弓術師テイマー少女の異世界旅 ~なぜか動物系の魔物たちにめちゃくちゃ好かれるんですけど!?~

妖精 美瑠

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第1章 異世界 出会い編

第11話 紅牙と決戦 前編

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 街の明かりが遠ざかり、夜の闇が一行を包み込む。私たちは峡谷地帯へと続く街道をひたすら進んでいた。冷たい夜風が肌を刺し、張りつめた空気が胸を締めつける。

「……この先に紅牙の拠点があるんだよね?」

 ユミが問いかけると、ミルフィーが険しい表情で頷いた。

「ええ。峡谷を天然の壁として利用しているから、外からは見つけにくいの。
 でも……内部はまるで要塞よ。」

「要塞……。」

 その言葉を聞くだけで、背筋がぞわっとする。


---


「姉さんを救えたのは奇跡だったわ。でも……奪われた仲間はまだ紅牙の手の中にいる。」

 ミルフィーの声には、怒りが隠しきれずに滲んでいた。

「だからこそ、ここで決着をつける。
 紅牙を、絶対に潰す!」

 その強い言葉に、私も胸がぎゅっと熱くなる。

「私も……がんばる! 雪、雪風、みんなで一緒にやろう!」

「ワォンッ!」

「グルルルッ!」

 雪と雪風が力強く吠え、前進の合図を告げる。その声が峡谷に反響し、決戦への覚悟をさらに固めた。


---


 峡谷に差し掛かると、周囲の地形が急激に変わった。高い岩壁が両側から迫り、月明かりさえほとんど届かない。

「……すごい場所だね、これ……。」

 私はスマホを取り出し、マップスキルを起動する。立体地図には、峡谷内に赤い点がいくつも浮かび上がっていた。

「敵、多いなぁ……これはもう避けて通るとか無理だね。」

「ええ。回り道はないわ。正面突破するしかない。」

 ミルフィーが矢を番え、雪と雪風が低く唸る。

「よし……みんな、気合入れていこう!」


---


 暗闇の中から複数の影が飛び出してきた。

「侵入者だ! 紅牙の拠点を荒らすつもりか!」

 統制された動き、鋭い眼光。ただの盗賊じゃない……これは訓練された戦闘員だ!

「雪! 雪風! 右はお願いね!」
「ミルフィーは左を頼むよ!」

 私が指示を飛ばすと、雪と雪風が咆哮を上げて敵に突撃する。ミルフィーの矢が正確に敵を射抜き、私は後方から矢を放って援護した。

「よし、いい感じ! このまま押し切ろう!」

 しかし――。

「えっ……まだ来るの!?」

 峡谷の奥から、さらに赤い点が大量にマップに表示された。

「数が多すぎるよ! 紅牙って、やっぱりただの盗賊じゃないんだね……!」

 焦りながらも、全員が全力で敵を蹴散らして進む。激戦の末、ようやく敵を殲滅した時には、息が荒くて胸が苦しいほどだった。

「ふぅ……なんとか倒せたね。」

「でも、まだ本番はこれからよ。」

 ミルフィーの真剣な声に、私も気持ちを引き締める。


---


 一方その頃、峡谷の奥深く――紅牙の拠点。薄暗い広間には、鎧をまとった戦闘員たちと、一人の女性が立っていた。深紅の衣をまとい、鋭い視線を放つその女性こそ、紅牙幹部カリナ。

「……侵入者、ですって?」

 カリナは不敵に笑みを浮かべた。

「はい。前線部隊が全滅したとの報告が。」

「ふふ……なるほどね。まさかこのタイミングでギルドじゃなく、よそ者が来るなんて。」

 カリナは椅子から立ち上がり、踵を鳴らして部下たちを見下ろす。

「“御使い様”とやらが混じっているらしいじゃない。……面白いわね。必ずここで仕留めて、連れてきなさい。」

「はっ!」

 部下たちが一斉に頭を下げる。


---


 峡谷内をさらに進むと、紅牙の本拠地が目前に迫ってきた。通路のあちこちで敵が待ち伏せしているが、雪と雪風が先陣を切り、ミルフィーと私が連携して次々と打ち倒していく。

「はぁっ……! どんどん出てくるよ!」

「数だけじゃないわ。戦い慣れてる……。」

 息を整えながらも、私たちは一歩も引かずに奥へと進む。


---


 その時、通路の先に、ふてぶてしい体格の男が現れた。金色に装飾された服、太った体を揺らしながら歩く――奴隷商ギルデアだ。

「ふん……あのエルフどもを奪った連中か。お前らにはここで死んでもらう。」

 ギルデアは嘲笑を浮かべると、背後の部下に指を鳴らして命じた。

「お前たち! こいつらを片付けろ! 私は先に行く!」

「ちょっ、待ちなさいよっ!!」

 ミルフィーが叫ぶが、ギルデアは余裕の笑みを浮かべたまま、さらに奥へと消えていった。

「ユミ! あいつを追わないと!」

「うん! でもまずはこの人たちをどうにかしないと!」


---


「グルルルッ!!」

 雪と雪風が前へ飛び出し、部下たちの前衛を蹴散らす。ミルフィーが素早く矢を放ち、私も後方から援護射撃。

「くぅっ……まだ来る! でも負けないんだから!」

 激しい戦闘の末、敵は次々と倒れていき、通路は静寂を取り戻した。

「よし……これで!」

「急ごう! ギルデアが逃げ切っちゃう前に!」

 私たちは全力で走り、拠点の最奥へと向かう。


---


 拠点の最奥に辿り着いたその時――。そこにはギルデアと並び立つ、紅牙幹部カリナの姿があった。

 深紅の衣をまとい、冷たい微笑を浮かべるカリナ。その存在感は、ギルデアとは比べ物にならないほどの威圧感を放っていた。

「……やっと来たわね。」

 カリナはゆっくりと一歩踏み出す。

「ギルデア、あなたは下がっていなさい。ここからは私が相手をするわ。」

「くっ……!」

 ミルフィーが怒りで矢を握りしめる。
 雪と雪風も牙を剥き、低く唸った。

「ここで……全部終わらせるんだから!」

 私たちとカリナ――紅牙との最終決戦が、ついに幕を開ける。


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