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14 休憩時間という名の密会 1(sideエリアス)
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一回戦の合同訓練直後の休憩時間。
「いやー、満足満足!」
そう言って爽やかな笑みを浮かべるアディスを呆れたように見る。ちらっと隣を見ればディートも苦笑いしていた。
「・・・・・・ったく、いくら身体強化魔法使ったにしてもアレはないだろう」
「だよな。本当にダスク師団長って人族?」
「常日頃鍛えてるっていっても限度があるって」
同じ人族とか、獣人でも草食系とか子供相手ならまあ納得は出来るが、アルヴァは竜人だぞ?
「めちゃくちゃ鳩尾に入ってたな。見たか? 甲冑凹んでたよ」
「見た見た。アレを素手でだぜ? ソレだけ鬱憤が溜まってたんだろうけど」
アレは怒らせちゃいかんヤツだ。
そんなことを思いながらディートと震えた。
「ところでダスク師団長」
「はいはい、ソリューン団長。何かな?」
アディスに声をかけると、彼がすぐに『防音魔法』と『認識阻害魔法』を張った。ああ、言いたいことは分かっているらしい。読唇術で読まれても困るからな。
「例のアレ、引っかかったようだな。・・・・・・大丈夫か?」
「うんうん大丈夫。まんまと食いついてくれたよ。大食堂で餌を撒いた甲斐があったよね、ライン。絶対に次、動くと思う」
くふふとカーティスと共に意味深に笑うアディスに、はあっと溜息をつく。
「だよな・・・・・・。心配はしてないが、一応な」
「何かあってダスク副師団長が悲しむのは見たくないですしね」
ディートも苦笑してそう言うと、アディスは不敵に笑った。
「私がそんなヘマをするとでも?」
「いいや? だが万が一ってのがあるだろう」
「私がそんな目にあわせませんよ」
「そうだね。ラインは強いもんね。頼りにしてるよ」
俺とディート、アディスの会話にカーティスが割り込んできた。
和やかに人のよさそうな笑みをしてても腹ン中はドス黒いからな、このエルフ。
だがこの様子だとたぶんアディスは彼の本性に気付いてないのだろう。
俺の考えを読んだのか、にっこりしながら無言の圧をかけてくるカーティス。
『余計なこと言うなよ』
『へいへい』
目線でそんなやり取りをする俺達。もちろん馬に蹴られたくはないからな、黙ってるぜ。
「大丈夫だと思うがラインも気を付けてね」
「はい」
アディスに声をかけられてコロッと威圧を消すカーティスに呆れる俺とディートだった。
◇◆◇
───二年前から始まったダスク副師団長の酷い噂。
まあ、最初は年若く才能があるダスク副師団長への妬み僻みの嫌がらせと軽く考えて、ダスク師団長達と俺達で裏を探って始末をつければいいと思っていた。
俺の騎士団長室にアディスとカーティス、ディートが集まり、調査結果を話し出す。
調べた結果、すぐに噂の最初の出所がロステム侯爵家と知れた。
するとダスク師団長が珍しく嫌悪感丸出しで苛ついたので詳しく聞くと他言無用で頼むと言われ───。
『実はロステム侯爵はウチの子・・・・・・セラータの実父だ』
『は? だってドーン公爵家の知人の忘れ形見って・・・・・・。それに髪の色なんか全然違うだろう?』
ロステム侯爵家の直系は皆、橙色だったはず。魔法属性も火や風だ。セラータはアディスと同じく全属性使える希少な魔導師だ。
『母親が元貴族令嬢の愛人で、子のいなかった正妻の悋気で攫われ、スラムに捨て置かれて死にそうになっていたのを私が偶然助けたんだ。その時にはショックで髪色が宵闇色に変わっていた』
『確か師団長が養子にした時って、彼、4歳だったよな? そんな幼子に、なんてことを』
ショックで髪色が変わるくらい絶望したのだろう。聞いていたディートも眉間に皺を寄せていた。
『ちょうど公爵位を継ぐ手続き中でね。その時本人が過去を消したいというので、ウチとドーン家であの子の経歴を綺麗に消して新しい身分を作ったんだ。名前もその時、私が名付けた。これは陛下もご存知だ』
そう聞かされた。
過去を消してくれなんて、たった4歳の子供の思考じゃないだろう。その頃から聡明だったのか。
それにしてもロステム侯爵家では彼の捜索すらしていなかったらしい。獣人族は家族を大切にする者がほとんどだから有り得ない思考だな。
そんな親、縁を切って正解だ。
『で? まさか今更、副師団長のことに気付いてやらかしてるってことは───』
『それはない。別の要因だ』
『別の?』
ロステム侯爵はセラータが実子だと知って排除しようとしたわけではないらしい。
『ああ・・・・・・。今度の国王の生誕祭で第一王子殿下が立太子されるのは知ってるな?』
『ええ、警護は近衛騎士団ですがこちらも城内の警護を担当しますから、連絡はいただいてます。将来有望で優秀な方ですからね』
『あの方なら陛下も安心だろう。・・・・・・ただ第二王子殿下がなあ・・・・・・』
『ちょっと自己中心的で考えの浅い方で───まさか』
不意に王太子殿下や第二王子殿下の話になって俺は疑問符を浮かべていたが、ディートは何かに気付いたようだった。
『そのまさかだ。第二王子殿下を王位につけようと画策する愚か者がいるんだよ』
『はあ!? いや無理だろ!』
こう言っちゃ何だが、結構アホだぞ、第二王子は。
第二王子派なんておこぼれを預かろうって馬鹿貴族が少ししかいない。
『だろう? だからソイツら、後ろ盾が欲しくてダスク公爵家に第二王子殿下の婚約者候補にセラータを打診してきたんだ。ずっと無理だって断ってるけどね』
『・・・・・・ああ、アルヴァの番いだもんな』
『本人達は自覚なしだけどね』
ディートがすかさずツッコむが、その通りなので皆で苦笑する。
『それ以外にも明確に無理な理由はあるんだが、アイツら分かってないのか・・・・・・。そういう訳でムリムリ言ってたら、どうやら「ウチが後ろ盾になるからぜひ息子を婚約者に」ってロステム侯爵家が名乗りをあげて』
『なら別に放っといてかまわんだろう? 何が問題なんだ?』
『あー、どうやら第二王子殿下がセラータに気があるらしくて・・・・・・ロステム侯爵家からの婚約の打診に頷かない』
渋い顔でそう言うアディスに納得する。
『それで噂をばら撒いて心証を悪くして、是が非でもウチの息子を婚約者にって、そういうことか・・・・・・』
全員が深い溜息を吐いた。
※まだ過去回想続きます。
ちょっとこの先は不定期投稿になると思います。一応、先(エンディング)は構想してるので早めに完結はすると思います。
「いやー、満足満足!」
そう言って爽やかな笑みを浮かべるアディスを呆れたように見る。ちらっと隣を見ればディートも苦笑いしていた。
「・・・・・・ったく、いくら身体強化魔法使ったにしてもアレはないだろう」
「だよな。本当にダスク師団長って人族?」
「常日頃鍛えてるっていっても限度があるって」
同じ人族とか、獣人でも草食系とか子供相手ならまあ納得は出来るが、アルヴァは竜人だぞ?
「めちゃくちゃ鳩尾に入ってたな。見たか? 甲冑凹んでたよ」
「見た見た。アレを素手でだぜ? ソレだけ鬱憤が溜まってたんだろうけど」
アレは怒らせちゃいかんヤツだ。
そんなことを思いながらディートと震えた。
「ところでダスク師団長」
「はいはい、ソリューン団長。何かな?」
アディスに声をかけると、彼がすぐに『防音魔法』と『認識阻害魔法』を張った。ああ、言いたいことは分かっているらしい。読唇術で読まれても困るからな。
「例のアレ、引っかかったようだな。・・・・・・大丈夫か?」
「うんうん大丈夫。まんまと食いついてくれたよ。大食堂で餌を撒いた甲斐があったよね、ライン。絶対に次、動くと思う」
くふふとカーティスと共に意味深に笑うアディスに、はあっと溜息をつく。
「だよな・・・・・・。心配はしてないが、一応な」
「何かあってダスク副師団長が悲しむのは見たくないですしね」
ディートも苦笑してそう言うと、アディスは不敵に笑った。
「私がそんなヘマをするとでも?」
「いいや? だが万が一ってのがあるだろう」
「私がそんな目にあわせませんよ」
「そうだね。ラインは強いもんね。頼りにしてるよ」
俺とディート、アディスの会話にカーティスが割り込んできた。
和やかに人のよさそうな笑みをしてても腹ン中はドス黒いからな、このエルフ。
だがこの様子だとたぶんアディスは彼の本性に気付いてないのだろう。
俺の考えを読んだのか、にっこりしながら無言の圧をかけてくるカーティス。
『余計なこと言うなよ』
『へいへい』
目線でそんなやり取りをする俺達。もちろん馬に蹴られたくはないからな、黙ってるぜ。
「大丈夫だと思うがラインも気を付けてね」
「はい」
アディスに声をかけられてコロッと威圧を消すカーティスに呆れる俺とディートだった。
◇◆◇
───二年前から始まったダスク副師団長の酷い噂。
まあ、最初は年若く才能があるダスク副師団長への妬み僻みの嫌がらせと軽く考えて、ダスク師団長達と俺達で裏を探って始末をつければいいと思っていた。
俺の騎士団長室にアディスとカーティス、ディートが集まり、調査結果を話し出す。
調べた結果、すぐに噂の最初の出所がロステム侯爵家と知れた。
するとダスク師団長が珍しく嫌悪感丸出しで苛ついたので詳しく聞くと他言無用で頼むと言われ───。
『実はロステム侯爵はウチの子・・・・・・セラータの実父だ』
『は? だってドーン公爵家の知人の忘れ形見って・・・・・・。それに髪の色なんか全然違うだろう?』
ロステム侯爵家の直系は皆、橙色だったはず。魔法属性も火や風だ。セラータはアディスと同じく全属性使える希少な魔導師だ。
『母親が元貴族令嬢の愛人で、子のいなかった正妻の悋気で攫われ、スラムに捨て置かれて死にそうになっていたのを私が偶然助けたんだ。その時にはショックで髪色が宵闇色に変わっていた』
『確か師団長が養子にした時って、彼、4歳だったよな? そんな幼子に、なんてことを』
ショックで髪色が変わるくらい絶望したのだろう。聞いていたディートも眉間に皺を寄せていた。
『ちょうど公爵位を継ぐ手続き中でね。その時本人が過去を消したいというので、ウチとドーン家であの子の経歴を綺麗に消して新しい身分を作ったんだ。名前もその時、私が名付けた。これは陛下もご存知だ』
そう聞かされた。
過去を消してくれなんて、たった4歳の子供の思考じゃないだろう。その頃から聡明だったのか。
それにしてもロステム侯爵家では彼の捜索すらしていなかったらしい。獣人族は家族を大切にする者がほとんどだから有り得ない思考だな。
そんな親、縁を切って正解だ。
『で? まさか今更、副師団長のことに気付いてやらかしてるってことは───』
『それはない。別の要因だ』
『別の?』
ロステム侯爵はセラータが実子だと知って排除しようとしたわけではないらしい。
『ああ・・・・・・。今度の国王の生誕祭で第一王子殿下が立太子されるのは知ってるな?』
『ええ、警護は近衛騎士団ですがこちらも城内の警護を担当しますから、連絡はいただいてます。将来有望で優秀な方ですからね』
『あの方なら陛下も安心だろう。・・・・・・ただ第二王子殿下がなあ・・・・・・』
『ちょっと自己中心的で考えの浅い方で───まさか』
不意に王太子殿下や第二王子殿下の話になって俺は疑問符を浮かべていたが、ディートは何かに気付いたようだった。
『そのまさかだ。第二王子殿下を王位につけようと画策する愚か者がいるんだよ』
『はあ!? いや無理だろ!』
こう言っちゃ何だが、結構アホだぞ、第二王子は。
第二王子派なんておこぼれを預かろうって馬鹿貴族が少ししかいない。
『だろう? だからソイツら、後ろ盾が欲しくてダスク公爵家に第二王子殿下の婚約者候補にセラータを打診してきたんだ。ずっと無理だって断ってるけどね』
『・・・・・・ああ、アルヴァの番いだもんな』
『本人達は自覚なしだけどね』
ディートがすかさずツッコむが、その通りなので皆で苦笑する。
『それ以外にも明確に無理な理由はあるんだが、アイツら分かってないのか・・・・・・。そういう訳でムリムリ言ってたら、どうやら「ウチが後ろ盾になるからぜひ息子を婚約者に」ってロステム侯爵家が名乗りをあげて』
『なら別に放っといてかまわんだろう? 何が問題なんだ?』
『あー、どうやら第二王子殿下がセラータに気があるらしくて・・・・・・ロステム侯爵家からの婚約の打診に頷かない』
渋い顔でそう言うアディスに納得する。
『それで噂をばら撒いて心証を悪くして、是が非でもウチの息子を婚約者にって、そういうことか・・・・・・』
全員が深い溜息を吐いた。
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