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幸せのかたち
しおりを挟むワイバーンの騒動の後は特に大きな騒動もなく、臨月を迎えたレイは無事元気な男の子を出産した。
「・・・ありがとう、レイ。元気な跡取りだよ。お疲れ様、ゆっくり休んで?」
「ああ、無事に生まれて、良かった・・・ウン、ちょっと疲れたかな・・・・・・ごめん、少し・・・寝る」
そういって目蓋を閉じたレイの額に口づけを贈るアレクシオ。
生まれた赤子は、今は乳母のいる部屋でぐっすり寝ていた。
黒髪に黄昏色の瞳。
顔立ちはレイに似ているかな?
両親は寝ている赤子を穴が空くほど見ている。
もちろん無言で。
顔はだらしないけどね。
騎士団の皆も今頃大盛り上がりだろう。
使用人達も張りきってお祝いの料理でも作っているかな。
昨夜、急に産気づいて痛みを訴えた時は気が気じゃなかった。
母上が待機して色々とサポートしてくれたお陰でさほど取り乱すこともなく翌日、昼には無事生まれて・・・。
初産の割には安産だったと言うが、見ているこちらはハラハラドキドキ。
疲労困ぱいのレイが眠って、ようやく安心した。
「---本当に、ありがとう。愛してるよ、レイ」
早いものであれから5年経ち、今は第二子がレイのお腹の中にいる。
「とーさま、かーさま! はやく」
そういって手を振るのはシオンと名付けられたデュカス公爵家の嫡男。
顔立ちはもとより性格もレイに似て、体を動かす方が大好きな活発な子に育っていた。
「今行くよ。そんなに走ったら転ぶぞ」
「シオン、お菓子は逃げないよ」
何時も美味しそうに食べるレイを見ているせいか、シオンも立派な甘党になっていた。
今日は天気が良いので庭でお茶をする予定だ。
「レイ、体調はどう? そろそろ産み月だろう? 抱き上げて運ぼうか?」
「過保護だなあ、大丈夫だよアル。動いた方が体に良いって侍医も言ってたでしょ」
心配顔で声をかけてくるアレクシオに苦笑しつつシオンの後を追う。
二度目とはいえ何があるか分からないから心配する気持ちは分かるけど。
俺はたくさん子供が欲しい。
アルと子供たちと邸の皆と、賑やかに家族として暮らしたいんだ。
もうあんな辛くて孤独な日々が来ないように、ずっと楽しく過ごしたい。
そして歳をとったら孫を可愛がってアルと何時までも笑い合うんだ。
「・・・ふふ」
「なあに? 良いことでもあった?」
アレクシオがふわりと笑う。
結婚しても暫く、コレがアレクシオの素だと思っていた。
でもある時、邸に訪れたアレクシオの悪友だという侯爵がアレクシオを煽って、普段俺に見せるのとは違うもの凄く冷たい顔と声で応接間が凍ったことがあって。
どうやら侯爵がワザと俺に裏の顔(いや実はコレが表の顔だった)を教えてやろうと企てたらしかった。
ちょうど俺が廊下に居合わせた時を狙ったようで、思わず剣を握ってアレクシオの前に飛び出しアレクシオを庇ってしまった。
呆気に取られたアルが瞬時に柔和な顔になって俺に言い訳をするのを見て侯爵が大笑いしてたっけ。
『お前っ・・・変わりすぎ! なんだその顔っ! ウケる!』
『---巫山戯るな、クソが。お前、後で覚えてろよ』
『・・・・・・えーと?』
意味が分からず困惑気味な俺に侯爵が、コッチが素で俺にだけでろ甘なんだと暴露して、笑いながら逃げるように帰って行った。
『愛想尽かされないようにな、アレク』
そう捨て台詞を残して。
その後、俺を後ろからギュッと抱き締めたまま動かなくなったアルを何とか宥めてソファに座り、猫かぶりを暴露されて落ち込んでるアルにこう言ったんだ。
『さっきのアル、凄くクールで格好良かったよ』
って。
だって、俺にだけなんでしょ、甘えたようにでろ甘なのって。
ソレって凄く特別で、俺のこと愛してくれてるからでしょ?
---すっごく嬉しい。
そう言ったら寝室に連れ込まれて足腰立たなくなるまで愛されたけれども・・・・・・。
なんて懐かしい思い出に浸っていたら、いつの間にかアルが心配して俺を抱き上げた。
「ぅわ!」
「何か心配事?」
「・・・・・・いや、アルのこと考えてた」
「私?」
「ん。幸せだなって」
「---! レイ、私も幸せだっ!」
そういって口づけをしてくるアレクシオにクスクス笑って。
「とーさま、かーさま!! はやくきてよ! おちゃ、さめちゃうよ---!」
「今行くよ、シオン」
そういって俺を姫抱きしてスタスタと歩いて行くアレクシオ。
三人でのお茶会が四人になるのはそう遠くない未来。
楽しげな笑い声が澄んだ青空に何時までも響き渡っていた。
※コレにて完結です。ここまで読んで下さってありがとうございました!
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子どもも無事生まれてよかったと思うけれども、なぜあのタイミングでワイバーンが出たのか気になります🤔
読んで下さってありがとうございます!
アレは話の流れで出ただけで深く考えてはイケマセン😨
いい加減な作者ですのでスミマセン😅
ああでも、後付けで理由書いた方が良いですかね?
読み直して確認してみます😄
何時も読んでくださってありがとうございます。
レイは他から見ればアレクシオを恩人として敬愛しているように見えたんでしょう。本人も隠してたので。
生け贄じゃないよー(笑)
読んで下さってありがとうございます。
どのように埋めたかはご想像にお任せします(笑)
ハッピーエンド予定なので幸せなはずです。