婚約破棄された悪役令嬢は、親の再婚でできた竜人族の義理の兄にいつの間にか求婚されていたみたいです⁉

あきのみどり

文字の大きさ
45 / 83

グンナールとニワトリ 1

しおりを挟む

 さて、こちらはグンナール。……と、なぜかその足元には、エミリアの愛鳥パール。

 青年は、とにかく一度冷静になろうと、母グネルから逃げてきた。
 実はさきほどの昼食会、少々トラブルがあった。
 その発端となった母を叱っていて、青年は少々疲れてしまった。
 母のことは冷静なアルフォンスに任せ、事後処理を終えてから外に出ると、グンナールはやっと少しホッとする。
 そうして静かな場所を求めて再び邸裏の林の中に落ち着いたのだが──気がつくと足元には、何やら興奮気味のニワトリが。
 草の上にあぐらをかいて苦悩している男のそばで、雄鶏はいかにも構ってもらいたそうに、ウロウロ、ウロウロ。
 ただ、グンナールは、今はそれどころではなかった。
 男はほとほと困ったという顔で、ふかぶかとため息をこぼす。

「……あれを“妹”など……無理では……?」
「コケ」
「……困った…………」
「コケ?」

 いかにもつらそうな、ため息交じりの男の言葉に、ニワトリは怪訝。
 いや、グンナールとしては独白のつもりだったのだが……竜人族に敬意を抱いているらしい雄鶏が、いちいち合いの手を入れるもので……なんだかはたから見ると、とてもおかしな光景となっている。
 しかし、それどころではない男は片足に肘をつき、そこに頭を預けて嘆く。

「(可愛すぎて)エミリアを見ていられない……」
「コケ?」

 げっそり吐き出すグンナールの脳裏にあるのは、先ほどの食堂での一幕。
 その騒動は、母グネルがエミリアにある申し出をしたことで起こった。

 母の料理を嬉しそうに、もりもり口に運ぶ彼の義妹は、幸福感に満ちていて、それだけでとてもとても愛らしかった。
 賛辞の言葉は多くなかったが、一さじ一さじをまるで至高の一口というように、大事に大事に食べるさまは、母もさぞうれしかったことだろう。(※まさかそのせいで今エミリアが食べ過ぎに苦しんでいるとは思ってもみない)
 そんな義理の娘を見て、母がたまらずというような顔で切り出したのだ。

『バルドハート……お願いがあるの。あのね、“グネル様”だなんて……家族になるのだからもっと気やすく呼んでちょうだい。できたら“母”と呼んでほしいわ。もちろん……強要はしないけれど……』

 テーブルに乗り出して言ってグネルは、言ってしまってから、かたわらのアルフォンスに(無理かしら)と、少しだけ不安そうな目くばせ。
 亡くなったとはいえエミリアの生母は別にいるわけで、後妻のグネルとしては、やはりそこには気を遣う。
 でも仲良くなりたいわと願う目で夫を見る妻を、エミリアの父は少し微笑んで(さぁどうだろうか)という表情。
 どうやら父には、この後の娘の反応がだいたい分かっているようだった。

 グネルとグンナール、二人が心配そうにエミリアの反応をうかがう、と。
 そこにあったのは、まるで般若のような三白眼。

『っう!?』

 その表情には、武力が重んじられる国元で、その苛烈さを称え(?)“火山姫”(もしかしたら“姫”じゃなくて“鬼”だったかもしれない……byグンナール)の、二つ名で名をはせた母がたやすく怯む。
 ただ、同じくエミリアの顔を見ていたグンナールの目には、このときすでに愛情フィルターがかかっていたもので──母とエミリアの対峙も、仔リスが大蛇(※グネル)を睨んでいるような、かわいい(?)光景にしか映らなかったが。
 ともあれ。
 グネルの一言で、エミリアはいかつい表情。
 テーブルの上で握りしめられすぎのナイフとフォーク。
 眉間にはしわが浮かび、凍り付いたままの鋭い上目遣いは、怪訝な表情のように見えた。
 そうして沈黙している継子を見て、それを拒絶と感じたグネルが、ドラゴン顔を悲しそうに歪めている。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で、おひとり様になれるはずだったのに!?

パリパリかぷちーの
恋愛
主人公ルシアン・ヴァイオレットは、「悪役令嬢」として振る舞う孤独愛好家の公爵令嬢。念願だった第一王子アランとの婚約破棄を言い渡されると、内心では歓喜し、大都会の喧騒から逃れて森の奥の廃墟同然の別荘へと引きこもる。ルシアンの目的は、誰にも邪魔されない至高の静寂ライフを満喫することだった。 しかし、彼女の理想郷にはすでに先客がいた。それは、無口で無愛想だがハイスペックな謎の男、キース。実は彼は、王国の裏社会を統べる『影の英雄』と呼ばれる辺境伯であり、ルシアンの孤高の姿に心奪われた重度の隠れファンだった。

悪役令嬢はSランク冒険者の弟子になりヒロインから逃げ切りたい

恋愛
王太子の婚約者として、常に控えめに振る舞ってきたロッテルマリア。 尽くしていたにも関わらず、悪役令嬢として婚約者破棄、国外追放の憂き目に合う。 でも、実は転生者であるロッテルマリアはチートな魔法を武器に、ギルドに登録して旅に出掛けた。 新米冒険者として日々奮闘中。 のんびり冒険をしていたいのに、ヒロインは私を逃がしてくれない。 自身の目的のためにロッテルマリアを狙ってくる。 王太子はあげるから、私をほっといて~ (旧)悪役令嬢は年下Sランク冒険者の弟子になるを手直ししました。 26話で完結 後日談も書いてます。

お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

あーもんど
恋愛
ある日、悪役令嬢に憑依してしまった主人公。 困惑するものの、わりとすんなり状況を受け入れ、『必ず幸せになる!』と決意。 さあ、第二の人生の幕開けよ!────と意気込むものの、人生そう上手くいかず…… ────えっ?悪役令嬢って、家族と不仲だったの? ────ヒロインに『悪役になりきれ』って言われたけど、どうすれば……? などと悩みながらも、真っ向から人と向き合い、自分なりの道を模索していく。 そんな主人公に惹かれたのか、皆だんだん優しくなっていき……? ついには、主人公を溺愛するように! ────これは孤独だった悪役令嬢が家族に、攻略対象者に、ヒロインに愛されまくるお語。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆

【完結】ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!

As-me.com
恋愛
 完結しました。 説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。  気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。  原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。  えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!  腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!  私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!  眼鏡は顔の一部です! ※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。 基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。 途中まで恋愛タグは迷子です。

婚約破棄を望む伯爵令嬢と逃がしたくない宰相閣下との攻防戦~最短で破棄したいので、悪役令嬢乗っ取ります~

甘寧
恋愛
この世界が前世で読んだ事のある小説『恋の花紡』だと気付いたリリー・エーヴェルト。 その瞬間から婚約破棄を望んでいるが、宰相を務める美麗秀麗な婚約者ルーファス・クライナートはそれを受け入れてくれない。 そんな折、気がついた。 「悪役令嬢になればいいじゃない?」 悪役令嬢になれば断罪は必然だが、幸運な事に原作では処刑されない事になってる。 貴族社会に思い残すことも無いし、断罪後は僻地でのんびり暮らすのもよかろう。 よしっ、悪役令嬢乗っ取ろう。 これで万事解決。 ……て思ってたのに、あれ?何で貴方が断罪されてるの? ※全12話で完結です。

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。 学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。 だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。 窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。 そんなときある夜会で騎士と出会った。 その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。 そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。 結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。 ※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)  ★おまけ投稿中★ ※小説家になろう様でも掲載しております。

追放された悪役令嬢は貧乏になっても図太く生きますわ!

ワールド
恋愛
貴族の娘として生まれた公爵令嬢クラリッサ。 陰謀の濡れ衣を着せられ、華やかな社交界から追放――そして辿り着いたのは、ボロ小屋と畑だけの辺境村!? 「結構ですわ! 紅茶がなければハーブティーを淹れればいいじゃありませんの!」 貧乏生活でも持ち前の図太さで、村の改革に乗り出すクラリッサ。 貧乏でも優雅に、下剋上でも気高く! そんな彼女の前に現れたのは、前世(王都)で彼女を陥れた元婚約者……ではなく、なぜか彼の弟で村に潜伏していた元騎士で――? 「俺は見てた。貴女の“ざまぁ”は、きっとまだ終わっちゃいない。」 ざまぁとスローライフ、そしてちょっとの恋。 令嬢、辺境で図太く咲き誇ります!

処理中です...