【完結】誰そ彼(黄昏)に濡れる

エウラ

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とある日のデュカス公爵夫人

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レイが妊娠してから5ヶ月ほど経った。

安定期に入ったということで、少しふっくらとしてきたお腹を気にしつつ、散歩がてら騎士団の訓練場まで歩くことにした。

レイはアレクシオが付けた護衛の騎士と一緒にのんびり歩いていたが、ふと足を止めた。

「レイ様? いかがなされましたか?」

護衛の一人が声をかけるがピクリともしないのでもう一人の護衛が訝しげにレイを窺うと、彼方の空をジッと見つめていた。

護衛達が不思議に思っていると、おもむろに走り出して行き、護衛達がギョッとした。

「ッレイ様?! 走っては危のうございます!!」
「いかがなされましたかっ?!」
「---誰か、公爵閣下に知らせろ!」

一気にザワつく空気をモノともせずに愛剣を片手に尚も走るのを止めないレイに、さすがにこれはおかしいと周りも気付く。

そうしてレイが走る先に目を凝らせば、うっすらと見える黒い影。

「---ワイバーンだ!! 騎士団総員、戦闘準備!!」
「レイ様とお子を護れ!」
「レイ様、お待ちください! 我々にお任せを---!」

周りが止める中、凄い勢いで跳んだかと思えば上空のワイバーンに届いて一太刀、そのワイバーンを踏み台に次のワイバーンも一太刀・・・と、次々飛び跳ねてワイバーンを倒していく。

騎士団は落ちてくるワイバーンを魔法で受け止めているのが精一杯で・・・。

気付けばゆうに20頭はいたワイバーンを一人で討伐していた。


全てを倒し尽くして地上に向かって落ちてきたレイを魔法で受け止めたのは大急ぎでやって来たアレクシオで。

「---ッレイ! 危ないだろう!! 君は自分の体と身分と私の事を考えなさい!!」
「・・・・・・あー、ごめん、つい・・・・・・」

めちゃくちゃ気まずい空気で、目線をうろうろ彷徨わせた。

「---はあ。とにかく無事で良かった。レイ、邸に戻って侍医の診察を受けて。安定期に入ったとはいえ、かなり無茶な動きだったからね?」
「うん。はい」
「・・・でもまあ、レイのお陰で怪我人もなく被害も無かった。ありがとう」
「---っどう致しまして。ふふ」

にこやかに笑い合う二人を横目に見ながら、団長が団員に指示を出す。

「冒険者ギルドに連絡を取れ。ワイバーンの素材が手に入ったと。それとワイバーンの群れが来た原因の調査!!」
「はっ!!」

今回はたまたまレイ様が討伐出来たが、毎回こうなるとは限らない。

我々だけで対処出来ねば意味がないのだ。


公爵閣下はレイ様と共に邸に戻られた。
何事も無かったからいいものの・・・。

最悪を想像して一同、震え上がった。



侍医の診察で全く問題無しと聞き、やっと人心地ついたアレクシオとレイ。

今はケーキを食べつつお茶を飲んでいる。
ハーブティーだ。

「---美味しい。料理長の作るものは全部美味しいね」

大好物だという桃のタルトだ。
カスタードクリームがたくさん入っている。

虐待されていた頃は甘味などほとんど口に出来なかったからか、渡り人として保護されてからデザートで何かしら甘味が出て、レイはそれはそれは嬉しそうに食べていたものだ。

料理長もそれが嬉しくて、色々な甘味を作るようになった。

何年経っても甘味は飽きないようだ。

それを愛おしそうに見つめるアレクシオ。

「? アル、食べないの?」

見るとレイの皿が綺麗になっていた。
優雅な所作であっという間に食べてしまったようだ。

クスリと笑って自分の皿とレイの皿を入れ替える。

「たくさん動いて頑張ったからね。こっちもどうぞ」
「---え、でも太る・・・・・・」
「ふはっ! 気にするほど太って無いでしょ。寧ろもう少し肉付きが良いと抱き心地も・・・いや、今でも十分良いんだけど。どんなレイでも抱きたいんだけど・・・」
「ちょっと! 何言ってんの?! そんなことここで言わなくても・・・!!」

アレクシオは思わず口走っていたようで、顔を真っ赤にしたレイを見て思わず押し倒しそうになった。




---でも安定期に入ったから、レイの体調を見てそろそろ閨を共にしても大丈夫なんだよね。
もちろん激しいのは禁止だけど。

・・・スローセックスも良いよねえ。


なんてアレクシオが考えている事など全く知らないレイは、顔を赤らめながらもアレクシオに追加で貰ったタルトを食べて幸せに顔を綻ばせていたのだった---。



ちなみにワイバーンが多数飛来した理由はこうだ。

バカな貴族が冒険者が秘密裏に取ってきたワイバーンの卵を大金を出して手に入れ、その卵を取り返しにワイバーンが仲間と来た。
そもそも卵を盗むこと自体、こういうことが起こる可能性があり危険行為で禁止されていたのだが。

金欲しさに手を出した冒険者は冒険者の証を剥奪の上、犯罪者の行く鉱山での終身奉仕。
貴族も爵位剥奪で同じく鉱山に送られた。


---氷の公爵を怒らせてこれで済んだのは、被害無く済ませたレイのおかげである。

もしレイに一筋でも傷が付いていたら、そいつらは地獄を見ただろう・・・。





※後日、ワイバーン飛来の理由を付け足しました。中途半端でスミマセンでした。










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