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第3章 招かれざる客
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指揮官らしい少年の動きから考えても、副団長であることは間違いはないだろう。
しかし先日、騎士団の主な団員の紹介は受けたし、調査のために行動を共にもしたが、その中に彼はいなかった。
「あんな少年、この間いたか?」
「いいえ、いませんでした。あの時、『死の森』に討伐に出ている者もいるという話でしたから、彼がそうではないでしょうか」
「ああ、そうか。確かにそう言っていたな」
この国最強と謳われるラヴェラルタ騎士団の副団長を務めるからには、かなりの実力者に違いない。
だとすると、小柄で華奢な彼が、あの娘の正体ではないか。
ヴィルジールはそう考えたが、今こちらに見せている彼の後ろ姿が彼女と一致するかどうかは、見る角度が違うこともあって判然としなかった。
「あっ、彼が動きますよ!」
ジョエルの声に顔を上げると、遠くに小さく見える少年が剣を抜いたように見えた。
剣身に太陽の光を反射させながら、少年が身を翻す。
ヴィルジールは慌てて望遠鏡を目に当てた。
しかし、少年の動きが速すぎて、なかなか姿をレンズに捉えられない。
「うわあっ! 一体、何をやってるんだ!」
訓練の様子全体を見渡しているジョエルが悲鳴に似た声を上げる中、ヴィルジールは焦って少年の姿を探す。
「どこだ。どこにいる」
そして、ようやく彼の姿を円の中心に捉えた時、ヴィルジールは想像を絶する光景に呆然となった。
「う……そだろ」
気を抜くと、彼はあっという間に狭い視界から消えていく。
彼の姿を必死に追って、望遠鏡を動かす。
捉えた一瞬一瞬の彼の姿は、すさまじく過激で鮮烈。
背筋が寒くなるのと同時に、胸の奥が興奮で熱くなるこの感覚は久しく感じたことがなかった。
「似ている」
「例の娘にですか?」
思わずつぶやいた言葉に従者が反応した。
しかし、ヴィルジールの脳裏に一瞬浮かんだ姿は彼女ではなかった。
「例の娘? ……いや、分からない」
「違うのですか? しかし、あれだけの強さでしたら、相手が巨躯魔狼でも一人で倒せそうですよ」
確かに背格好と身軽さは似ているかもしれないが、それだけだ。
あの娘が実際に剣を振るう様子は見ていないから、動きが似ているかどうかの判断はできないのだ。
では、誰に?
闇の中を照らす希望の光であったあの者に?
いっそ殺されたいと願ったあの者に?
「いや、違う」
ヴィルジールは首を振った。
どう見ても違うではないか——。
しかし心の中でどう否定しても、あの時と同じように激しく心を揺さぶられる。
その理由と彼の正体を見定めようと、必死に望遠鏡を覗き込む。
夢中で彼の姿を追い求める。
もっと、もっと見たい。
しかし、激しく動き回る彼を望遠鏡で捉え続けることは難しすぎた。
「あーっ、くそっ! これじゃ埒があかない! ジョエル、行くぞ!」
しびれを切らしたヴィルジールは、望遠鏡を投げ捨てた。
「はい。そろそろ、ラヴェラルタ家に使いの者も到着するでしょうから、良い頃合いですね」
ジョエルは草むらの中から望遠鏡を拾い上げると、早足にその場を離れていく主の後を追った。
しかし先日、騎士団の主な団員の紹介は受けたし、調査のために行動を共にもしたが、その中に彼はいなかった。
「あんな少年、この間いたか?」
「いいえ、いませんでした。あの時、『死の森』に討伐に出ている者もいるという話でしたから、彼がそうではないでしょうか」
「ああ、そうか。確かにそう言っていたな」
この国最強と謳われるラヴェラルタ騎士団の副団長を務めるからには、かなりの実力者に違いない。
だとすると、小柄で華奢な彼が、あの娘の正体ではないか。
ヴィルジールはそう考えたが、今こちらに見せている彼の後ろ姿が彼女と一致するかどうかは、見る角度が違うこともあって判然としなかった。
「あっ、彼が動きますよ!」
ジョエルの声に顔を上げると、遠くに小さく見える少年が剣を抜いたように見えた。
剣身に太陽の光を反射させながら、少年が身を翻す。
ヴィルジールは慌てて望遠鏡を目に当てた。
しかし、少年の動きが速すぎて、なかなか姿をレンズに捉えられない。
「うわあっ! 一体、何をやってるんだ!」
訓練の様子全体を見渡しているジョエルが悲鳴に似た声を上げる中、ヴィルジールは焦って少年の姿を探す。
「どこだ。どこにいる」
そして、ようやく彼の姿を円の中心に捉えた時、ヴィルジールは想像を絶する光景に呆然となった。
「う……そだろ」
気を抜くと、彼はあっという間に狭い視界から消えていく。
彼の姿を必死に追って、望遠鏡を動かす。
捉えた一瞬一瞬の彼の姿は、すさまじく過激で鮮烈。
背筋が寒くなるのと同時に、胸の奥が興奮で熱くなるこの感覚は久しく感じたことがなかった。
「似ている」
「例の娘にですか?」
思わずつぶやいた言葉に従者が反応した。
しかし、ヴィルジールの脳裏に一瞬浮かんだ姿は彼女ではなかった。
「例の娘? ……いや、分からない」
「違うのですか? しかし、あれだけの強さでしたら、相手が巨躯魔狼でも一人で倒せそうですよ」
確かに背格好と身軽さは似ているかもしれないが、それだけだ。
あの娘が実際に剣を振るう様子は見ていないから、動きが似ているかどうかの判断はできないのだ。
では、誰に?
闇の中を照らす希望の光であったあの者に?
いっそ殺されたいと願ったあの者に?
「いや、違う」
ヴィルジールは首を振った。
どう見ても違うではないか——。
しかし心の中でどう否定しても、あの時と同じように激しく心を揺さぶられる。
その理由と彼の正体を見定めようと、必死に望遠鏡を覗き込む。
夢中で彼の姿を追い求める。
もっと、もっと見たい。
しかし、激しく動き回る彼を望遠鏡で捉え続けることは難しすぎた。
「あーっ、くそっ! これじゃ埒があかない! ジョエル、行くぞ!」
しびれを切らしたヴィルジールは、望遠鏡を投げ捨てた。
「はい。そろそろ、ラヴェラルタ家に使いの者も到着するでしょうから、良い頃合いですね」
ジョエルは草むらの中から望遠鏡を拾い上げると、早足にその場を離れていく主の後を追った。
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