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死者使いと悪魔召喚
クリスによる丁寧な実技指導
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椅子に座るとカルラがカップにお茶を注ぎ、クリスの前に置いた。
「犬の様子はいかがですか?」
「筋がいい。普通なら透視魔法が出来るようになるのに、半月はかかるんだがな。まさか、一日で出来るようになるとは思わなかった」
「楽しそうですね」
思わぬ言葉にクリスはお茶を吹き出しそうになる。
「そんなことはない」
「そうですか?」
カルラが意味あり気に口角をあげた。
クリスはカップに口をつけながら視線だけをルドに向ける。
地面に座り、置いた布袋に両手をかざすルド。その顔は真剣そのもので、いつもの犬のような人懐っこい雰囲気はない。
「どうすれば魔力を曲げるイメージを伝えられるか……」
クリスは独り言のつもりだったが、カルラが指を立てて提案した。
「言葉で分からなければ、実際に見せるか、一緒にしてみるのもアリですよね」
「一緒に……か」
軽く頷くとクリスはルドを呼んだ。
「おい。ちょっと、こっちに来い」
「はい」
ルドが立ち上がり小走りでやって来る。
「魔力は曲げられそうか?」
「その前に魔力を感じられません」
「そこからか。とりあえず、こっちに来て右手を出せ」
ルドが言われた通りクリスの隣に立ち、右手を差し出した。クリスはルドの右手の先にシュガーポットを置く。
「このまま透視魔法を発動してみろ」
「あ、はい」
訳が分からないままルドが透視魔法の魔法式を頭に浮かべた。
『透視』
シュガーポットが透け、中の砂糖が見える。
「見えました」
「よし。そのまま透視魔法を維持しろ」
クリスは自分の左手をルドの右手にのせた。
ルドの武骨で大きな手に比べ、クリスの手は細く小さい。こんなことでも差を感じてしまう。
「し、師匠?」
ルドが驚き慌てるが、クリスは重ねた手に意識を集中したまま説明をした。
「このまま私の魔力を流すから、それを感じろ。他人の魔力が流れれば、魔力に対していくら鈍感なお前でも違いに気付くだろ」
「そういうことですか! やってみます!」
『透視』
ルドが手に集中する。クリスの手が触れている部分は温かいのに、氷のように冷たい何かが流れ込んできた。それが手を抜け、シュガーポットへと注がれていく。
この冷たい流れがクリスの魔力。
「師匠! 分かりました!」
「なら曲げてみろ」
「いや、流れは分かりましたが、曲げ方は分かりません」
クリスはため息を堪えて言った。
「仕方ない。私が曲げるから合わせろ」
「は、はい」
クリスは微かに力を入れ、ルドの手に流していた魔力を曲げる。それは綺麗な四十五度だった。
「ほら、合わせろ」
「えっと……うー」
ルドが魔力を曲げようと強めたり弱めたりするが、効果はない。ひたすら頑固にまっすぐ突き進む魔力。
「無理です……なんで、曲げることが出来るんですか?」
「同じところで曲げなくてもいい。曲げやすいところで曲げろ」
「んー、あー」
ルドがひたすらシュガーポットを睨む。正確にはシュガーポットに注がれている魔力を。
「そんなに力むな。力を抜け。中の物を大きくして見たいと思え」
「……はい」
なんとか力を抜こうとするルドだが、うまくいかない。クリスは魔力を曲げたまま、ひたすら見守る。しかし、ルドの魔力が曲がる気配はない。
ルドの額に汗が流れたところでクリスは手を離した。
「休憩だ」
「……すみません」
「座れ」
しょぼんとしたルドが椅子に腰をおろす。ペタンと垂れた犬耳、下がった尻尾の幻影が見える。
その様子にクリスは軽く笑った。
「すぐに出来る必要はない。むしろ、すぐに出来るとは思っていない」
「ですが、ここまで丁寧に教えて下さったのに……」
何も結果が出せなかったことにルドが落ち込む。そんなルドを見ながらクリスは呟いた。
「教える、ということは存外に難しいものなんだな」
「どうしました?」
ルドが顔をあげる。クリスはルドから視線を外して茶を飲んだ。
「なんでもない。それより飲め」
ルドがカップに視線を落とす。持ち手のない独特な形をしたカップ。両手で包み込むように持つと、心地よい温もりが広がった。口を近づけると、独特な花の匂いが香る。
一口飲んだルドが目を丸くした。
「不思議な味ですね。花の香りとともに後味がスッキリとしていて飲みやすいです」
「ほう? この茶は好みが分かれるのだが、お前は飲めるんだな」
「飲めない人がいるんですか?」
「セルティは一口飲んで止めたぞ」
「そうなんですか? 美味しいのに」
「だろ?」
クリスとルドが頷きながら茶を飲む。緊張が緩み、柔かな時間が流れる。
――――――――プツッ。
突如、クリスの髪をまとめている紐が切れた。茶色の髪が風にのって広がる。
「綺麗ですね」
風に遊ばれる髪に見惚れるルドに対して、クリスとカルラの雰囲気が一変した。すぐに立ち上がり鋭く周囲を警戒する。
「どうしました!?」
只事ではない様子にルドも椅子から立つ。そこに屋敷の中からラミラが走ってきた。
「クリス様!」
「客人の前だ」
慌てたラミラを落ち着かせるようにクリスは低い声で言った。ラミラが早口でクリスに耳打ちする。
「なんだと?」
「今、全力で探索しております。それと心配なことが……」
再び耳打ちされたクリスの顔が驚愕へと変わる。
「それは本当か!?」
「はい。先ほど言っていたと……」
クリスはルドに厳しい顔を向けた。
「悪いが今日はこれで終わりだ。カルラ、ルドを見送れ」
「はい。こちらへ……」
案内しようとするカルラをルドが制する。
「何か起きたのですか? 自分に手伝えることはありませんか?」
ルドの申し出をクリスはあっさりと断った。
「ない。そもそも部外者には関係のないことだ」
「部外者……」
呆然とするルドに背を向け、クリスはラミラに指示を出す。
「全員をホールに集めろ」
「はい」
クリスはルドを置いて屋敷へ早足で戻った。
「犬の様子はいかがですか?」
「筋がいい。普通なら透視魔法が出来るようになるのに、半月はかかるんだがな。まさか、一日で出来るようになるとは思わなかった」
「楽しそうですね」
思わぬ言葉にクリスはお茶を吹き出しそうになる。
「そんなことはない」
「そうですか?」
カルラが意味あり気に口角をあげた。
クリスはカップに口をつけながら視線だけをルドに向ける。
地面に座り、置いた布袋に両手をかざすルド。その顔は真剣そのもので、いつもの犬のような人懐っこい雰囲気はない。
「どうすれば魔力を曲げるイメージを伝えられるか……」
クリスは独り言のつもりだったが、カルラが指を立てて提案した。
「言葉で分からなければ、実際に見せるか、一緒にしてみるのもアリですよね」
「一緒に……か」
軽く頷くとクリスはルドを呼んだ。
「おい。ちょっと、こっちに来い」
「はい」
ルドが立ち上がり小走りでやって来る。
「魔力は曲げられそうか?」
「その前に魔力を感じられません」
「そこからか。とりあえず、こっちに来て右手を出せ」
ルドが言われた通りクリスの隣に立ち、右手を差し出した。クリスはルドの右手の先にシュガーポットを置く。
「このまま透視魔法を発動してみろ」
「あ、はい」
訳が分からないままルドが透視魔法の魔法式を頭に浮かべた。
『透視』
シュガーポットが透け、中の砂糖が見える。
「見えました」
「よし。そのまま透視魔法を維持しろ」
クリスは自分の左手をルドの右手にのせた。
ルドの武骨で大きな手に比べ、クリスの手は細く小さい。こんなことでも差を感じてしまう。
「し、師匠?」
ルドが驚き慌てるが、クリスは重ねた手に意識を集中したまま説明をした。
「このまま私の魔力を流すから、それを感じろ。他人の魔力が流れれば、魔力に対していくら鈍感なお前でも違いに気付くだろ」
「そういうことですか! やってみます!」
『透視』
ルドが手に集中する。クリスの手が触れている部分は温かいのに、氷のように冷たい何かが流れ込んできた。それが手を抜け、シュガーポットへと注がれていく。
この冷たい流れがクリスの魔力。
「師匠! 分かりました!」
「なら曲げてみろ」
「いや、流れは分かりましたが、曲げ方は分かりません」
クリスはため息を堪えて言った。
「仕方ない。私が曲げるから合わせろ」
「は、はい」
クリスは微かに力を入れ、ルドの手に流していた魔力を曲げる。それは綺麗な四十五度だった。
「ほら、合わせろ」
「えっと……うー」
ルドが魔力を曲げようと強めたり弱めたりするが、効果はない。ひたすら頑固にまっすぐ突き進む魔力。
「無理です……なんで、曲げることが出来るんですか?」
「同じところで曲げなくてもいい。曲げやすいところで曲げろ」
「んー、あー」
ルドがひたすらシュガーポットを睨む。正確にはシュガーポットに注がれている魔力を。
「そんなに力むな。力を抜け。中の物を大きくして見たいと思え」
「……はい」
なんとか力を抜こうとするルドだが、うまくいかない。クリスは魔力を曲げたまま、ひたすら見守る。しかし、ルドの魔力が曲がる気配はない。
ルドの額に汗が流れたところでクリスは手を離した。
「休憩だ」
「……すみません」
「座れ」
しょぼんとしたルドが椅子に腰をおろす。ペタンと垂れた犬耳、下がった尻尾の幻影が見える。
その様子にクリスは軽く笑った。
「すぐに出来る必要はない。むしろ、すぐに出来るとは思っていない」
「ですが、ここまで丁寧に教えて下さったのに……」
何も結果が出せなかったことにルドが落ち込む。そんなルドを見ながらクリスは呟いた。
「教える、ということは存外に難しいものなんだな」
「どうしました?」
ルドが顔をあげる。クリスはルドから視線を外して茶を飲んだ。
「なんでもない。それより飲め」
ルドがカップに視線を落とす。持ち手のない独特な形をしたカップ。両手で包み込むように持つと、心地よい温もりが広がった。口を近づけると、独特な花の匂いが香る。
一口飲んだルドが目を丸くした。
「不思議な味ですね。花の香りとともに後味がスッキリとしていて飲みやすいです」
「ほう? この茶は好みが分かれるのだが、お前は飲めるんだな」
「飲めない人がいるんですか?」
「セルティは一口飲んで止めたぞ」
「そうなんですか? 美味しいのに」
「だろ?」
クリスとルドが頷きながら茶を飲む。緊張が緩み、柔かな時間が流れる。
――――――――プツッ。
突如、クリスの髪をまとめている紐が切れた。茶色の髪が風にのって広がる。
「綺麗ですね」
風に遊ばれる髪に見惚れるルドに対して、クリスとカルラの雰囲気が一変した。すぐに立ち上がり鋭く周囲を警戒する。
「どうしました!?」
只事ではない様子にルドも椅子から立つ。そこに屋敷の中からラミラが走ってきた。
「クリス様!」
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慌てたラミラを落ち着かせるようにクリスは低い声で言った。ラミラが早口でクリスに耳打ちする。
「なんだと?」
「今、全力で探索しております。それと心配なことが……」
再び耳打ちされたクリスの顔が驚愕へと変わる。
「それは本当か!?」
「はい。先ほど言っていたと……」
クリスはルドに厳しい顔を向けた。
「悪いが今日はこれで終わりだ。カルラ、ルドを見送れ」
「はい。こちらへ……」
案内しようとするカルラをルドが制する。
「何か起きたのですか? 自分に手伝えることはありませんか?」
ルドの申し出をクリスはあっさりと断った。
「ない。そもそも部外者には関係のないことだ」
「部外者……」
呆然とするルドに背を向け、クリスはラミラに指示を出す。
「全員をホールに集めろ」
「はい」
クリスはルドを置いて屋敷へ早足で戻った。
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