悪竜の騎士とゴーレム姫【第12部まで公開】

雨宮ソウスケ

文字の大きさ
215 / 399
第7部

第五章 面談②

しおりを挟む
 一方、その頃。
 場所は変わって皇都の五番地。
 主に青果店や食品などを扱う店舗が軒を連ねる地区の大通りに、リーゼとアイリ、そして零号はやって来ていた。
 そこにはジェイク達、他の同行者達の姿はない。ジェイク達は本来の予定である二十六番地にある大規模工房の見学に行っているからだ。
 今回の来訪はあくまで研修の一環。レポートの作成も必須なのである。
 しかし、今日だけはリーゼ達は別行動を取っていた。

 ――理由は明確。メルティアのためだ。

 コウタからは気にしなくていいと言われたが、メルティアは大切な友人だ。
 レポート作成をジェイクに。彼のサポートをシャルロットに託し、リーゼ達はメルティアが元気になる料理を作ろうと、食材探しのためにこの番地に訪れたのである。


「流石は皇都。ここも盛況ですわね」


 リーゼは周辺を見渡した。
 ここは観光客とは縁のない生活のための地区。
 けれど、大通りに並ぶ店舗数も、その人通りの多さも、昨日訪れた十三番地と比べても見劣りはしない。


「これなら良い食材が見つかりそうです」

「……うん。そうだね」


 と、手を繋いだアイリがこくんと頷く。が、すぐに顔を上げて。


「……けど、リーゼは料理が出来るの?」

「その点は大丈夫ですわ。確かに家事全般は貴族の仕事ではないと思われているのかも知れませんが、料理とは生きていく上では欠かせない重要な仕事です。その手ほどきは当然受けておりますわ」


 言って、慎ましい胸を張るリーゼ。
 彼女は実はシャルロットの直弟子であり、結構な腕前だったりするのだが、普段は家事全般をシャルロットが受け持つため、このことはコウタも知らない事実だった。


「少なくとも、わたくしは暗黒物質生成装置ではありませんわ」

「……意外。ううん。逆に完璧超人のリーゼらしいかも」


 そう呟いて、アイリは笑った。
 リーゼもつられて微笑む。


「ところで、メルティアの好きな料理とは何でしょうか?」


 と、メルティアの選任メイドに尋ねてみたら、


「……う~ん。メルティアに好き嫌いはないから……。ただ、あえて好きなのを上げると甘い物かな。特に糖分が多いのが好きだよ」

「糖分ですか」

「……うん。何かにつけてコウタが甘やかすから。ケーキとかアイスとかは、しょっちゅう食べてるよ。週三ぐらい」

「えっ? そんなペースで食べてあのスタイルなのですか?」


 リーゼの頬が強張っていく。今回の研修旅行では共に入浴することも多かったので知っているのだが、メルティアのスタイルはますますもって磨きがかかっている。とても同い年とは思えないぐらいの神懸かったプロポーションだ。
 それを、まさかそんな自堕落な生活で手に入れているとは……。


「なんて理不尽ですの……」

「……気持ちは分かるよ。でも、こればかりは――」


 そこでアイリは嘆息する。


「……メルティアは莫大な糖分のほとんどを脳に配分しているみたいだし、それ以外の不要な分はおっぱいに溜め込む機能まであるから」

「……何とも羨ましい機能ですわね」


 リーゼの顔が、ますます強張ってくる。
 一方、アイリは額に手を当ててかぶりを振った。


「……真面目な話、獣人族って基本的に太らない体質らしいよ。しかも女性の場合だと成長は人並みだけど、老化は凄く遅いんだって。個人差はあるけれど五十代なのに見た目が二十代半ばぐらいって人も多いらしいし」

「――え? 本当ですか? その話」


 唐突な話に、目を丸くするリーゼ。
 アイリは幼女らしくもない苦笑を浮かべた。


「……魔窟館の図書館に本があったよ。獣人族って数が少ないんだって。だから一説だと女の人は沢山子供を産むためにいつまでも若いんだって」

「種の存続のためですか……。ある意味、戦闘民族らしいですわね」


 リーゼは納得しつつも小さく嘆息した。
 それから、あごに指先を当てて。


「では、メルティアも将来的には若いままなのですか?」

「……メルティアはハーフだから分からないよ。ハーフの事例までは載ってなかったし。ただその可能性は高いと思うよ」


 メルティアは、とても濃く獣人族の特徴を受け継いでいる。
 何気に身体能力も高く、父親の方にも獣人族の血は流れている。かなり純血種に近い体質を持っていると考えるのが自然だった。


「……だから、私の若さのアドバンテージもあまりないかも」

「いえ。その思考は……アイリ。あなたは本当に九歳児なのですか?」


 と、リーゼが呆れるようにツッコむ。
 すると、


「……乙女タチヨ」


 今まで沈黙して付いてきていた零号が初めてしゃべった。


「……ソロソロ、リョウリヲキメヨウ」


 と、建設的な意見を告げる。
 リーゼ達は互いの顔を見合わして。


「まあ、そうですわね」

「……うん。そうだね。ケーキでも作る?」


 二人が相談しようとした矢先だった。



「……あら? あなたって、もしかしてリーゼちゃん?」



 それは唐突なことだった。
 唐突に、後ろから声を掛けられたのだ。
 名前まで呼ばれてリーゼは振り向いた。アイリもまた振り向く。
 ――と、そこにはリーゼの見知った人物がいた。


「え? あなたは……」


 目を丸くする。
 思いがけない場所での再会に、驚くリーゼだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...