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治療師の仕事と治療魔法の講義
クリスによる常識知らずな魔法説明
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自室に戻ったクリスは私服に着替えようとして手を止めた。治療師の服は詰め襟で喉が隠れるし、体型も誤魔化せる形をしている。
しかし、私服は気をつけないと、なにがきっかけでバレるか分からない。
悩んだクリスは立て襟で首元が隠れた白いシャツに、黒い薄手の上着を羽織った。下は黒のストレートパンツ。
これなら無難に喉と体型を隠せる。
着替えたクリスは普段使うことがない鏡の前に立った。一つにまとめた茶色の髪。男にも女にも見える曖昧な顔立ち。
「まだ、男として生きていけそうだな」
成長すれば、どうしても男女の体格差が出てくるし顔も変わる。
「今は誤魔化せているが、これがいつまで続けられるか……」
弱気な発言を消すようにクリスは頭を振った。
「問題ない。私は大丈夫だ」
鏡の中の自分に言い聞かせたクリスは廊下を歩き、屋敷の奥にある書庫へ移動する。
現れたのは分厚い木で造られた両開きの頑丈な扉。重厚感と独特の雰囲気がある。
クリスはいつもより重い扉を押し開けた。紙とインクの香りと湿った空気が抜ける。
整然と並ぶ本棚。ぎっしりと詰まった本。
クリスはここの静かな雰囲気が好きだった。しかし、堪能している場合ではない。ルドに治療魔法を教えなければ。
ルドを探しながら書庫内を一周りしたが、誰もいない。クリスは扉の近くにあるテラスを見た。
「……そこか」
大きな窓の外。テラスにある椅子に座ったルド。テーブルには紅茶とクッキーが並ぶ。
クリスはテラスに出て眉をひそめた。
「優雅にティータイムとは随分と余裕だな」
「いえ、その、これは……」
「どうせカルラが準備したんだろ」
カルラに押し切られたルドを想像しながら、クリスは本棚の一角を指さす。
「あそこの角にある本棚。最低でも、あそこにある本の内容を全て覚えろ。本はいつでも読みに来ていい」
そう説明しながらクリスは二枚のカードを出した。
「本を借りたければ、この二枚のカードに本の題名を書き、一枚は屋敷の者に渡して、一枚は持っていろ。本を返す時に持っているカードを屋敷の者に見せろ。そうしたら本と交換で、もう一枚のカードを返す。ただし、本は一週間以内に返せ。一週間過ぎても返さなかったら罰として、この部屋の掃除と本の陰干しをしてもらう。あと、借りるのは一回三冊までだ」
「……結構、細かい決まりがあるんですね」
個人が所有するには多すぎる本と、完成された貸し出しシステムにルドが唖然とする。しかし、クリスは気にすることなく言った。
「この屋敷に住む者は自由に読んでいるが、たまに返却するのを忘れるヤツがいる。本は貴重だからな。なくされても困るから、こうしている」
「この仕組みも師匠が考えたのですか? それとも、これも他国で学んだのですか?」
目を輝かせるルドからクリスは目をそらした。
「そんなところだ。あと治療魔法だが……」
クリスは書庫へ入る。ルドも後に続くと、角の本棚へいった。そこから一冊の分厚い本を取り出し、ルドに見せる。本の間からは何本もの細長い赤い紙が出ていた。
「覚えないといけない魔法にこの赤い紙を貼りつけている。この紙は取るな」
「紙は目印なんですね」
「そうだ」
テラスに戻ったクリスはテーブルに分厚い本を広げ、一文を指差した。
「まずは、この透視魔法を覚えろ。透視については……」
クリスは振り返り、本棚の影に冷めた視線を向ける。
「カルラ、あれを持ってこい」
本棚から隠れて覗き見していたカルラが鞄を持って出てきた。顔は何故か満面の笑み。
「はい、どうぞ」
カルラが鞄から両手大ぐらいの木箱を取り出してテーブルに置いた。
クリスは木箱を自分の前に置き説明をする。
「この箱の中には違う柄が書かれた十の箱と最後にボールが入っている。自由に透視魔法で見れるようになれ。まあ、実際に見たほうが早いか」
クリスは木箱の蓋を取った。中には花の絵が彫られた少し小さな木箱。クリスは花の絵が彫られた木箱を取り出し、蓋を開ける。すると、次は三角形の図が彫られた少し小さな木箱。
「このように箱の中に箱が入っている。この箱が全て入っている状態で、私が言う絵が彫られた箱を透視魔法ですぐ見れるようになれ」
「人の体の中の見たい場所を見られるようになるための練習ですね」
「そうだ。人体は複雑だ。見たいと思う場所がすぐに見れなければいけない。あと拡大魔法も使えるようになれ」
「拡大魔法?」
聞きなれない魔法名にルドが首を傾げる。
「小さなものを拡大して見る魔法だ」
「それは見たい物を大きくする魔法ですか?」
「いや、見たい物の大きさは変えない。これも説明するより見たほうが早いな」
クリスは鞄から一枚の紙を取り出してルドに渡した。
「この紙に何が書いてあるか読めるか?」
「……黒い点にしか見えないです」
「なら、これでどうだ?」
半円形のガラスを紙の上に置く。すると、黒い点が大きく浮かび上がり黒い字であることが分かった。
「読めます。そうか。このルーペと同じことを魔法でするのですね」
「そういうことだ。だが、どうしてルーペを使うと小さな物が大きく見えるか知っているか?」
「そういえば……考えずに使っていました」
「簡単に説明する。物を見るには光が重要だ。光がない暗闇では物は見れないだろ? 光が真っ直ぐ物に当たるから、私たちは見ることができるし、正確に物の大きさを把握することが出来る。だが、ルーペのように光を屈曲させれば、その物は実際より大きくも、小さくも見える」
「そうなんですね」
「透視魔法では光の代わりに魔力を当てて中を見る。魔力を屈曲すれば拡大して見ることも可能だ」
あっさり言ったクリスを前に、ルドが目を大きくして愕然とする。
「え? 待ってください。魔力を曲げ? え?」
緊張と驚きの連続から、ルドが思わず意識を飛ばしかけた。
しかし、私服は気をつけないと、なにがきっかけでバレるか分からない。
悩んだクリスは立て襟で首元が隠れた白いシャツに、黒い薄手の上着を羽織った。下は黒のストレートパンツ。
これなら無難に喉と体型を隠せる。
着替えたクリスは普段使うことがない鏡の前に立った。一つにまとめた茶色の髪。男にも女にも見える曖昧な顔立ち。
「まだ、男として生きていけそうだな」
成長すれば、どうしても男女の体格差が出てくるし顔も変わる。
「今は誤魔化せているが、これがいつまで続けられるか……」
弱気な発言を消すようにクリスは頭を振った。
「問題ない。私は大丈夫だ」
鏡の中の自分に言い聞かせたクリスは廊下を歩き、屋敷の奥にある書庫へ移動する。
現れたのは分厚い木で造られた両開きの頑丈な扉。重厚感と独特の雰囲気がある。
クリスはいつもより重い扉を押し開けた。紙とインクの香りと湿った空気が抜ける。
整然と並ぶ本棚。ぎっしりと詰まった本。
クリスはここの静かな雰囲気が好きだった。しかし、堪能している場合ではない。ルドに治療魔法を教えなければ。
ルドを探しながら書庫内を一周りしたが、誰もいない。クリスは扉の近くにあるテラスを見た。
「……そこか」
大きな窓の外。テラスにある椅子に座ったルド。テーブルには紅茶とクッキーが並ぶ。
クリスはテラスに出て眉をひそめた。
「優雅にティータイムとは随分と余裕だな」
「いえ、その、これは……」
「どうせカルラが準備したんだろ」
カルラに押し切られたルドを想像しながら、クリスは本棚の一角を指さす。
「あそこの角にある本棚。最低でも、あそこにある本の内容を全て覚えろ。本はいつでも読みに来ていい」
そう説明しながらクリスは二枚のカードを出した。
「本を借りたければ、この二枚のカードに本の題名を書き、一枚は屋敷の者に渡して、一枚は持っていろ。本を返す時に持っているカードを屋敷の者に見せろ。そうしたら本と交換で、もう一枚のカードを返す。ただし、本は一週間以内に返せ。一週間過ぎても返さなかったら罰として、この部屋の掃除と本の陰干しをしてもらう。あと、借りるのは一回三冊までだ」
「……結構、細かい決まりがあるんですね」
個人が所有するには多すぎる本と、完成された貸し出しシステムにルドが唖然とする。しかし、クリスは気にすることなく言った。
「この屋敷に住む者は自由に読んでいるが、たまに返却するのを忘れるヤツがいる。本は貴重だからな。なくされても困るから、こうしている」
「この仕組みも師匠が考えたのですか? それとも、これも他国で学んだのですか?」
目を輝かせるルドからクリスは目をそらした。
「そんなところだ。あと治療魔法だが……」
クリスは書庫へ入る。ルドも後に続くと、角の本棚へいった。そこから一冊の分厚い本を取り出し、ルドに見せる。本の間からは何本もの細長い赤い紙が出ていた。
「覚えないといけない魔法にこの赤い紙を貼りつけている。この紙は取るな」
「紙は目印なんですね」
「そうだ」
テラスに戻ったクリスはテーブルに分厚い本を広げ、一文を指差した。
「まずは、この透視魔法を覚えろ。透視については……」
クリスは振り返り、本棚の影に冷めた視線を向ける。
「カルラ、あれを持ってこい」
本棚から隠れて覗き見していたカルラが鞄を持って出てきた。顔は何故か満面の笑み。
「はい、どうぞ」
カルラが鞄から両手大ぐらいの木箱を取り出してテーブルに置いた。
クリスは木箱を自分の前に置き説明をする。
「この箱の中には違う柄が書かれた十の箱と最後にボールが入っている。自由に透視魔法で見れるようになれ。まあ、実際に見たほうが早いか」
クリスは木箱の蓋を取った。中には花の絵が彫られた少し小さな木箱。クリスは花の絵が彫られた木箱を取り出し、蓋を開ける。すると、次は三角形の図が彫られた少し小さな木箱。
「このように箱の中に箱が入っている。この箱が全て入っている状態で、私が言う絵が彫られた箱を透視魔法ですぐ見れるようになれ」
「人の体の中の見たい場所を見られるようになるための練習ですね」
「そうだ。人体は複雑だ。見たいと思う場所がすぐに見れなければいけない。あと拡大魔法も使えるようになれ」
「拡大魔法?」
聞きなれない魔法名にルドが首を傾げる。
「小さなものを拡大して見る魔法だ」
「それは見たい物を大きくする魔法ですか?」
「いや、見たい物の大きさは変えない。これも説明するより見たほうが早いな」
クリスは鞄から一枚の紙を取り出してルドに渡した。
「この紙に何が書いてあるか読めるか?」
「……黒い点にしか見えないです」
「なら、これでどうだ?」
半円形のガラスを紙の上に置く。すると、黒い点が大きく浮かび上がり黒い字であることが分かった。
「読めます。そうか。このルーペと同じことを魔法でするのですね」
「そういうことだ。だが、どうしてルーペを使うと小さな物が大きく見えるか知っているか?」
「そういえば……考えずに使っていました」
「簡単に説明する。物を見るには光が重要だ。光がない暗闇では物は見れないだろ? 光が真っ直ぐ物に当たるから、私たちは見ることができるし、正確に物の大きさを把握することが出来る。だが、ルーペのように光を屈曲させれば、その物は実際より大きくも、小さくも見える」
「そうなんですね」
「透視魔法では光の代わりに魔力を当てて中を見る。魔力を屈曲すれば拡大して見ることも可能だ」
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