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後日譚
アーサー・ペンタグラムは回想する
しおりを挟む辺境伯領は今日も平和だった。
コカトリスで大騒ぎした日々が遠い昔のように思えるほど。
「---しかしあの時は驚いたなあ・・・」
アーサーがポツリと零した言葉に反応したのは騎士団の団長達で。
「本当に、有り得ないですよねえ」
「あんなに幼げで可愛い人が、人妻でめちゃくちゃ強いって、ねえ?」
確かに、フォレスター家を知っている者からしたらあれで20歳というだけでも驚きだった。
筋骨隆々な将軍達を見知っているから尚更、冒険者登録したばかりという彼が役に立つとは思うまい。
それを、実力を知ってもらうためだとクラビス達の全力の攻撃を受け止め防いだ気概とその後の涙・・・。
聞けば、異世界の、彼が育った国は今は戦争などない平和なところで、刃物を持っているだけで捕まってしまうとか。
ここでは身を守る為に皆、当たり前に持っているのに。
そんな生活をしていたならさぞかし恐ろしかったであろう。
結局は彼の魔法に全面的に助けられたのだが。
今頃、どうしてるのかな?
---なんてしっとり回想していたのが嘘のように、騒がしくなった。
「---で?」
「アーサー、久しぶり! ちょっとスローライフの下見にきちゃった!」
「きちゃった! じゃねえだろ! ちゃんとアポ取れって言ったろ!」
「だって直接のが早いじゃんか」
「だーもー!! もう少し常識を勉強しろ!」
アルカスとフェイがやいのやいのと騒ぐ隣で、クラビスとエルバートがアーサーに挨拶を交わしていた。
「すまない、アルカスは直ぐに行動するから」
「いや、今のところ急ぎの案件もないし構わんよ。そちらは?」
「初めまして。エルフのエルバートと申します。フェイの夫です。お見知りおき願います」
「へえ、フェイ殿の! ん? エルフ?」
「ああ、ウィステリア様が言うには、フェイはハーフエルフだそうで、私とはちょうど寿命が合うのです」
「・・・・・・そうか、それは何より。置いていく方も置いていかれる方も辛いからな」
「・・・本当に奇跡のようです」
「アルカスの強運が仕事をした結果だね」
「「そうなのか?!」」
いや確かに運が良いとは思っていたが、そうか。
必然だったのだな。
「ところで、止めなくて良いのか、あれは?」
口喧嘩が止まらなさそうだが。
「何時ものことだ」
「そうそう。気にしない」
「だが、スローライフの下見とか言ってたろう? 時間が勿体ないのでは?」
それを聞いていたのか、アルカス達がピタリと静かになった。
「アルカス、どの辺?」
「えーとね、アーサーに聞かないと分かんない」
「・・・・・・お前ねえ、あれ程事前に下調べをしろと・・・・・・!」
「だって」
「だってもさってもねえよ!」
「ひええ---! クラビス助けて!」
一瞬で元に戻った。
三人とも呆れてみている。
「・・・・・・アルカス、そのスローライフというのは? 詳しく教えろ。手助けしてやる」
「ありがとう---! アーサー!!」
やれやれと、周りにいた騎士団員達も苦笑しつつスローライフとやらの手伝いに精を出すのだった。
こんな長閑な日が続くと良いな。
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