愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径

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第四章

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初めてアイシアが離宮に行ったときにトルステアが抱いていたのは弟のレンデムだった。
青年になった彼は、ある国に望まれて国王になった。すでに大魔導師となっていた姉アイシアの弟という立場だけで選ばれたことに気付いていたレンデムは、準備期間の間に国の情報を集めて裏事情を、『新王じぶんと王女を結婚させる』計画を知った。彼には学院時代に婚約した女性がいる。女性に異国へと渡ることを告げたときにある選択を婚約者に与えた。

「嫌なら婚約を破棄してもらってもいい」

生活環境が変われば苦労も多くなる。それをわかっていて、純愛で結ばれた婚約者を連れていくなどできなかった。そんなレンデムに婚約者は頬を膨らましてねた。

「私は『国王になる男』を好きになったのではありません。ましてや『楽をさせてくれる男』や『高価な物を惜しげも無く買い与えてくれる男』なんて、この世界には掃いて捨てるほどいます。─── 私が愛したのは、広い世界にたった一人しかいないレンデム、あなたなのです」

そんな拗ね方をされてはレンデムも心を決めた。

「私と共に苦難の波を乗り越えていただけますか?」
「もちろんですわ」

レンデムの言葉で微笑みと共に機嫌を戻した婚約者にレンデムは我慢できず、結婚してから海を渡った。
二人の結婚にモーリトス国は湧いた。婚約者は大賢者の妹。あの日、感動を通り越した涙の親子対面で眠るレンデムを抱いていたトルステアのお腹にいたのが彼女だ。
大賢者と大魔導師、そして彼女たちを中心に続いた家族ぐるみの付き合い(プラス陛下)で芽生えた恋は学院で開花した。二人を見守っていたのは国民全員。だからこそ、結婚式が開かれたと知れ渡ると国中で祝宴が開かれたのだった。
レンデムが国王となりモーリトス国の従属国となってから世界各国との国交が始まった。二人に可愛い王女が生まれると国民は今後の国の繁栄を喜びあった。この国は長子継承で、王女は次代を担う国の宝として優しくそして賢く育った。レンデムは三男四女をもうけ、百年の治世で国を整えると第一王女に生前譲位して隠居した。

「お父様、ずるいですわ! お父様は精霊様の血を引いているじゃないですか! あと百年は王位を続けてくださっても宜しいではないですか!」
「何をいう。私は荒れた国を整えて、ここまで生活を安定させた。ここからは次世代の女王が繁栄させていくんだ」
「お父様、本音は?」
「今まで苦労させてきた愛する妻を労り、残りの人生を楽しく幸せに生きていく」
「お父様は伯母様の血で先祖返りなさってますわよね」
「そうだな」
「お母様も伯父様の血で先祖返りなさってますよね」
「ええ、そうね」
「先祖返りの平均寿命は一千年ではございませんでした?」
「ああ、その二人の子供だからそなたも一千年は生きるぞ」
「お二人とも、あと五百年は国政に関わってください!」
「「却下」」
「何か次世代に引き継げる大きな成果をあげたら、私みたいに引退するんだな」

そう言いつつレンデムは妻と同じく愛しい我が子のため、三百年の治世に協力してモーリトス国へ戻ってきた。

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