婚約破棄された悪役令嬢は、親の再婚でできた竜人族の義理の兄にいつの間にか求婚されていたみたいです⁉

あきのみどり

文字の大きさ
15 / 83

“ハイトラーの悪役令嬢”の、やさぐれ 6

しおりを挟む

 
 当然だが、ダンスホールの中にはたくさんの生徒や職員、働き手たちがいた。
 下着を着ているとはいえ、露わになった肩や脚に、周りは当然ギョッとした、が──。
 エミリアは、その視線をものとせずに、ミンディに贈られたドレスを脱ぎすて、そばのテーブルからクロスをはいだ。それを大雑把にローブのように身を覆い、仁王立つ。
 この堂々たる様子には、誰もが唖然と目を丸くして言葉もない。
 その女子生徒は、見るからにか弱そうな見た目。
 透き通るような肌の色は儚げで、身の厚みも薄く、筋肉の重厚さなどまるでない。
 それなのに、そこに立つ姿は威風堂々。自分の華奢さも、まわりの視線も知ったことではないと言いたげな表情は、外圧などには屈するものかという意地と決意がにじみ出ていた。

 このとき、まわりの者たちは目撃する。
 クロスをまとった令嬢のまわりには、何かがチカチカと飛び回っている。
 それは、火花のように小さく爆ぜて、銀色に輝きながら、エミリアの周りを取り巻いていた。
 はじめは、そのあまりに小さな輝きに、誰もが目の錯覚かと思った。だが、どうやらそうではない。
 皆、この光景を見て、先ほど不可解に天窓が割れたことを思い出し、うっすらとした恐れを抱く。

 しかし、エミリアはそんな彼らには目もくれず、彼女はただ顔を上げて、胸を張って高らかに言い放つ。

『それでは皆様ごきげんよう!』

 堂々としたその瞳が、最後にドミニクを見た。

 ──いつからか、本当に大好きになっていた彼。
 ドミニクには、自分と違う明るさと奔放さがあり、自分にはないものを持つ彼に惹かれた。
 欠点があっても、別れたいと思ったことはない。

 ……でも。
 こうなってしまっては、もはや関係修復は無理。
 エミリアにとって、愛は信頼と尊敬の上に成り立つもの。でも、好きだったから、今まではその原則を後ろに追いやって、ドミニクを愛してきた。
 ──その根源たる“好き”が崩れた今、友人にすら戻れないだろう。

 エミリアは、その気持ちを確定させるためにドミニクを真っすぐ見つめた。
 その先では、元婚約者が瞳に困惑を浮かべていた。
 ミンディの肩を抱いていながら、自分に揺れる瞳を見せた男と目が合った瞬間、エミリアの気持ちは一気に凪いだ。愛情も失せ、悲しみも消え、ただ、虚しさだけが残った。

 そのとき、エミリアの目を見たドミニクの口が『ぁ……』と、声を漏らす。
 エミリアの自分に対する失望を見てのことなのか。ほんのわずかに、昨日まで、彼が恋人として彼女に向けてくれていた顔がそこに戻ったような気がした。

 でも、今やそんな顔にすらエミリアは吐き気がした。
 これだけのことをしでかしておきながら、迷いを見せる男には、心底軽蔑を覚える。エミリアはキッとドミニクを睨む。

『わたしに策謀で挑んだのなら……せめて最後までつらぬきなさい!』

 猛虎を思わせる強い叱咤に、ドミニクとミンディの肩が揺れる。
 その瞬間エミリアは、ドミニクの視線を切り絶つような勢いで身をひるがえした。

 これ以上彼らと言いあうつもりはない。
 そんな価値もないと思った。

 そして、この夜から、彼女は学園一の悪女“ハイトラー学園の悪役令嬢”となった。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で、おひとり様になれるはずだったのに!?

パリパリかぷちーの
恋愛
主人公ルシアン・ヴァイオレットは、「悪役令嬢」として振る舞う孤独愛好家の公爵令嬢。念願だった第一王子アランとの婚約破棄を言い渡されると、内心では歓喜し、大都会の喧騒から逃れて森の奥の廃墟同然の別荘へと引きこもる。ルシアンの目的は、誰にも邪魔されない至高の静寂ライフを満喫することだった。 しかし、彼女の理想郷にはすでに先客がいた。それは、無口で無愛想だがハイスペックな謎の男、キース。実は彼は、王国の裏社会を統べる『影の英雄』と呼ばれる辺境伯であり、ルシアンの孤高の姿に心奪われた重度の隠れファンだった。

悪役令嬢はSランク冒険者の弟子になりヒロインから逃げ切りたい

恋愛
王太子の婚約者として、常に控えめに振る舞ってきたロッテルマリア。 尽くしていたにも関わらず、悪役令嬢として婚約者破棄、国外追放の憂き目に合う。 でも、実は転生者であるロッテルマリアはチートな魔法を武器に、ギルドに登録して旅に出掛けた。 新米冒険者として日々奮闘中。 のんびり冒険をしていたいのに、ヒロインは私を逃がしてくれない。 自身の目的のためにロッテルマリアを狙ってくる。 王太子はあげるから、私をほっといて~ (旧)悪役令嬢は年下Sランク冒険者の弟子になるを手直ししました。 26話で完結 後日談も書いてます。

お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

あーもんど
恋愛
ある日、悪役令嬢に憑依してしまった主人公。 困惑するものの、わりとすんなり状況を受け入れ、『必ず幸せになる!』と決意。 さあ、第二の人生の幕開けよ!────と意気込むものの、人生そう上手くいかず…… ────えっ?悪役令嬢って、家族と不仲だったの? ────ヒロインに『悪役になりきれ』って言われたけど、どうすれば……? などと悩みながらも、真っ向から人と向き合い、自分なりの道を模索していく。 そんな主人公に惹かれたのか、皆だんだん優しくなっていき……? ついには、主人公を溺愛するように! ────これは孤独だった悪役令嬢が家族に、攻略対象者に、ヒロインに愛されまくるお語。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆

【完結】ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!

As-me.com
恋愛
 完結しました。 説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。  気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。  原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。  えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!  腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!  私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!  眼鏡は顔の一部です! ※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。 基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。 途中まで恋愛タグは迷子です。

婚約破棄を望む伯爵令嬢と逃がしたくない宰相閣下との攻防戦~最短で破棄したいので、悪役令嬢乗っ取ります~

甘寧
恋愛
この世界が前世で読んだ事のある小説『恋の花紡』だと気付いたリリー・エーヴェルト。 その瞬間から婚約破棄を望んでいるが、宰相を務める美麗秀麗な婚約者ルーファス・クライナートはそれを受け入れてくれない。 そんな折、気がついた。 「悪役令嬢になればいいじゃない?」 悪役令嬢になれば断罪は必然だが、幸運な事に原作では処刑されない事になってる。 貴族社会に思い残すことも無いし、断罪後は僻地でのんびり暮らすのもよかろう。 よしっ、悪役令嬢乗っ取ろう。 これで万事解決。 ……て思ってたのに、あれ?何で貴方が断罪されてるの? ※全12話で完結です。

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。 学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。 だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。 窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。 そんなときある夜会で騎士と出会った。 その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。 そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。 結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。 ※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)  ★おまけ投稿中★ ※小説家になろう様でも掲載しております。

追放された悪役令嬢は貧乏になっても図太く生きますわ!

ワールド
恋愛
貴族の娘として生まれた公爵令嬢クラリッサ。 陰謀の濡れ衣を着せられ、華やかな社交界から追放――そして辿り着いたのは、ボロ小屋と畑だけの辺境村!? 「結構ですわ! 紅茶がなければハーブティーを淹れればいいじゃありませんの!」 貧乏生活でも持ち前の図太さで、村の改革に乗り出すクラリッサ。 貧乏でも優雅に、下剋上でも気高く! そんな彼女の前に現れたのは、前世(王都)で彼女を陥れた元婚約者……ではなく、なぜか彼の弟で村に潜伏していた元騎士で――? 「俺は見てた。貴女の“ざまぁ”は、きっとまだ終わっちゃいない。」 ざまぁとスローライフ、そしてちょっとの恋。 令嬢、辺境で図太く咲き誇ります!

処理中です...