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死者使いと悪魔召喚
メイドによる辛辣な判定〜ルド視点〜
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花束を持ったルドは、今度こそクリスの屋敷へ向かった。しかし、その足取りがどんどん重くなる。
「事前連絡もせず、師匠の都合も考えず、勢いだけで来てしまった……迷惑だと追い返されるかも……いや、そもそも師匠は治療院研究所に出勤しているかも……しまった!」
ルドの声に先を歩く二人が振り返った。
「どうした?」
「やはり、今日行くのは止めたほうが……」
ウルバヌスが安心させるようにルドの肩をポンと叩いた。
「オレたちのことは気にするな。相手の顔を見たら、すぐに帰るからさ」
「いえ、そうではなく」
「お? あの家か?」
道の先にある木々の隙間から屋根が確認できる。ルドは首を振った。
「やはり帰りましょう。急に訪ねたら迷惑になるでしょうし、もしかしたら不在かもしれません」
「おい、おい。始めの勢いはどうした? ほら、行くぞ」
ウルバヌスが楽しそうに進む。ルドはアウルスに助けを求めたが、肩をすくめるだけで返事はなかった。
実はアウルスも真面目で堅物だったルドをここまで変えた人物に興味がある。
味方がいない状況に悩んでいると、聞いたことがある声が響いた。
「お? ルドじゃないか。やっと来たか」
振り返るとカゴを担いだマノロが近づいて来た。ルドが頭を下げて挨拶をする。
「お久しぶりです。やっと来た、とは、どういうことでしょうか?」
「おまえのことだから、あの事件の後すぐ屋敷に顔を出すと思っていたのに、来ないからさ。怪我でもして、瀕死なんじゃないかって噂になっていたんだ」
「あの事件の後、謹慎処分を受けまして。先程、解除されました」
「へぇ。じゃあ、謹慎が解けてすぐクリス様に会いに来たってわけか。さすが忠犬だな。怪我じゃなくて良かった。クリス様なんか、おまえが姿を見せないか……グハッ」
ルドの後ろから飛んできた小石がマノロの顎にヒットする。顎を押さえて悶絶するマノロに冷徹な声が刺さった。
「私が、どうした?」
振り返るとクリスが右手の中で小石を遊ばせながら立っている。
「い、いえ! なんでもないっす!」
マノロが慌てる一方で、ルドは呆然としていた。
たった三日しか経っていないのに、一年ぐらい会っていなかったような感覚で。どう声をかけたらいいのか分からない。必死に言葉を探すが、どれもしっくりこない。
焦るルドの前でクリスの顔が動いた。ゆっくりと茶髪が揺れ、どこか不機嫌そうな顔がルドの方に向く。そして、深緑の瞳と目が合った。
その瞬間、ルドの悩みがすべて消え、自然と声が出た。
「師匠!」
満面の笑みとともに駆け出す。そのままクリスの前で立ち止まり、深緑の瞳を食い入るように見つめた。
その光景にアウルスとウルバヌスは、ルドに無いはずの尻尾が見えた。しかも大きく左右に揺れ、マテをしている犬の姿が。
二人が何度も目をこすり、現実を確認する。
一方のルドは元気よくクリスに挨拶をした。
「お久しぶりです! 師匠!」
「……そうだな」
そのまま無言になる二人。だが、嬉しさが溢れるルドはニコニコとクリスの顔を飽きることなく見つめる。先ほどまで、うだうだと考えていたことは綺麗に吹き飛んだ。
その視線に耐えられなくなったクリスがルドの腕に視線を移す。そこで紫のカーネーションの花束を見つけた。
「どこかに行く予定だったのか?」
「はい。師匠のところに」
「私のところに? だが、その花束は?」
花束の存在を思い出したルドはクリスに差し出した。
「師匠のイメージにピッタリだと思いまして」
「……私に?」
「はい」
押し付けられたようにクリスが花束を受け取る。カーネーションの色を見てクリスが目を丸くした。
「育っていたのか」
「どうしました?」
「いや、なんでもない紫とは珍しい色を選んだな」
「師匠に似合うと思いまして」
クリスの顔が一気に真っ赤になる。隠すようにルドに背中を向け、早足で歩き出した。
「と、とにかく中に入れ。茶ぐらい出すぞ。そこの二人も」
「はい!」
喜んで後をついて行こうとしたら、ウルバヌスに止められた。
「会いたかった相手って、あの治療師か?」
「そうです」
「相手は女じゃないのか!?」
ルドは首をかしげた。
「師匠は男ですけど」
「なんで男に会うのに、あんなに嬉しそうだったんだよ!?」
「いけませんか?」
ウルバヌスが大きくため息を吐く。
「おまえに期待したオレが悪かった。邪魔したな。帰る」
踵を返したウルバヌスをアウルスが止める。
「行くぞ」
「え? ちょっ……」
アウルスがウルバヌスを引きずって歩き出した。
「どうしたんですか?」
「いいから来い」
アウルスの真剣な様子にウルバヌスも黙って後を歩く。ルドは二人を通り過ぎ小走りでクリスを追いかけた。
「皆に伝えとくか」
マノロがこっそり抜け道から屋敷の裏口へ戻っていった。
屋敷に到着すると、カリストが出迎えた。
「クリス様。本調子ではないのですから、無理はしないでください」
「少し散歩しただけだ。客人を案内しろ」
「かしこまりました」
クリスが屋敷の奥へ消える。その一瞬、緩んだ顔で花束を大事そうに抱え直した。その姿にルドは花束を渡して良かったと安堵する。
そこへカリストが三人に頭を下げた。
「先日はお世話になりました」
「メイドと赤ん坊の調子はどうですか?」
ルドの質問にカリストが穏やかに微笑む。
「母子ともに健康です。本来なら、こちらから礼に伺うべきでしたが、後始末に追われておりまして」
「あれだけの事件の後ですから、いろいろとあると思います。今日は借りていた本を……」
鞄から本を取り出そうとしたルドをカリストが止める。
「先にご案内致します。カルラ」
「はい。こちらへどうぞ」
カルラに案内され、三人は屋敷の中へ入った。
いつもならルドと雑談をするカルラが無言のまま先導する。その後ろでアウルスがさりげなく屋敷を観察していく。
「どうぞ」
ガラス張りのサロンに通されたアウルスとウルバヌスが目を丸くした。
「へぇ……凝った作りだなぁ」
ウルバヌスが素直に感想を口にする。アウルスも驚いた顔をしているが視線は鋭い。
「おかけになってお待ち下さい」
カルラが退室すると、それぞれ椅子に腰を下ろした。
ルドはいつもと様子が違うアウルスに声をかける。
「副隊長、どうかしましたか?」
「ちょっと気になることがあってな」
「気になること?」
妙な緊張が走る中、カルラが紅茶セットを持ってサロンに入ってきた。
「失礼いたします」
カルラが丁寧な動作で紅茶をカップに注ぐ。そして茶菓子がのった皿を置くと、そのまま下がろうとしたので、ルドは思わず声を出した。
「今日はこれだけですか?」
いつもなら紅茶にジャムやミルクなどもう一手間加えるのに、今日は何もない。
驚くルドにカルラが無言で微笑み退室する。
カルラの態度にルドは疑問を持ちながら紅茶のカップを持った。他の二人も同じようにカップを手にしたが、そこで動きが止まる。
「珍しい匂いの紅茶だな。こんな匂いは初めてだ」
アウルスの感想にルドが答える。
「ここでは、いつも珍しい紅茶が飲めるんです」
「へぇ、そうなんだ」
ウルバヌスが面白そうにカップの中を覗くと、濃い茶色の水面に美青年の顔が写っていた。
三人がそろってカップに口を付ける。そして、同時にカップから口を離した。
「事前連絡もせず、師匠の都合も考えず、勢いだけで来てしまった……迷惑だと追い返されるかも……いや、そもそも師匠は治療院研究所に出勤しているかも……しまった!」
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「どうした?」
「やはり、今日行くのは止めたほうが……」
ウルバヌスが安心させるようにルドの肩をポンと叩いた。
「オレたちのことは気にするな。相手の顔を見たら、すぐに帰るからさ」
「いえ、そうではなく」
「お? あの家か?」
道の先にある木々の隙間から屋根が確認できる。ルドは首を振った。
「やはり帰りましょう。急に訪ねたら迷惑になるでしょうし、もしかしたら不在かもしれません」
「おい、おい。始めの勢いはどうした? ほら、行くぞ」
ウルバヌスが楽しそうに進む。ルドはアウルスに助けを求めたが、肩をすくめるだけで返事はなかった。
実はアウルスも真面目で堅物だったルドをここまで変えた人物に興味がある。
味方がいない状況に悩んでいると、聞いたことがある声が響いた。
「お? ルドじゃないか。やっと来たか」
振り返るとカゴを担いだマノロが近づいて来た。ルドが頭を下げて挨拶をする。
「お久しぶりです。やっと来た、とは、どういうことでしょうか?」
「おまえのことだから、あの事件の後すぐ屋敷に顔を出すと思っていたのに、来ないからさ。怪我でもして、瀕死なんじゃないかって噂になっていたんだ」
「あの事件の後、謹慎処分を受けまして。先程、解除されました」
「へぇ。じゃあ、謹慎が解けてすぐクリス様に会いに来たってわけか。さすが忠犬だな。怪我じゃなくて良かった。クリス様なんか、おまえが姿を見せないか……グハッ」
ルドの後ろから飛んできた小石がマノロの顎にヒットする。顎を押さえて悶絶するマノロに冷徹な声が刺さった。
「私が、どうした?」
振り返るとクリスが右手の中で小石を遊ばせながら立っている。
「い、いえ! なんでもないっす!」
マノロが慌てる一方で、ルドは呆然としていた。
たった三日しか経っていないのに、一年ぐらい会っていなかったような感覚で。どう声をかけたらいいのか分からない。必死に言葉を探すが、どれもしっくりこない。
焦るルドの前でクリスの顔が動いた。ゆっくりと茶髪が揺れ、どこか不機嫌そうな顔がルドの方に向く。そして、深緑の瞳と目が合った。
その瞬間、ルドの悩みがすべて消え、自然と声が出た。
「師匠!」
満面の笑みとともに駆け出す。そのままクリスの前で立ち止まり、深緑の瞳を食い入るように見つめた。
その光景にアウルスとウルバヌスは、ルドに無いはずの尻尾が見えた。しかも大きく左右に揺れ、マテをしている犬の姿が。
二人が何度も目をこすり、現実を確認する。
一方のルドは元気よくクリスに挨拶をした。
「お久しぶりです! 師匠!」
「……そうだな」
そのまま無言になる二人。だが、嬉しさが溢れるルドはニコニコとクリスの顔を飽きることなく見つめる。先ほどまで、うだうだと考えていたことは綺麗に吹き飛んだ。
その視線に耐えられなくなったクリスがルドの腕に視線を移す。そこで紫のカーネーションの花束を見つけた。
「どこかに行く予定だったのか?」
「はい。師匠のところに」
「私のところに? だが、その花束は?」
花束の存在を思い出したルドはクリスに差し出した。
「師匠のイメージにピッタリだと思いまして」
「……私に?」
「はい」
押し付けられたようにクリスが花束を受け取る。カーネーションの色を見てクリスが目を丸くした。
「育っていたのか」
「どうしました?」
「いや、なんでもない紫とは珍しい色を選んだな」
「師匠に似合うと思いまして」
クリスの顔が一気に真っ赤になる。隠すようにルドに背中を向け、早足で歩き出した。
「と、とにかく中に入れ。茶ぐらい出すぞ。そこの二人も」
「はい!」
喜んで後をついて行こうとしたら、ウルバヌスに止められた。
「会いたかった相手って、あの治療師か?」
「そうです」
「相手は女じゃないのか!?」
ルドは首をかしげた。
「師匠は男ですけど」
「なんで男に会うのに、あんなに嬉しそうだったんだよ!?」
「いけませんか?」
ウルバヌスが大きくため息を吐く。
「おまえに期待したオレが悪かった。邪魔したな。帰る」
踵を返したウルバヌスをアウルスが止める。
「行くぞ」
「え? ちょっ……」
アウルスがウルバヌスを引きずって歩き出した。
「どうしたんですか?」
「いいから来い」
アウルスの真剣な様子にウルバヌスも黙って後を歩く。ルドは二人を通り過ぎ小走りでクリスを追いかけた。
「皆に伝えとくか」
マノロがこっそり抜け道から屋敷の裏口へ戻っていった。
屋敷に到着すると、カリストが出迎えた。
「クリス様。本調子ではないのですから、無理はしないでください」
「少し散歩しただけだ。客人を案内しろ」
「かしこまりました」
クリスが屋敷の奥へ消える。その一瞬、緩んだ顔で花束を大事そうに抱え直した。その姿にルドは花束を渡して良かったと安堵する。
そこへカリストが三人に頭を下げた。
「先日はお世話になりました」
「メイドと赤ん坊の調子はどうですか?」
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「母子ともに健康です。本来なら、こちらから礼に伺うべきでしたが、後始末に追われておりまして」
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「どうぞ」
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いつもなら紅茶にジャムやミルクなどもう一手間加えるのに、今日は何もない。
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アウルスの感想にルドが答える。
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