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第1章 異世界 出会い編
第6話 草原と初依頼
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翌朝、私は宿を出てギルドへ向かった。昨日保護したエルフの少女をギルドでしばらく預かってもらうためだ。
少女はまだ怯えてはいたが、受付の人が優しく声をかけてくれて、少しだけ安心した表情を浮かべていた。
「行ってくるね。お留守番お願い。」
私が声をかけると、少女は小さく頷いた。雪風は心配そうに一度振り返り、それから私の足元へと戻ってくる。
---
今日、私たちは初めての依頼に挑む。
ギルドで受けたのは、『街の外れに広がる草原で薬草を採取する』という初心者向けのものだ。ミルフィーも同行してくれる。
フォレストの門を出ると、一面に広がる草原が朝日を浴びて輝いていた。
雪と雪風は楽しそうに駆け回りながらも、私とミルフィーの周囲を警戒するように歩いてくれている。
「薬草採取は根気がいる作業よ。普通なら半日かかるわ」
ミルフィーが説明してくれる。私はふと、鑑定スキルのことを思い出した。
「そういえば……鑑定で薬草を探せば、早く見つけられるかも?」
「えっ……そんなことができるの?」
ミルフィーが驚き、私に試すよう促す。私は周囲の草原を見渡しながら、静かに鑑定を発動した。
「鑑定!」
---
> 名称:ヒーリングハーブ
説明:回復薬の素材となる一般的な薬草。新鮮なものほど効果が高い。
草原の中でヒーリングハーブが淡く光って見える。
「これで一気に集められそう!」
さらに鑑定を続けると、別の薬草も発見した。
> 名称:リフレッシュリーフ
説明:疲労回復効果のある薬草。茶として煮出すと効果が高い。
> 名称:ポイズンアロエ
説明:毒消し薬の素材になるが、素手で触れると皮膚がただれるため注意。
「いろいろ見つかるね……これなら、すぐに依頼分以上集められそう!」
「ユミ、あなたの鑑定スキルは頼もしいわね。これなら時間が半分どころか、もっと短縮できるかもしれないわ」
私たちは鑑定を頼りに進み、どんどん薬草を採取していく。その後も次々と薬草を発見し、わずか一時間で予定の倍以上の量を集めることができた。
---
「……あれ?」
採取を終えかけたその時、草原の端で見覚えのある淡い光が目に入った。
鑑定をかけると、その名前が表示される。
> 名称:魔粒草
説明:空気中の魔力粒子を大量に取り込んだ薬草。調合すると高級回復薬が作れる。
「魔粒草……! 草原にも生えてるなんて……」
「ユミ……それ、高級素材よ。かなり高値で取引されるわ。それにしても魔粒草の事知ってるのね。」
「っ!?」
私は息を飲んだ。ミルフィーが不思議そうな目でこちらを見ている。
――魔粒草のことを説明するには、自分が“魔粒の森”にいたと話さなければならない。
けれど森の名を口にすれば、必ず疑われるだろう。
(だったら……いっそ本当のことを全部話したほうが………っ。)
私は心を決め、三人を見つめた。
「雪、雪風、ミルフィー……聞いて欲しい話があるの、実は、私、………この世界の生まれじゃないの。」
---
三人が息を呑む。私はぎゅっと拳を握りしめた。
「目が覚めたら知らない森にいて……元の世界では、普通の高校生だったんだ。
つまり私は、この世界で言う“転生者”なんだと思う。」
ミルフィーは大きく目を見開き、驚愕に声を震わせた。
「転生者……! じゃあ、あなたは“御使い様”なのね……!」
「御使い様……?」
「この世界では、転生者をそう呼ぶの。
そして召喚などで呼ばれた者は転移者、つまり“渡り人”とも言われているわ。
御使い様が現れた記録は、過去にほんの数人しかないのよ。」
雪と雪風は落ち着いた様子で私を見つめる。
「ユミ、私たちは契約の時にあなたの記憶の断片を受け取っていたから、驚きはしないわ。」
私は少し肩の力を抜き、ほっと笑みを浮かべた。
---
「実は、この魔粒草……前にも見たことがあるんだ。
最初にこの世界に来たとき、“魔粒の森”という場所の泉と花畑の場所で目覚めたの……その森で彷徨ってる時にこの薬草を見つけて集めていたの。」
「魔粒の森!? あんな危険な場所に……!」
ミルフィーが絶句する。
「そしてその森で、傷を負ってた雪と雪風と出会ったんだよ。それからテイムして、一緒に行動してるの。」
「なるほど……だから森の入り口であなたたちを見たとき、あんなにも自然な連携だったのね。」
ミルフィーは深く頷いた。
「私の話信じてくれるの?」
「えぇ、信じるわ。それよりも色々と辻褄が合うし、納得したわ。」
ミルフィーが笑顔を見せ、雪と雪風は、頷いている。私は、ホッとし胸を撫で下ろす。引き続き採取を進めた。
「森で集めた分も合わせて……全部で150本になったわ。」
私はアイテムボックスから魔粒草の数を確認した。
---
ギルドに戻り、受付で薬草を提出する。
「こ、これは……通常の二倍以上です!」
「それと……これも。」
私は魔粒草150本をカウンターに並べた。
受付嬢は目を見開き、声を失った。
「ま、魔粒草……150本!? す、すぐ上の者を呼んできます!」
受付嬢は慌てて奥へ走り去り、やがて戻ってきて深々と頭を下げた。
「応接室へどうぞ!」
「お、応接室……?」
ミルフィーも目を丸くして私と顔を見合わせた。
---
応接室に通され、ギルド上役が丁寧に言った。
「すみません。下だと騒ぎになりますので。魔粒草150本……この量は前例がありません。高額で買取させていただきます。」
金貨が山積みにされる光景に、私は息を呑む。
「こ、こんなに……!」
「ふふっ、ユミ。当分生活には困らないわね」
ミルフィーが微笑む。雪風は尻尾をぶんぶんと振って喜んでいた。
---
すべてを終えたあと、私は預けていた少女の元へ向かった。
扉を開けると、少女がぱっと顔を上げる。
「ただいま。頑張ってきたよ。」
私がしゃがみ込んで声をかけると、少女は小さな足で駆け寄り、私の服の裾をぎゅっと掴んだ。
「……おかえりなさい。」
その一言に、胸がじんわりと温かくなる。
雪風が少女の頬を鼻先でつつくと、少女はわずかに微笑んだ。
---
こうして私たちの初依頼は大成功に終わった。
しかし、魔粒草150本という異例の成果は、やがて街全体を巻き込む大きな騒動を呼ぶことになる――。
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少女はまだ怯えてはいたが、受付の人が優しく声をかけてくれて、少しだけ安心した表情を浮かべていた。
「行ってくるね。お留守番お願い。」
私が声をかけると、少女は小さく頷いた。雪風は心配そうに一度振り返り、それから私の足元へと戻ってくる。
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今日、私たちは初めての依頼に挑む。
ギルドで受けたのは、『街の外れに広がる草原で薬草を採取する』という初心者向けのものだ。ミルフィーも同行してくれる。
フォレストの門を出ると、一面に広がる草原が朝日を浴びて輝いていた。
雪と雪風は楽しそうに駆け回りながらも、私とミルフィーの周囲を警戒するように歩いてくれている。
「薬草採取は根気がいる作業よ。普通なら半日かかるわ」
ミルフィーが説明してくれる。私はふと、鑑定スキルのことを思い出した。
「そういえば……鑑定で薬草を探せば、早く見つけられるかも?」
「えっ……そんなことができるの?」
ミルフィーが驚き、私に試すよう促す。私は周囲の草原を見渡しながら、静かに鑑定を発動した。
「鑑定!」
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> 名称:ヒーリングハーブ
説明:回復薬の素材となる一般的な薬草。新鮮なものほど効果が高い。
草原の中でヒーリングハーブが淡く光って見える。
「これで一気に集められそう!」
さらに鑑定を続けると、別の薬草も発見した。
> 名称:リフレッシュリーフ
説明:疲労回復効果のある薬草。茶として煮出すと効果が高い。
> 名称:ポイズンアロエ
説明:毒消し薬の素材になるが、素手で触れると皮膚がただれるため注意。
「いろいろ見つかるね……これなら、すぐに依頼分以上集められそう!」
「ユミ、あなたの鑑定スキルは頼もしいわね。これなら時間が半分どころか、もっと短縮できるかもしれないわ」
私たちは鑑定を頼りに進み、どんどん薬草を採取していく。その後も次々と薬草を発見し、わずか一時間で予定の倍以上の量を集めることができた。
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「……あれ?」
採取を終えかけたその時、草原の端で見覚えのある淡い光が目に入った。
鑑定をかけると、その名前が表示される。
> 名称:魔粒草
説明:空気中の魔力粒子を大量に取り込んだ薬草。調合すると高級回復薬が作れる。
「魔粒草……! 草原にも生えてるなんて……」
「ユミ……それ、高級素材よ。かなり高値で取引されるわ。それにしても魔粒草の事知ってるのね。」
「っ!?」
私は息を飲んだ。ミルフィーが不思議そうな目でこちらを見ている。
――魔粒草のことを説明するには、自分が“魔粒の森”にいたと話さなければならない。
けれど森の名を口にすれば、必ず疑われるだろう。
(だったら……いっそ本当のことを全部話したほうが………っ。)
私は心を決め、三人を見つめた。
「雪、雪風、ミルフィー……聞いて欲しい話があるの、実は、私、………この世界の生まれじゃないの。」
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三人が息を呑む。私はぎゅっと拳を握りしめた。
「目が覚めたら知らない森にいて……元の世界では、普通の高校生だったんだ。
つまり私は、この世界で言う“転生者”なんだと思う。」
ミルフィーは大きく目を見開き、驚愕に声を震わせた。
「転生者……! じゃあ、あなたは“御使い様”なのね……!」
「御使い様……?」
「この世界では、転生者をそう呼ぶの。
そして召喚などで呼ばれた者は転移者、つまり“渡り人”とも言われているわ。
御使い様が現れた記録は、過去にほんの数人しかないのよ。」
雪と雪風は落ち着いた様子で私を見つめる。
「ユミ、私たちは契約の時にあなたの記憶の断片を受け取っていたから、驚きはしないわ。」
私は少し肩の力を抜き、ほっと笑みを浮かべた。
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「実は、この魔粒草……前にも見たことがあるんだ。
最初にこの世界に来たとき、“魔粒の森”という場所の泉と花畑の場所で目覚めたの……その森で彷徨ってる時にこの薬草を見つけて集めていたの。」
「魔粒の森!? あんな危険な場所に……!」
ミルフィーが絶句する。
「そしてその森で、傷を負ってた雪と雪風と出会ったんだよ。それからテイムして、一緒に行動してるの。」
「なるほど……だから森の入り口であなたたちを見たとき、あんなにも自然な連携だったのね。」
ミルフィーは深く頷いた。
「私の話信じてくれるの?」
「えぇ、信じるわ。それよりも色々と辻褄が合うし、納得したわ。」
ミルフィーが笑顔を見せ、雪と雪風は、頷いている。私は、ホッとし胸を撫で下ろす。引き続き採取を進めた。
「森で集めた分も合わせて……全部で150本になったわ。」
私はアイテムボックスから魔粒草の数を確認した。
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ギルドに戻り、受付で薬草を提出する。
「こ、これは……通常の二倍以上です!」
「それと……これも。」
私は魔粒草150本をカウンターに並べた。
受付嬢は目を見開き、声を失った。
「ま、魔粒草……150本!? す、すぐ上の者を呼んできます!」
受付嬢は慌てて奥へ走り去り、やがて戻ってきて深々と頭を下げた。
「応接室へどうぞ!」
「お、応接室……?」
ミルフィーも目を丸くして私と顔を見合わせた。
---
応接室に通され、ギルド上役が丁寧に言った。
「すみません。下だと騒ぎになりますので。魔粒草150本……この量は前例がありません。高額で買取させていただきます。」
金貨が山積みにされる光景に、私は息を呑む。
「こ、こんなに……!」
「ふふっ、ユミ。当分生活には困らないわね」
ミルフィーが微笑む。雪風は尻尾をぶんぶんと振って喜んでいた。
---
すべてを終えたあと、私は預けていた少女の元へ向かった。
扉を開けると、少女がぱっと顔を上げる。
「ただいま。頑張ってきたよ。」
私がしゃがみ込んで声をかけると、少女は小さな足で駆け寄り、私の服の裾をぎゅっと掴んだ。
「……おかえりなさい。」
その一言に、胸がじんわりと温かくなる。
雪風が少女の頬を鼻先でつつくと、少女はわずかに微笑んだ。
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こうして私たちの初依頼は大成功に終わった。
しかし、魔粒草150本という異例の成果は、やがて街全体を巻き込む大きな騒動を呼ぶことになる――。
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