愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径

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第一章

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「それで『廃国の王族』はどうなったの?」
「知性のある者たちは叙爵されて貴族となり、武芸に秀でた者たちは数々の手柄を立てて立身出世を果たしたわ。殺すだけが解決策じゃないのよ」
「すべてにおいて『豊かな国』だったからな、相手国は。国同士の交流や貿易。学業や生産業においても。平民でもある程度の権限は持っていた。逆に、廃国は『王族は神。貴族はまあまあ。平民は虫ケラ同然の生命』っていう驚いた差別社会だったからな」
「私たちが最初にやったのは『人間みな平等』の精神を植え付けることだったわ。生まれた時から『差別が当たり前』でしたからね。平民は教育も受けていませんでした」

そのため、国から教員を集めて領都に学院を作って、王族や貴族、平民の未成年は全員学生として同じ教室で同じ教養を受けた。知識や経験を経た学生たちは卒業後に様々な職を選んだそうです。
貴族として生きるより、職人などの平民になることを望む子息が多く、令嬢たちも、カフェの給仕などの職につきました。中にはどこかの店の看板娘となった令嬢もいたそうです。
そして元・王様と元・王妃は婚姻を解消し、元王妃は不貞相手のひとりだった将軍の手引きで罰を受ける前に姿をくらませた。消されたとも自ら死んだとも言われていましたが、五年後に将軍は東方の敵国から軍を率いて現れ戦場で散っていったそうです。元・王妃は途中で将軍を捨てて北方の国へ逃げていました。そして貴族に取り入って新しい身分を作り、その国の王を籠絡して王妃につこうとしていたようです。しかし忠臣に気付かれて捕らえられて、他の死刑囚と共に公開処刑にされました。むくろは朽ち果て崩れ落ちるまで、刑場に吊り下げられていたそうです。
国へは、元・王妃の身分や処遇を確認する問い合わせがきたそうですが、「同盟国だった廃国の王妃だ。しかし、我が王城の広間で行っていた不貞行為が明るみになり、婚姻は解消されて平民となった。そして罰を受ける前に不貞相手のひとりと逃亡した」と伝えられました。

「招かれた他国の王城の広間で不貞行為を行っていたように誤解されそうですね」
「さあな。わざと誤解を招く言い方をしたのかもしれんし、北方の国がどう受け取ったかは知らん」

国に戻されても『平民の罪人としての処刑』が決まっている旨を伝えたため、逃亡を防ぐために北方の国で即時処刑されたそうです。元・王妃は何故か『国が自分を助けてくれる』と思っていたそうで、刑場でも「触らないで! 私は王妃よ!」と喚き散らす醜態を見せていたようです。しかし執行人から廃国での不貞行為や同盟国の王城の広間での不貞行為発覚や逃亡など『北方の国以外の犯罪行為』を次々と暴露されました。そして国から「『国を滅ぼした悪妃あっひ』の称号を贈る」と読み上げられると、悲鳴を上げて泣き叫ぶという醜い最期だったそうです。

ちなみにメイビンは『元・王族のひとり』です。成年だったメイビンは、おじい様とおばあ様を慕い、押しかけ執事となったそうです。その時に恋人だった伯爵令嬢と別れようとしたものの、混乱の最中さなかで行方知れず。騒動が落ち着いた頃に、おばあ様の『押しかけ侍女』となって目の前に現れたのだそうです。そしてメイビンの末娘ですが、他国から送られた刺客を生きて捕まえられるほど身体能力が高かったのですが、捕まえた刺客を改心させて結婚したそうです。そして、二人の素質を持った娘に、父親は『刺客の技術』を。母親は『体術』を。そして生まれたのが、『戦闘に特化した私の専属侍女』メイベルです。メイビンの実孫で、私が生まれた時に専属侍女として選ばれ、私が三歳、メイベルが八歳の時からずっと側で仕えてくれています。

ああ。『元・王様』ですか?
同盟国の王城、それも王様の前で抜刀した罪により、五年間の『鉱山労働』ですよ。素直に国を明け渡したため、減刑されたのです。強制労働から解放された十年後に流行り風邪で亡くなりました。その年は薬が効かない風邪だったため国内外で広く流行し、沢山の方が亡くなったそうです。今は新薬が出来て治る病気になりました。
残念ながら、病気には回復魔法が効かないのです。今では病気には治癒魔法が当たり前ですが、その当時はまだ治癒魔法は確立されていなかったのです。今でも年配者や無知の人の中には「回復魔法と治癒魔法は同じもの」と信じている人がいるくらいです。
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