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しおりを挟む泣きそうな顔をしたヴィムは主人に訴えた。
妹ラーラが帰ってこない兄をとても心配していること。
……というか、誕生日にも帰ってきてくれなかった兄にちょっと拗ねていること。
その理由を教えるまで逃がさないわよと天使のような微笑みを浮かべたラーラに、屋敷の小鳥部屋に連行され対面での尋問を受けたこと……。
「え? こ、小鳥部屋……?」
ヘルムートに訴える青年はあまりにも必死で。どんな非道な仕打ちをされたのだろうかと哀れみと疑問を持って見つめていると。さめざめと嘆く青年の口からは何やらメルヘンなワード……思わずグステルは口を挟んだ。
──ちなみに。なんだかんだと口うるさいイザベルはいるとややこしいので早々にお帰り願った。
令嬢はキィキィと不満を並べながら不承不承帰っていった。
グステルの不可解そうな様子に、主人の前で顔を両手で覆っていた青年が顔を上げて補足する。
「ぁ……あのですね、僕、鳥が怖いんです……それなのに、このお方ときたら、なんでもかんでも拾ってきちゃうんです。巣から落ちた雛とか……」
ヴィムはヘルムートを軽く睨み、なじるような顔でグステルにいう。告げ口されたヘルムートはムスッとした表情。
「……仕方ないだろう、巣がある場所が高すぎて親元に戻せず、手当も必要な状態だった。それに……飛べるようになったら責任を持って自然に返している」
そして慌てた口調でグステルに向かって弁解する。
「あ、あの、雛のさし餌も自分でちゃんと二時間ごとにやったのです。その他の自分の務めも怠りませんでした、ほ、本当です! けして無責任になんでも保護しているわけでは……!」
「……え……あ……ご、ご立派です……」
ヘルムートに訴えられたグステルが彼の勢いに押されるように頷くと、青年はホッとしたような顔。
そんなきまりの悪そうな彼の様子を見たグステルは。なんだかおかしいやら……彼が可愛く見えるやら。天敵ヘルムートの前でずっと緊張していたグステルは、なんだか肩からすとんと力が抜けたような気持ちになった。
と、半ベソのヴィムが恨み節を続ける。
「でもそのせいで今度はラーラ様が小鳥を好きになってしまって……当家には小鳥部屋が出来てしまったという訳なんです。……僕、鳥が怖いのに、ラーラ様はその部屋の真ん中にテーブルを置いて差し向かいで僕を問いただすんですよ……」
周りで小鳥がチュンチュンピーピーさえずる恐ろしい部屋の中で、ニコニコ微笑むラーラはとても怖かったと嘆くヴィム。
『うふふヴィム……? いったい何を隠しているの? 話してくれるまで絶対ここから逃がさないからね……?』
その状況を聞いたグステルとヘルムートは共に微妙な顔。
「……怖い……ですか……?」
グステルの想像では小鳥と美少女。天国のように思えるが……。
まあ、何が怖いかは人それぞれ。彼にとっては怖かったんだろう。
それで? と、ヘルムート。
「お前はラーラに口を割ったのか?」
ヘルムートに見据えられたヴィムは……やや斜め下を見ながら答える。
「……、……、……はい」
「………………」
それを聞いた黒髪の青年は、しかしどこかで予想もついていたのか。ため息を吐くのみ。
だが、そんな主人の重苦しい様子に慌てたのはヴィムである。
「し、仕方なかったんです! ヘルムート様はこちらに早く戻ってこいって僕に命じたのに、いつまでも小鳥部屋にはいられないし……ラーラ様は最近王太子殿下とうまく行っていないのかとてもピリピリなさっていて、笑顔がとにかく怖くて──」
そう真顔の主人に泣きすがった従者の言葉に、話をそばで聞いていたグステルが「え?」と声を漏らす。
「? 何か……?」
「……ヒロインラーラが……王太子殿下とうまく行っていない……? そんなバカな……な、なぜですか⁉︎」
グステルは唖然としてヘルムートの従者の顔を見た。
物語の諸悪の根源たる自分がいなくなれば、ラーラたちは安泰のはず。それなのに。
とても聞き流せず、つい真剣な顔でヴィムに詰め寄ると、青年はびっくりしたような顔で答えた。(※ヘルムートがちょっとムッとしている)
「……ぇ……あの……どうやら最近王太子殿下が公爵家のグステル・メントライン嬢と親しくしておいでのようで……ラーラ様はとても心配して──」
「…………はぁ⁉︎」
グステルは思わず叫ぶ。
ヴィムの言葉の意味が、カケラも理解できなかった。
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