動けなかった。

 太陽はありえないシチュエーションで興奮してしてしまった羞恥心で悶えていて。

 ショーキは初めの快感の連続に、身体がグッタリしたからだ。

 恥ずかしさが落ち着いた頃、太陽は服やズボンを直してからショーキに近寄った。

「大丈夫か?」
「ツカレタ」

 剥き出しのままのナニを確認すると、その先端に黒っぽい液体ついていたが、さっきより黒色が薄まってる気がした。

 まだグッタリしているショーキの右目の瘴気の濃さが、ほんの少し和らいでる様に見えた。

 綺麗に出来るか?と尋ねたら、ショーキが頷いて、清浄する魔法を唱えた。汚れが無くなったのを確認してからズボンを履かせた。

「もう身体大丈夫か?」
「ウン!スッキリ」
「そうか。瘴気も出たみたいだし、身体にも良かったのかも」
「エ!?」

 太陽の言葉に、ショーキが青ざめた。ブルブルと震え出す。

「ショーキ?」
「オレいなくナル」
「え?」
「ショーキ無くなったらショーキいなくナル」
「ー!」
「オレじゃま?」

 ショーキがギュッと太陽の服を握って太陽を見つめる。その泣きそうな表情に胸が痛んだ。

 太陽はソッとショーキを抱きしめた。慰める様に背中をさする。

「邪魔な訳ないだろ」
「ヘンなのノマセタ」
「ごめん。昼間、瘴気肉食ってたお前の身体が心配で。でももうしないから」
「ホント?」
「本当。悪男の事もショーキの事も好きだから。ショーキに消えて欲しくないから、もうしない」

 それまで泣きそうな顔をしていたショーキが嬉しそうに笑った。

「オレスキ、ふたりメ」
「え?」
「ワルオリ、セーヤ」

 そうか、と太陽は小さく呟いた。

 悪男はとっくにショーキを認めて受け入れてたんだ。

 それなのに、俺は勝手に悪男ばかり心配して勝手な行動をして。それが結果的にショーキを消そうとする行為だったとは。

 俺、何やってんだろう。
 情け無くて泣きそうになった。

 ふわぁ、とショーキが欠伸をした。

 もう寝ろ、と布の上に寝かそうとしたが、セーヤまもる、と頑なに拒否してきた。その言葉にまた胸が痛んだ。

 じゃあ、せめて座って過ごそう、と2人並んで布の上に座った。

 いつの間にかすっかり陽が落ちて、辺りは闇に包まれていた。

 肌寒い、と思ったら温かい何かが身体を包んだ。赤く美しい羽根が2人を毛布の様に優しく包んでいた。

「まもる…」

 膝を抱えて、ショーキがウトウトしている。その内くーくーと可愛いらしい寝息を立てて寝てしまった。

 その寝顔に胸が締め付けらそうな気持ちになる。気づいたら、ショーキの頭を撫でていた。

 悪男は良い奴だ。闇堕ちさせたくない。
 でもそれは悪男から瘴気を消す行為。ショーキを消してしまう行為。

 どうしたらショーキを残しつつ悪男の闇堕ちを防げるだろう。ぼんやりと考えながら、赤く美しい温もりに、太陽もいつしか眠りについた。



◇◇◇



 辺りは闇。またこの夢だ。

 もう誰がいるかはすぐわかる。
 だから聞きたい事を、太陽はすぐ切り出した。

「瘴気で出来た人格を残したまま、闇堕ちを防ぐ方法ってある?」

 金の左目が、ジッと太陽を見つめていた。

『難しいですね。瘴気で出来た人格は一時的な物です。瘴気を祓わず、それ以上は瘴気を取り入れない事くらいですが…それでも内側では少しずつ進行してしまうでしょう』
「…そうか。ちなみに結界が無くなった場所に結界を張り直して、闇堕ちした仲間を元に戻すにはどうしたらいい?」
『…西の話ですね』

 太陽の話から、金の男はすぐにピンときた様だ。

『確か鳥族には1人残っている若者がいましたが、長を継ぐ程の実力は無い筈。なら元の長を闇堕ちから救えばいい』
「元の長?」
『そうです。それで結界も配下も元に戻るでしょう。ただその若者の瘴気も完全に祓われるから、もう1つの人格も消えるでしょう』

 男の無慈悲なセリフに太陽は言葉が詰まった。

 それは太陽の望む答えでは無かった。オレじゃま?と聞いて来たショーキが頭から離れない。

『他に何か質問は?』
「…鳥族から、魔王が瘴気を抑えてるって聞いたけど、それ本当?」
『本当です。正確には魔王と私で抑えてきました』
「じゃあ金の者と魔王は協力し合ってるってこと?東でも南でも、瘴気は魔王のせいだって伝えられてたのに」

 男はジッと太陽を見つめて、一言尋ねた。

『どうしてだと思いますか?』

 そんなの俺が知る訳ない、と言いかけて。ふとエルフ族の長の話を思い出した。人間の王家が、王族の失態を隠す為に作られたという言い伝え。

「もしかして…誰かが自分の都合がいいように話を作り変えた?」

 男はフッと楽しそうに微笑む。

『どうでしょう?本人は作り変えたつもりはないかもしれませんよ』
「それって…」
『明日には北に入りますね。魔王と共に待ってますよ』

 男の声が小さくなっていく。

 あ、夢が覚めると思ったら急速に意識が浮上した。



◇◇◇



 目が覚めて周りを見回すと、横に赤い地層が目に入った。

 それで昨日は野宿していた事を思い出す。

 空の雲は少し明るくなっていた。それで恐らく早朝だろうとわかった。

 数メートル先は砂漠だ。ずっと水平線の向こうまで砂が続いてる。こんな光景始めて見た。

 下に敷いていた布は折り曲げられて、太陽が寒くない様にタオルケット代わりに被せられていた。

 ただ見える範囲にはショーキの姿が見えない。彼はどこに行ったんだろう。

 布を外して立ち上がる。先は砂漠。後方は地層。だから自ずと左右のどちらにいる筈だ。

 試しに散策を兼ねて歩いてみると、地層が大きくうねり角になっている場所を見つけた。

 ちょうどそこに隠れる様に、コチラに背を向けた赤く美しい羽根を見つけた。

 ショーキと声をかけようとして、ハッと息を飲んだ。少し屈んで片手を忙しなく動かす行為に見覚えがあったからだ。

「ショーキ!駄目だ!それ以上したらまた瘴気が出ちゃうだろ!」

 慌てて正面に回り込んで、自分のナニを触ってるショーキの左手を掴んだ。

 ん?左手?

 ショーキの顔を見ると、開いてるのは左目だった。

「え?悪男?」
「~~~っ、お前何だよっ!」

 悪男が真っ赤になって怒った。それはそうだ。こっそり隠れて自慰してる所を見られて、しかも声をかけられたのだから。

「普通、こういうの見て見ぬふりすんだろ!馬鹿っ!」
「ごめん!だって、まさか悪男だと思わなくて!いや、そうじゃなくて!抜いたらダメだ!瘴気抜けちゃう!」
「何言ってんだよぉ!恥ずかしいから、あっち行けよぉ!」

 真っ赤な顔で目尻に涙まで浮かべると、悪男は太陽の手を払って反対側を向いた。

「ごめん。だけど、抜いたら瘴気が抜けて、ショーキがいなくなるかも」
「…何でお前がそんな事知ってんだ」
「だって昨日…あっ」

 これでは昨日ショーキがセーヤの前でナニをしたとバラしたようなものだ。

「~~~っ」

 悪男も気づいたのか、何だかプルプル震えている。

「うぅ…じゃあ、後で瘴気肉食うから、ぐすっ、朝起きたらこんな状態でツラいんだよぉ、ぐすっ」

 悪男は羞恥と辛さのあまり泣いていた。

 元はといえば昨夜、太陽が余計な事をしたせいだ。さすがにこれ以上引き留めるのも悪いと思い、ごめん、と謝って太陽はその場から立ち去った。
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