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第3章 招かれざる客
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人間の持つ魔力量は人によって差はあるものの、限りがある。
その限られた魔力を効率良く使うために、強化の必要な箇所だけに魔力を集中させる訓練をしていたところ、体外に放出されている魔力を抑え込める者が出てきた。
魔力の流出を抑えることができれば、魔獣に近づいても察知されにくくなる。
そのためラヴェラルタ騎士団では、積極的にその訓練を行なうようになった。
ロランは訓練当初から筋が良く、今では集中を高めれば、放出される魔力を完全ゼロにできるようになった。
「おぉ!」
目の前の少年が纏っていた魔力が消えていく様子を感じ取り、ヴィルジールとジョエルが感嘆の声を上げた。
「今、どこに魔力を集中させている?」
マルクが確認すると「両足です」と返答がある。
「では、その場で跳べ!」
副団長の命令で、ロランはその場で自分の身長の五倍ほども高く跳躍し、上空で数回身体をひねって着地した。
着地と同時に集中力が切れたのか、彼の全身をじわじわと漏れ出した魔力が覆っていく。
「なるほど。しかし彼は、意識的に抑えていたのだろう? 君はどうなんだ。君は無意識でも、魔力が出ていないように思えるが」
「俺ほどのレベルになれば、意識しなくてもできる」
「では君も、魔力を放出しようと思えばできるんだな?」
「あぁ」
そう答えたものの、マルクは内心焦っていた。
マルクは魔力が一切体外に放出されることのない特異体質だ。
ロランのように魔力を抑えているのではなく、出したくても出せないのだ。
しかし、ヴィルジールは執拗に食い下がる。
「だったら、意識的に放出してみてくれないか? セレスタン以上の魔力を持っていると言うなら、それがどれほどのものか確認したい」
「丸太魔獣を見ていたなら、俺の能力は充分に分かっただろう。俺は魔力の無駄遣いをしない主義なんだ。まだ訓練が残っているから、失礼する」
マルクはくるりと背を向けた。
魔力を使わなければありえない動きを目の当たりにしたにも関わらず、わざわざ魔力を見せろと言う。
彼が一体何にそんなにこだわっているのかと、薄気味悪く思う。
これ以上関わってはいけない。
早くここから離れようと、一歩足を踏み出した時、ヴィルジールの冷ややかな声が聞こえてくる。
「本当は、出したくても出せないんじゃないか? 何も攻撃術を使えと言っている訳じゃない。自然に漏れ出す魔力を抑えるなと言っているだけだ。たったそれだけのことが、なぜできない。簡単なことだろう?」
真実を言い当てられ、何かがぶちりと切れた気がした。
「俺にそんなことをさせると、後悔するぞ」
背中越しに脅すように言うと、「後悔? させてみろ」と挑発される。
相手は一応王子様だから、穏便にすませるつもりだったけど、もういい!
言質は取った。
とことんやってやる!
マルクはにやりと笑うと振り返り、王族に忠誠を誓うかのようにさりげなく胸元に手を置いた。
「では、仰せのままに」
「やべっ!」
周囲のラヴェラルタ騎士団の者たちは、瞬時に全身に防御術を施し身構える。
次の瞬間、マルクの全身から強烈な魔力が発散された。
「うわっ!」
膨大な魔力を至近距離から無防備に浴びることになったヴィルジールは、弾き飛ばされたように数歩後ずさりし、そのまま尻餅をついた。
主のすぐそばにいたジョエルも同様に、土の上にぺたりと座り込んでいた。
「ご満足いただけましたか? では、急ぎますので。失礼」
マルクは彼らの無様な姿を確認すると満足げな笑みを浮かべた。
そして、恭しく礼を取ると、その場から立ち去った。
その限られた魔力を効率良く使うために、強化の必要な箇所だけに魔力を集中させる訓練をしていたところ、体外に放出されている魔力を抑え込める者が出てきた。
魔力の流出を抑えることができれば、魔獣に近づいても察知されにくくなる。
そのためラヴェラルタ騎士団では、積極的にその訓練を行なうようになった。
ロランは訓練当初から筋が良く、今では集中を高めれば、放出される魔力を完全ゼロにできるようになった。
「おぉ!」
目の前の少年が纏っていた魔力が消えていく様子を感じ取り、ヴィルジールとジョエルが感嘆の声を上げた。
「今、どこに魔力を集中させている?」
マルクが確認すると「両足です」と返答がある。
「では、その場で跳べ!」
副団長の命令で、ロランはその場で自分の身長の五倍ほども高く跳躍し、上空で数回身体をひねって着地した。
着地と同時に集中力が切れたのか、彼の全身をじわじわと漏れ出した魔力が覆っていく。
「なるほど。しかし彼は、意識的に抑えていたのだろう? 君はどうなんだ。君は無意識でも、魔力が出ていないように思えるが」
「俺ほどのレベルになれば、意識しなくてもできる」
「では君も、魔力を放出しようと思えばできるんだな?」
「あぁ」
そう答えたものの、マルクは内心焦っていた。
マルクは魔力が一切体外に放出されることのない特異体質だ。
ロランのように魔力を抑えているのではなく、出したくても出せないのだ。
しかし、ヴィルジールは執拗に食い下がる。
「だったら、意識的に放出してみてくれないか? セレスタン以上の魔力を持っていると言うなら、それがどれほどのものか確認したい」
「丸太魔獣を見ていたなら、俺の能力は充分に分かっただろう。俺は魔力の無駄遣いをしない主義なんだ。まだ訓練が残っているから、失礼する」
マルクはくるりと背を向けた。
魔力を使わなければありえない動きを目の当たりにしたにも関わらず、わざわざ魔力を見せろと言う。
彼が一体何にそんなにこだわっているのかと、薄気味悪く思う。
これ以上関わってはいけない。
早くここから離れようと、一歩足を踏み出した時、ヴィルジールの冷ややかな声が聞こえてくる。
「本当は、出したくても出せないんじゃないか? 何も攻撃術を使えと言っている訳じゃない。自然に漏れ出す魔力を抑えるなと言っているだけだ。たったそれだけのことが、なぜできない。簡単なことだろう?」
真実を言い当てられ、何かがぶちりと切れた気がした。
「俺にそんなことをさせると、後悔するぞ」
背中越しに脅すように言うと、「後悔? させてみろ」と挑発される。
相手は一応王子様だから、穏便にすませるつもりだったけど、もういい!
言質は取った。
とことんやってやる!
マルクはにやりと笑うと振り返り、王族に忠誠を誓うかのようにさりげなく胸元に手を置いた。
「では、仰せのままに」
「やべっ!」
周囲のラヴェラルタ騎士団の者たちは、瞬時に全身に防御術を施し身構える。
次の瞬間、マルクの全身から強烈な魔力が発散された。
「うわっ!」
膨大な魔力を至近距離から無防備に浴びることになったヴィルジールは、弾き飛ばされたように数歩後ずさりし、そのまま尻餅をついた。
主のすぐそばにいたジョエルも同様に、土の上にぺたりと座り込んでいた。
「ご満足いただけましたか? では、急ぎますので。失礼」
マルクは彼らの無様な姿を確認すると満足げな笑みを浮かべた。
そして、恭しく礼を取ると、その場から立ち去った。
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