悪竜の騎士とゴーレム姫【第12部まで公開】

雨宮ソウスケ

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第12部

第四章 招待……?③

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 その状況に、即座に反応したのは三人だった。

 今代の《七星》の一人であるアルフレッド=ハウル。
 元《九妖星》の一人、リノ=エヴァンシード。
 そして、コウタ=ヒラサカの三人だ。

 ここいるメンバーの中でも、別格に戦闘力が高い三人。
 ただ、その中でも動いたのは、コウタだけだった。
 この行動の差は、アルフレッドとリノが出遅れたというより、コウタが何も考えずに飛び出したためだ。

 ――この事態が何なのか。
 二人と違って、それを考える前に、彼女の元へと跳んでいた。

「アヤちゃん!」

 彼女の名を呼び、その腕を掴む。
 そして足元の闇が広がる前に、アヤメを抱き寄せて後方に跳んだ。

「アヤちゃん! 大丈夫!?」

 しっかりと。
 アヤメを両腕で抱きしめて、彼女の無事を確認する。
 一方、アヤメは、

「……コウタ君は、やっぱり優しいのです」

 彼の腕の中で、アヤメは幸せそうに目を細めた。
 ――が、すぐに申し訳なさそうな顔をして。

「けど、ごめんなさいのです。後で叱ってください」

「え? 叱るって――」

 と、コウタが眉をひそめた瞬間だった。
 ――フオン。
 先程までアヤメの立っていた場所にあった闇。
 それが、再びアヤメの足元で広がったのだ。
 それは三セージルほど広がって、

「……ン?」

 偶然にも、サザンⅩの足元まで届いた。
 そしてその闇は、コウタとアヤメ、ついでにサザンⅩを呑み込み始めた。
 闇はまるで蟻地獄のようであって、中心にいるコウタたちは早く沈み、端にいたサザンⅩが「……ン? ン?」と困惑しながら、中央に引き寄せられていた。

「コ、コウタ!?」

 この事態に、愕然とした声を上げたのは、メルティアだった。

「――チイ! 犀娘! やってくれる!」

 リノがすぐさま動き出す。アルフレッドも「コウタ!」と叫んでそれに続き、

「コウタさま!」「おい、コウタ!」

 一歩遅れて、リーゼとジェイクも立ち上がる。
 四人は、コウタの元に駆け寄ろうとするが、

「ダ、ダメだよ! みんな!」

 すでに、腰まで闇に沈んだコウタが止めた。

「状況が分からない! 近づいちゃダメだ!」

 次いで、コウタは叫ぶ。

「ジェイク! アルフ! メルを頼む――」

 そう告げる途中で、コウタとアヤメは完全に闇の中に消えた。

「コウタ!?」

 メルティアが青ざめる。
 と、サザンⅩが闇の中央に来た。
 その頃には、闇はサザンⅩの胴体より少し大きいぐらいの幅しかなかった。
 後を追おうにも、幅が狭すぎる。

「サザンⅩよ!」

 リノが命じた。

「コウタの後を追え!」

「……ム! リョウカイシタ!」

 ゆっくりと沈むサザンⅩが答える。
 が、ふと思い出したように、

「……ムム! コレハ! コノ、シチュエーションハ! アニジャヨ!」

 零号に声を掛けた。

「……シャシンヲ! シャシンヲ、トッテクレ!」

 そう告げた。零号は何かを察したように、「……ウム! 任セヨ!」と答える。
 そうして、皆が唖然とする中、サザンⅩはゆっくりと沈んでいき、

「……アイル、ビー、バッ――」

 と、言いかけたところで、頭まで沈んだ。
 唯一、突き出た腕で親指を立てて、サザンⅩは消えていった。
 その瞬間は、零号によって見事に写真に収められている。

「――コウタッ!?」

 メルティアが、悲壮な声を張り上げる。
 リーゼたちは、ただただ唖然としていた。
 アンジェリカとフランは、事態が全く理解できずに目を丸くしていた。
 けれど、そこで一人だけ動く者がいた。

「……ん。大丈夫。まだ行ける」

 そう呟いて、スカートを両手で掴み、今にも閉じそうな闇の上に大きく跳躍する。
 誰よりも小柄な幼女。アイリである。
 全員が言葉を失っている中、小柄な幼女は姿勢を真っ直ぐに、勢いをつけて、まるで水面にでも飛び込むように、闇の中へと両足を差し込んだ。
 そして、そのまま、本当に着水するかのように、ちゃぽんと消える。
 闇が完全に閉じたのは、その数秒後だった。
 数瞬の沈黙。

「「――アイリ!?」」

 メルティアとリーゼが、仰天の声を上げる。
 どうやら、アイリだけは、まだ後を追えると判断したようだ。

「あの状況で、コウタの傍に行くことを即断しおったか。やるのう。ロリ神め」

 リノは、腕を組んで唸っていた。

「いやいやいや!」

 ジェイクが闇の消えた場所に来て、手で触れた。

「何だったんだよ! 今のは!」

 ジェイクは、リノに目をやった。
 裏社会に生きた彼女なら、何かを知っていると思ったのだ。
 しかし、リノはかぶりを振るだけだった。

「くそ。リノ嬢ちゃんでも知らねえのか。なら」

 ジェイクは、アンジェリカとフランに目をやった。
 先程の闇は、明らかにアヤメに関係するモノに見えた。
 アヤメの友人である二人なら、何か知っているかもしれないと思ったのだが、

「え、あ、その……」

 二人は、ブンブンとかぶりを振っていた。
 彼女たちも、何も知らないようだ。

「コ、コウタさまは、アイリは一体どこに……」

 血の気の引いた顔で、リーゼが呟く。

「まあ、コウタたちに身の危険はなかろう。どうやら、あの闇は犀娘が仕掛けたようじゃからな。しかし、これは……」

「……うん。そうだね」

 リノの台詞を、アルフレッドが継いだ。

「これって、はっきり言うと誘拐だよね?」

 全員が無言になった。
 しばし、空気がシンとする。
 そして、

「コウタアアア――ッッ!?」

 青ざめ、涙目になったメルティアの声が響くのだった。
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