婚約破棄された悪役令嬢は、親の再婚でできた竜人族の義理の兄にいつの間にか求婚されていたみたいです⁉

あきのみどり

文字の大きさ
2 / 83

初顔合わせ? 2

しおりを挟む

 

「……、え……? ……りゅ、竜人族……? これが……?」

 悪気なく“これ”なんて言ってしまってから、エミリアはしまったと目の前の青年を見る。
 とても失礼な物言いだった。気を悪くなさってしまっただろうかと不安に思って義兄を見つめるが──……。
 しかし義兄には、なんら変化がない。
 彼はただ、顔を合わせてからずっとそうであるように、どこか険しい顔で彼女のことを見つめ続けている。
 その痛いほどの視線に戸惑いつつ──エミリアは、頭の中に、ある人の顔を思い浮かべ、自分の胸元を見下ろした。

 そこに揺れる銀色のロケットペンダント。

 中には、亡き母の絵姿と共に、ある竜人族の青年からもらった一枚の、ウロコが、入っていた。

 昨日、彼女にそれをくれたのは、少し日焼けした肌に、涼やかな目を持つ竜人族の青年。
 とても麗しい青年だった。

 ただ、その人は、今彼女の前にいる義理の兄よりももっと、人族に近い姿をしていた。
 エミリアら人族とほとんど変わらぬ身体に、額近くには一対のツノ。
 翼や尾はなく、何より顔のつくりが義兄とはまるで違う。

 ゆえにエミリアは、彼のドラゴン顔にとても戸惑った。
 王都で見かけたことのある竜人族たちも、先に挨拶をした継母グネルも、ツノはあれど、人族とほぼ変わらぬ容姿だったのだが……。

(ど、どういうこと……!? グネル様と、この方は……親子でいらっしゃるのよね……!?)

 エミリアは、途方に暮れた瞳を、義兄の後ろに立っている婦人に向けた。

 イスに座った父の隣には、彼をいたわるように立つ美しい継母。(……ちなみに父と継母は、一人でオロオロしはじめたエミリアを見て、とてもハラハラしているが……)彼女の顔を──彼女のしっとりと白い素肌を見て。それを義兄のドラゴン顔と見比べたエミリアの瞳には、なおさら困惑が浮かぶ。

 ……しかし、次の瞬間エミリアはハッとした。

(そ……そうか! 竜人族の方たちは──変身能力があると本で読んだことがあるわ……)

 なるほどと思った。
 彼女が過去に読んだ書物によれば、その昔、偉大なドラゴン王と人族の妃との婚姻によって生まれた種族の彼らは、竜態、竜人態、人態と、姿を使い分けることができるらしい。
 ならば、これはきっと“竜人態”なのね、と、納得を深めたエミリアは、思わずため息をついて、改めて義兄を見つめる。

 なんて強そうで立派な姿なのだろうと思った。
 さすが、地上最強種と謳われるドラゴンに連なる血族である。
 義兄のこの力強い風格は、人族ではけしてかもし出すことのできないもの。
 彼からしたら、人族齢十七の自分なんぞ、矮小すぎてアリも同然か、と、エミリア。惚れ惚れと感嘆してから、ふと、一抹の不安が胸をよぎった。

(あ……ら……? え……これ……大丈夫なの……? わ、わたし……お兄様に仲良くしていただけるのかしら……!?)

 いかにも屈強そうで、とても大きな竜人族の義兄。
『こんな貧弱な妹は、義理でもいらん!』とか、斬って捨てられそうな気がして……エミリアは、その想像に一人青ざめる。

 しかしエミリアは、ここで怯むわけにはいかないと思った。
 彼女はなんとしても、この義兄や継母に、自分を気に入ってもらわねばならないのだから。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で、おひとり様になれるはずだったのに!?

パリパリかぷちーの
恋愛
主人公ルシアン・ヴァイオレットは、「悪役令嬢」として振る舞う孤独愛好家の公爵令嬢。念願だった第一王子アランとの婚約破棄を言い渡されると、内心では歓喜し、大都会の喧騒から逃れて森の奥の廃墟同然の別荘へと引きこもる。ルシアンの目的は、誰にも邪魔されない至高の静寂ライフを満喫することだった。 しかし、彼女の理想郷にはすでに先客がいた。それは、無口で無愛想だがハイスペックな謎の男、キース。実は彼は、王国の裏社会を統べる『影の英雄』と呼ばれる辺境伯であり、ルシアンの孤高の姿に心奪われた重度の隠れファンだった。

悪役令嬢はSランク冒険者の弟子になりヒロインから逃げ切りたい

恋愛
王太子の婚約者として、常に控えめに振る舞ってきたロッテルマリア。 尽くしていたにも関わらず、悪役令嬢として婚約者破棄、国外追放の憂き目に合う。 でも、実は転生者であるロッテルマリアはチートな魔法を武器に、ギルドに登録して旅に出掛けた。 新米冒険者として日々奮闘中。 のんびり冒険をしていたいのに、ヒロインは私を逃がしてくれない。 自身の目的のためにロッテルマリアを狙ってくる。 王太子はあげるから、私をほっといて~ (旧)悪役令嬢は年下Sランク冒険者の弟子になるを手直ししました。 26話で完結 後日談も書いてます。

お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

あーもんど
恋愛
ある日、悪役令嬢に憑依してしまった主人公。 困惑するものの、わりとすんなり状況を受け入れ、『必ず幸せになる!』と決意。 さあ、第二の人生の幕開けよ!────と意気込むものの、人生そう上手くいかず…… ────えっ?悪役令嬢って、家族と不仲だったの? ────ヒロインに『悪役になりきれ』って言われたけど、どうすれば……? などと悩みながらも、真っ向から人と向き合い、自分なりの道を模索していく。 そんな主人公に惹かれたのか、皆だんだん優しくなっていき……? ついには、主人公を溺愛するように! ────これは孤独だった悪役令嬢が家族に、攻略対象者に、ヒロインに愛されまくるお語。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆

【完結】ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!

As-me.com
恋愛
 完結しました。 説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。  気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。  原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。  えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!  腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!  私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!  眼鏡は顔の一部です! ※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。 基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。 途中まで恋愛タグは迷子です。

婚約破棄を望む伯爵令嬢と逃がしたくない宰相閣下との攻防戦~最短で破棄したいので、悪役令嬢乗っ取ります~

甘寧
恋愛
この世界が前世で読んだ事のある小説『恋の花紡』だと気付いたリリー・エーヴェルト。 その瞬間から婚約破棄を望んでいるが、宰相を務める美麗秀麗な婚約者ルーファス・クライナートはそれを受け入れてくれない。 そんな折、気がついた。 「悪役令嬢になればいいじゃない?」 悪役令嬢になれば断罪は必然だが、幸運な事に原作では処刑されない事になってる。 貴族社会に思い残すことも無いし、断罪後は僻地でのんびり暮らすのもよかろう。 よしっ、悪役令嬢乗っ取ろう。 これで万事解決。 ……て思ってたのに、あれ?何で貴方が断罪されてるの? ※全12話で完結です。

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。 学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。 だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。 窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。 そんなときある夜会で騎士と出会った。 その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。 そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。 結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。 ※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)  ★おまけ投稿中★ ※小説家になろう様でも掲載しております。

追放された悪役令嬢は貧乏になっても図太く生きますわ!

ワールド
恋愛
貴族の娘として生まれた公爵令嬢クラリッサ。 陰謀の濡れ衣を着せられ、華やかな社交界から追放――そして辿り着いたのは、ボロ小屋と畑だけの辺境村!? 「結構ですわ! 紅茶がなければハーブティーを淹れればいいじゃありませんの!」 貧乏生活でも持ち前の図太さで、村の改革に乗り出すクラリッサ。 貧乏でも優雅に、下剋上でも気高く! そんな彼女の前に現れたのは、前世(王都)で彼女を陥れた元婚約者……ではなく、なぜか彼の弟で村に潜伏していた元騎士で――? 「俺は見てた。貴女の“ざまぁ”は、きっとまだ終わっちゃいない。」 ざまぁとスローライフ、そしてちょっとの恋。 令嬢、辺境で図太く咲き誇ります!

処理中です...