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二人の意識の変化
クリスによる穏やかな魔法指導〜ルド視点〜
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ルドは困っていた。
クリスの魔力を探っていたはずなのだが、気が付いたらクリスが目の前で寝ている。これでは手を離すどころか、動くことさえできない。
ルドは仕方なく握った手を見つめた。
白くて少し小さな手。華奢だが綺麗な、この手で多くの人を助けてきた。自分がしたかったことを、ずっとやり遂げてきた。この手を、クリスを、できればずっと守りたい……
不可能なことだと分かっている。自分には時間制限があり、時が来たら離れなければならない。それでも、守り続けたい。
だからこそ魔宝石を渡した。自分が側にいなくても、魔宝石が守り続ける。
ルドは視線をあげてクリスの顔を見た。
長い金色の睫毛が太陽の光を弾く。あどけない寝顔は年齢より幼い。高すぎない鼻に花弁のような唇。両手で包み込めそうな小さな顔。
ずっと見ていたい……が、このまま見続けていたらクリスが起きた時に殺される。
そのことに気付いたルドは慌てた。
「マズい!」
助けを求めるように周囲を見ると、ルドから数歩離れたところに満面の笑みを浮かべたカルラがいた。
「あ、あの、いつからそこに?」
「つい先ほどですよ?」
カルラが楽しそうに小首を傾げる。ルドは助けを求めるように訴えた。
「ど、どうしたらいいですか?」
「クリス様が起きられるまで、そのままでよろしいかと」
「ですが……」
「クリス様はなかなか休めませんから。休める時は休んでいただいた方が良いので」
「それは、そうですが……」
「ところで魔力の流れは感じるようになりましたか?」
当初の目的を思い出したルドがクリスの手に視線を向ける。
「師匠の魔力の流れは分かるようになりました。自分の魔宝石を渡しているので、師匠の魔力の流れは感じやすかったので」
カルラが軽く頷き、ルドの前に植木鉢を置いた。
「そのまま空いている方の手で植物に触れてみてください」
「え?」
「たぶん花を咲かせることが出来ると思いますよ」
「そうですか?」
ルドは疑いながら空いている手で植物に触れる。すると、微かだが植物の魔力の流れを感じることが出来た。
「え? どうして?」
「驚くのは後にして。魔力の流れに自分の魔力を少しずつ乗せてください。自分が栄養を与え、草が育ち、花が咲く姿をイメージします」
ルドは言われた通りに集中した。
感じた植物の魔力に、水を一滴一滴垂らすように、そっと自分の魔力を乗せていく。植物が自分の魔力で満たされ、成長していくのを感じる。それに合わせて徐々につぼみが大きくなり、花びらが広がる。
「……咲いた!」
全てのつぼみが開き、植木鉢が小さなバラで一杯になった。
「カルラが教えたほうが良さそうだな」
不機嫌な声にルドは慌てて顔をあげた。そこには、むすっとしたクリス。
二人の様子にカルラが笑う。
「クリス様が狸寝入りしたまま、うまく魔力を誘導したから出来たんですよ」
クリスがルドから手を離す。
「とにかく、傷を治すのも同じことだ。自分の魔力を栄養にして、傷が塞がるように細胞を育てる。そうすれば細胞が繋がり傷は治る。深い傷だと血管や臓器があるから、今している勉強と透視魔法が重要になる。浅い傷なら、これので十分だ。あ、魔力を与えすぎると細胞が成長しすぎるから、そこは気を付けろ」
「つまり神の力ではなく、自分の魔力を使って傷を治しているから、神の加護がなくても治療ができる!」
「そいうことだ。私は治す部位によって魔法式を作っているから、それを使って少ない魔力で治している。適した魔法式がなければ、直接魔力を流して治すが、それだと多くの魔力が必要になり、効率が悪くなる」
「ですが、これなら自分でも魔力さえあれば治せるってことですよね!?」
「そうだ」
ルドは立ち上がり喜んだ。
「やった!」
「では、昼食にいたしましょう」
カルラの提案にクリスは外を見た。太陽の位置が高い。
「もう、そんな時間か」
「はい」
クリスがルドに声をかける。
「おまえも来い」
「いいのですか?」
「昼からは人体を使った治療の勉強をする。一度家に帰るより、ここで昼を食べたほうが効率がいい」
「はい! ありがとうございます!」
ルドは喜んでクリスと昼食をとった。
昼食後、庭に移動した二人は、用意された椅子に座る。机には本が積まれていた。
クリスがルドに訊ねる。
「どの本を読んだ?」
「これだけ読みました」
ルドは読み終わった本を抜き出した。積み上げられた本の半分は読んでいる。
「人体の基礎が書いてある本は、だいたい読んでいるな。人体は個体差があり、本の通りではないこともある」
「はい」
「だから透視魔法でできるだけ多くの人の体の構造を観察しろ。正常な状態を知らなければ、悪い状態も分からない」
「はい」
「拡大魔法は平行して練習すればいい。今日は軽い傷を治す練習をする」
その言葉にルドは以前、クリスが指を切って治療魔法の練習をさせたことを思い出した。
「ダメです!」
「は?」
「師匠を傷つけるのはダメです!」
「そうは言っても傷がないと治療の練習は出来ないだろ。痛みは魔法で感じないようにするから問題ない」
クリスが躊躇いなくナイフを取り出す。ルドは急いで手を差し出した。
「それなら自分の手を切って下さい!」
「うーん……自分の怪我を治すことも必要だから、それでもいいか。左手を貸せ」
左手を差し出すと、クリスが手首を掴んだ。
『橈骨神経ブロック』
クリスがルドの手首を離してナイフを渡す。
「これで痛みは感じないはずだ。親指あたりを軽く切ってみろ。あ、切るのは皮膚ぐらいまでにしておけ」
「はい」
ルドは親指にナイフを滑らした。皮膚がパックリと割れ、赤い血が出たが、痛みはない。
「不思議ですね」
感想を漏らしていると、クリスがハンカチで傷を押さえた。触られている感覚は分かるが、どこかジンジンと痺れた感じがする。
「痛みがなくても傷は傷だ。油断するな」
クリスがハンカチを取ると血は止まっていたが傷はしっかりあった。
クリスの魔力を探っていたはずなのだが、気が付いたらクリスが目の前で寝ている。これでは手を離すどころか、動くことさえできない。
ルドは仕方なく握った手を見つめた。
白くて少し小さな手。華奢だが綺麗な、この手で多くの人を助けてきた。自分がしたかったことを、ずっとやり遂げてきた。この手を、クリスを、できればずっと守りたい……
不可能なことだと分かっている。自分には時間制限があり、時が来たら離れなければならない。それでも、守り続けたい。
だからこそ魔宝石を渡した。自分が側にいなくても、魔宝石が守り続ける。
ルドは視線をあげてクリスの顔を見た。
長い金色の睫毛が太陽の光を弾く。あどけない寝顔は年齢より幼い。高すぎない鼻に花弁のような唇。両手で包み込めそうな小さな顔。
ずっと見ていたい……が、このまま見続けていたらクリスが起きた時に殺される。
そのことに気付いたルドは慌てた。
「マズい!」
助けを求めるように周囲を見ると、ルドから数歩離れたところに満面の笑みを浮かべたカルラがいた。
「あ、あの、いつからそこに?」
「つい先ほどですよ?」
カルラが楽しそうに小首を傾げる。ルドは助けを求めるように訴えた。
「ど、どうしたらいいですか?」
「クリス様が起きられるまで、そのままでよろしいかと」
「ですが……」
「クリス様はなかなか休めませんから。休める時は休んでいただいた方が良いので」
「それは、そうですが……」
「ところで魔力の流れは感じるようになりましたか?」
当初の目的を思い出したルドがクリスの手に視線を向ける。
「師匠の魔力の流れは分かるようになりました。自分の魔宝石を渡しているので、師匠の魔力の流れは感じやすかったので」
カルラが軽く頷き、ルドの前に植木鉢を置いた。
「そのまま空いている方の手で植物に触れてみてください」
「え?」
「たぶん花を咲かせることが出来ると思いますよ」
「そうですか?」
ルドは疑いながら空いている手で植物に触れる。すると、微かだが植物の魔力の流れを感じることが出来た。
「え? どうして?」
「驚くのは後にして。魔力の流れに自分の魔力を少しずつ乗せてください。自分が栄養を与え、草が育ち、花が咲く姿をイメージします」
ルドは言われた通りに集中した。
感じた植物の魔力に、水を一滴一滴垂らすように、そっと自分の魔力を乗せていく。植物が自分の魔力で満たされ、成長していくのを感じる。それに合わせて徐々につぼみが大きくなり、花びらが広がる。
「……咲いた!」
全てのつぼみが開き、植木鉢が小さなバラで一杯になった。
「カルラが教えたほうが良さそうだな」
不機嫌な声にルドは慌てて顔をあげた。そこには、むすっとしたクリス。
二人の様子にカルラが笑う。
「クリス様が狸寝入りしたまま、うまく魔力を誘導したから出来たんですよ」
クリスがルドから手を離す。
「とにかく、傷を治すのも同じことだ。自分の魔力を栄養にして、傷が塞がるように細胞を育てる。そうすれば細胞が繋がり傷は治る。深い傷だと血管や臓器があるから、今している勉強と透視魔法が重要になる。浅い傷なら、これので十分だ。あ、魔力を与えすぎると細胞が成長しすぎるから、そこは気を付けろ」
「つまり神の力ではなく、自分の魔力を使って傷を治しているから、神の加護がなくても治療ができる!」
「そいうことだ。私は治す部位によって魔法式を作っているから、それを使って少ない魔力で治している。適した魔法式がなければ、直接魔力を流して治すが、それだと多くの魔力が必要になり、効率が悪くなる」
「ですが、これなら自分でも魔力さえあれば治せるってことですよね!?」
「そうだ」
ルドは立ち上がり喜んだ。
「やった!」
「では、昼食にいたしましょう」
カルラの提案にクリスは外を見た。太陽の位置が高い。
「もう、そんな時間か」
「はい」
クリスがルドに声をかける。
「おまえも来い」
「いいのですか?」
「昼からは人体を使った治療の勉強をする。一度家に帰るより、ここで昼を食べたほうが効率がいい」
「はい! ありがとうございます!」
ルドは喜んでクリスと昼食をとった。
昼食後、庭に移動した二人は、用意された椅子に座る。机には本が積まれていた。
クリスがルドに訊ねる。
「どの本を読んだ?」
「これだけ読みました」
ルドは読み終わった本を抜き出した。積み上げられた本の半分は読んでいる。
「人体の基礎が書いてある本は、だいたい読んでいるな。人体は個体差があり、本の通りではないこともある」
「はい」
「だから透視魔法でできるだけ多くの人の体の構造を観察しろ。正常な状態を知らなければ、悪い状態も分からない」
「はい」
「拡大魔法は平行して練習すればいい。今日は軽い傷を治す練習をする」
その言葉にルドは以前、クリスが指を切って治療魔法の練習をさせたことを思い出した。
「ダメです!」
「は?」
「師匠を傷つけるのはダメです!」
「そうは言っても傷がないと治療の練習は出来ないだろ。痛みは魔法で感じないようにするから問題ない」
クリスが躊躇いなくナイフを取り出す。ルドは急いで手を差し出した。
「それなら自分の手を切って下さい!」
「うーん……自分の怪我を治すことも必要だから、それでもいいか。左手を貸せ」
左手を差し出すと、クリスが手首を掴んだ。
『橈骨神経ブロック』
クリスがルドの手首を離してナイフを渡す。
「これで痛みは感じないはずだ。親指あたりを軽く切ってみろ。あ、切るのは皮膚ぐらいまでにしておけ」
「はい」
ルドは親指にナイフを滑らした。皮膚がパックリと割れ、赤い血が出たが、痛みはない。
「不思議ですね」
感想を漏らしていると、クリスがハンカチで傷を押さえた。触られている感覚は分かるが、どこかジンジンと痺れた感じがする。
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