悪竜の騎士とゴーレム姫【第12部まで公開】

雨宮ソウスケ

文字の大きさ
199 / 399
第7部

第一章 ハウル公爵家②

しおりを挟む
 コウタ達は、声がした方に振り向いた。
 そこには、軽い拍手をしながら近付いてくる老人が一人。
 胸板までおろした赤い髭が印象的なその人物の名は、ジルベール=ハウル。
 ハウル公爵家の現当主。アルフレッドの祖父に当たる老人だ。


「お爺さま。おはようございます」


 アルフレッドが頭を下げる。
 コウタとジェイクも「おはようございます」とアルフレッドに倣い、腰をついていた三人の兵士達も慌てて立ち上がって敬礼した。


「うむ、良き朝だ」


 ジルベールは満面の笑みでうんうんと頷く。


「アルフの早朝修練の時間帯と思い、執務前に少し覗いてみたのだが、思いがけないモノが見れて良かったぞ」


 そう言って、ジルベールはコウタとジェイクの肩をポンと叩いた。


「実に素晴らしかった。ヒラサカ君。そしてオルバン君も」


 お世話になっているハウル家の当主に絶賛され、コウタ達は内心でかなり気恥ずかしい気分になったが、ご機嫌のジルベールは構わず続ける。


「ヒラサカ君の力量は想像以上だったが、オルバン君も中々のモノだ。少なくともその歳でその領域に踏み込める者など稀だろう」


 まるで思わぬところで宝石でも見つけたように瞳を輝かせるジルベール。
 そして孫の方にも目をやり、


「アルフが目をかけていたことは知っていたが、よもやこれほどとはな。彼らはお前の良き好敵手相手になりそうだな、アルフよ」

「はい。僕もそう思います」


 アルフレッドは素直な気持ちで応えた。ジルベールは満足そうに首肯する。


「修練相手ならば儂やサウスエンドでも務まる。しかし、力量を高め合う好敵手ともなるとまた違う話になるからな。アルフは突出した才ゆえにその点を心配しておったが杞憂に終わったようだ」


 そこで初めてジルベールは兵士達に目をやった。
 主人の赤い瞳に射抜かれて三人は硬直する。が、


「案ずるな。責めるつもりはない。儂の目から見てもこの少年達は群を抜いておる。お前達では荷が重かろう。もう下がっても良いぞ」


 特に叱責することもなく、兵士達を下がらせた。
 そして、ジルベールは再びコウタ達を見やり、


「うむ。もう一度言うが実に素晴らしかった。ヒラサカ君。オルバン君。これからもアルフと仲良くしてやってくれ」

「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」


 コウタが頭を下げ、ジェイクも「ウス。よろしくお願いします」と倣った。
 ジルベールはますます笑みを深める。


「ところでヒラサカ君は、元々は皇国民だったそうだな。残念ながらオルバン君は違うがそれも大きな問題ではない。ふむ。これはセッティングに忙しくなりそうだ」

「……? セッティング?」


 コウタが首を傾げた。ジェイクも何の話なのか眉根を寄せていた。
 その傍ら、アルフレッドだけは深々と嘆息していたが。
 と、その時だった。


「旦那さま」


 不意に第三者の声が響く。
 いつしか近付いていたハウル家の執事だ。


「そろそろお時間です」

「……む。そうか」


 ジルベールはムッとした表情で執事を一瞥する。


「仕方ないな。さて。名残惜しいがヒラサカ君。オルバン君」

「あ、はい」「ウス」

「儂はここで失礼する。二人は滞在を楽しんでくれ。ああ、それと必ず相応しい者を選ぶので期待もしていてくれ」

「え? 相応しい者……?」


 コウタが眉根を寄せるが、ジルベールは何も答えず、最後まで好々爺の笑みを崩さすに去って行った。コウタとジェイクはしばしジルベールの後ろ姿を見つめていたが、


「最後のってどういう意味なの?」


 唯一残ったアルフレッドに尋ねてみる。
 すると、アルフレッドはとても困り果てた笑みを見せた。


「その、お爺さまの悪癖って言うか……」


 と、説明しかけた時だった。



「相変わらずね。お爺さまは」



 再び掛けられる新たな声。
 コウタ達は声の方へと振り向いた。
 と、そこにいたのは赤い髪と同色の瞳を持つ美女。
 しなやかさを宿すスレンダーな肢体に、白いサーコートと、黒い騎士服を纏うアルフレッドの実姉。コウタ達を皇都まで案内してくれたミランシャ=ハウルだ。


「コウタ君。ジェイク君。気をつけなさい」


 腰に手を当て彼女は言う。


「あなた達はお爺さまに気に入られたみたいだから。お見合いさせられるわよ」

「……え?」「はあ?」


 コウタとジェイクは目を丸くした。


「あのはた迷惑な爺さんはね。昔から優秀な人材を見つけると、すぐに身内に引き込みたがるのよ。二人ともお眼鏡にかなっちゃったみたいね」


 ミランシャは肩を竦めながらそう告げた。


「特にコウタはヤバいよ」


 アルフレッドが疲れた口調で姉に続く。


「お爺さま、コウタが来る前から見合いの候補者を見繕っていたし。いきなり知らない女の子と引き会わされるかも」

「ええッ!? 何それ!?」コウタが目を見開き、「うっへえ、それマジかよ」と、ジェイクもまた渋面を浮かべる。

「じゃあ、さっきので、オレっちまで目を付けられたってことなのか? うわあ、失敗したな。そりゃあ断るのが面倒くさそうだ」

「あら?」ミランシャが目を瞬かせた。「それはちょっと意外かも。最初から断るのが前提なの? コウタ君はともかく、ジェイク君は相手によっては受けても良いかなぐらいの感じたと思ってたわ」

「はは、そいつはあり得ませんよ。何故ならオレっちの女神は一人だけっすから」

「え? だれだれ? もしかしてリーゼちゃん?」

「それは僕も初耳だ。誰だい? 僕らが知っている人なのかい?」


 と、食いついてくるハウル姉弟。
 コウタは一人苦笑を浮かべていたが、同時に少しそわそわし始めていた。
 実はこの後コウタには重要な用事があるのだ。ハウル邸に来てからもはや日課になっている用事。その時間がそろそろ近づいているのである。


「お、コウタ。いつもの用事か?」


 と、コウタの落ち着かない様子に気付いたジェイクが声を掛ける。
 コウタは「うん」と頷き、


「ごめん。ボクは先に館に戻っても良いかな」

「あ。待って」


 ミランシャがコウタを止める。


「だったらアタシ達も一緒に戻った方がいいわ。そろそろ朝食だしね。ジェイク君の話は歩きながらでも聞かせてくれるかしら?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...