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しおりを挟む──その数日後。
「え、えと……?」
目の前に迫る色とりどりの箱に、グステルが顔をひきつらせている。
ここはグステルの店のなか。
今日は彼女の傍らには猫のユキもいて。しかし、作業台の上でのんびりくつろいでいたグステルの愛猫は、扉が開いた途端、嫌そうに耳をパタパタ動かして警戒の眼差し。
その視線に睨まれているのは、キラキラとした微笑みを浮かべるヘルムート。
「こんにちは、ステラ。手の傷はどうですか?」
「…………」
再訪に困惑していると、ヘルムートは腕に抱えていた綺麗な箱を三つステラ、ことグステルに差し出す。
「これはお見舞いです」
「…………」
贈り物の向こうに見える笑顔に、グステルはひたすら沈黙するばかり。
あの思いがけなくも驚きに満ちた出会いの日の晩、グステルはかなり頭を悩ませた。
まず考えたのは、逃げること。
ここは身の安全第一で、店を畳んでユキを連れて街を出るか。
もたもたしていては、ヘルムートの口から父に居場所が伝わりかねない。
もしそんなことになったら、これまでの苦労が水の泡。グステルとユキの平穏な暮らしが終わり、獄死の予感に彼女は怯えることになるだろう。
だが、現実問題、店を放り出すのは難しいと思えた。
現在グステルは、イザベルからの注文以外にも数件のぬいぐるみ製作の依頼を受けていて、作りかけのものもある。
それらを放り出していくのは顧客の信頼を裏切ること。
こっそり転居だけして、密かに客に商品を送ることも考えたが……それでは引っ越し作業やらで時間を取られ、納期が遅れてしまう。
これまでずっと、納期を厳守して商売をしてきた彼女にとって、これは耐え難い事態である。
どうしたものかとああだこうだと考えた結果、結局彼女は街を出ることを一旦断念することにした。
ここは一度ヘルムートの出方を伺い、それから改めて対処法を考えようということで。
グステルは、ともかく今は注文を受けている商品を早く仕上げてしまおうと決めた。
とはいえ、もちろん事態がややこしくなるようならばさっさと逃亡するつもり。
ある程度の荷物はまとめ、いざという時のため数人の人物に宛てた手紙をしたためた。
ところが、だ……。
いざその翌日になってみると、事態は彼女が想定していたよりもよりややこしい方向へと転がりはじめてしまった。
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